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クインテット。ナイツ  作者: 恵/.
M―視える。ナイツ
32/132

おいしいとこは攫われる

「破滅するとき、影名を語る」

 そう唱えると共に、優の刀が黒く染まっていく。

「くっ……!」

 顔を顰める優。刀を片手から両手に持ち替え、溢れ出す衝動を抑える。

「風天―吹き荒れる嵐の如く!」

 振るった刀から疾風が放たれ、少年へと襲い掛かる。対して少年は、あの強烈な霊体破壊攻撃で応戦。

「くっ……!」

 二つの力が拮抗し、その反動が優にも伝わってくる。押し返されぬよう力を込め直すが―――

「ああっ……!」

 力と力が相殺され、生じた爆風に吹き飛ばされてしまう少年と優。即座に体勢を立て直そうとするが、少年のほうは既に銃を向けており―――

「しまっ」

 「た」と口にする間もなく、霊体破壊攻撃が放たれる。

「風天……!」

 咄嗟に風を放って打ち消そうとしたが、衝撃を完全には殺しきれなかったらしく、更に飛ばされてしまう。

 地面を転がる優。そしてそれを追いかけるかの如く放たれる霊体破壊攻撃。辺りの地面は穿たれ、もはやそこが地であったことさえ分からない様である。

「まったく、人が本気を出せないのをいいことに……」

 ようやく起き上がることのできた優は、瞳が白銀に変わっていた。

「やっぱり、もう年なのかしら?」

 全身ボロボロで、刀を杖のようにして立つその姿は、確かに老人に似ているかもしれない。

「でもまあ、子供達のためなんだから、このくらいは当然よね」

 おまけに、狼がべた褒めしたせいでハードルも上がっている。

「仕方ないから、もう一度だけ本気を出すわ」

 少年に銃を向けられ、それでも尚、戦う気力を失わない優。体中の傷を血で塞ぐと、刀を地面に突き刺した。

「直接握ってると正気が保てないから、このほうがいいかしら?」

 優の手が離れると、刀は全体が紅に―――血に染まっていく。

 真っ赤になった刀を手に、優は少年に向き直る。

「ここからは覚悟しなさいよ。今までのようにはいかないから」

 言うや否や、優は少年に向かって駆け出す。真っ直ぐにではなくジグザグに走り、少年の狙いをぶれさせようとしているようだ。

 対する少年は真上に跳躍。風の守護もあいまって、遥か上空にまで飛び上がる。

 優は構わず彼の真下まで来ると、刀を空へ振り上げた。

「たとえ空でも―――」

 切っ先から無数の紅い糸が、少年を捕らえんと伸びてくる。少年は銃を向け、霊体破壊で応戦するが―――

「逃げ切れないわよ!」

 声に振り返れば、少年よりも更に上空を舞っている優の姿があった。先程まで地上にいたはずだが、いつの間に……?

 下へ向けられた刀は、少年を貫かんと迫ってくる。風の守護を掻き分け、まるで優を少年の元へ導こうとしているかのように。

「くっ……!」

 銃身を横に向け、それを防ぐ少年。しかし空中で受けたため、勢いのまま地面へと落とされる。

 優はやや離れた場所に落下し、一気に距離を詰めようとして―――

「……っ!」

 放たれた風に足を止め、刀で振り払う。その先には、銃をこちらに向けた少年の姿。

 もう何度目になるか分からない霊体破壊が、優に向かって放たれた。

 優は刀を盾にしようとするが、

「……!?」

 突然目の前に現れた二本の刀が、それを代わりに防いだ。

 そして振り返れば―――

「お待たせ、お優さん」

 両手にそれぞれ鞘を握る闇代と、

「邪魔だったかもしれないが、ちと我慢してくれ」

 その後ろに立つ狼の二人がいた。

「二人とも……」

 優は刀を下げ、彼らの元へ後退する。

「まったくだわ。もうすぐで止めだったのに」

「そういうな。若い者に手柄を譲るのも年長者の務めだぜ」

「それもそうね」

 そんな言葉を交わす二人の前を、闇代が一人で歩いていく。ゆっくりと、ゆっくりと。

「行くよ、ママ」

 そして、右手を大きく振り上げた。

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