最近小説を書く時間があっても書く気になれないから困っている。
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「何か手を考えないと、いつまで経っても終わらないわね」
優は、迫り来る風を切り裂きながら作戦を立てていた。
「おっと」
風に混じっての銃撃。こちらは刀で受けるのが難しいので、横に飛んで回避。続く風の追撃を薙いだ刀で撃ち消しつつ、相殺しきれなかった分は更に横へ飛んで躱す。躱したところへの銃撃は、刀で弾き軌道を逸らす。そうやって、相手の攻撃パターンを調べているのだ。
(とりあえず、戦闘スタイルは中距離特化型ってとこかしら)
それは先程から思っていたこと。銃を主力とし、更に風をぶつけてくるのだから、少なくとも近接戦特化型ではないはず。それは、優が距離を取ってもそれを無理に詰めてこないところからも推測できる。
(風のほうは大した威力じゃないけど、それなりに沢山撃てる。対して銃はそれなりに強いけど、連射性能はあまりよくない、と)
もしかしたら風と同時に使っているためかもしれないが、どちらにせよ同じことだ。
(有効射程から外れたいけど、一応市街地だからそれも無理か)
今は偶然、辺りに人気は無いが、普通なら大騒ぎのレベルである。これ以上戦闘範囲を拡大すれば、色々と面倒なことになるのは必至だ。
「近づけば風に阻まれるし、距離は取れないし、でもってその中間は相手の得意分野、と。……考えれば考えるほど面倒な相手ね」
だとしても、何とかしないわけにはいかない。それが、優の負った役目でもある。
「やっぱり、私じゃ無理ね」
しかしとうとう諦めたのか、優は刀を下ろして目を閉じた。
その無防備な状態を少年が見逃すはずもなく、頭部目掛けて狙撃する。対して優は、それを避けようとさえしない。
「―――そうですよ」
銃弾が、優の額に直撃した。―――が、それはすぐに力なく落下してしまう。
「目には目を、歯には歯を」
弾丸は、優に傷一つ付けることさえ出来ていない。
優は顔を上げ、その瞳を―――澄み渡った青空のような、淡い水色の瞳を少年に向けると、刀を構えなおした。
「そして、風使いには風使いを、です」
◇
「それで、具体的にどうするの?」
「そうだな」
作戦会議中の狼と闇代。どうでもいいが、時間帯を考えると補導される可能性もある。その辺は気をつけるように。
「はーい」
「?」
「狼君はいいの。で、どうするの?」
この声は闇代にしか聞こえないようなので、狼が不思議に思うのも無理はない。
「とりあえず、互いの持ってる武器や技能―――お前の場合霊術な。それを元に考えるのが妥当だと思うんだが」
「武器、か。なくはないけど」
「あるのかよ?」
「狼君はどうなの?」
「俺か? そうだな」
狼は懐を漁り、手持ちの武器を取り出す。
「えっと、こいつは『刈り取る命』サイズ。んでこいつは『疾風の雷花』アレグロ。残りは家に置いてきたから、今はこれだけだな」
一つは、鎌の形状をした武器。もう一つは、矢尻型の武器。どちらもロープのようなものが括りつけられており、それが袖の内側へと伸びている。彼の固有装備だ。
「今はってことは、他にもあるの?」
「ああ。俺の通っている学校にはこれと同じ武器が計五つ伝わっててな。俺はそれを全部持ってる」
「何でそんなの持ってるの?」
「優から貰った」
狼は顔を背け、こう続けた。
「あいつが言うには、俺の母親が遺したらしいがな」
「……」
そう言う彼に、どこか寂しげな彼の横顔に、闇代は何も言うことができなかった。
「ま、それはともかくだ」
狼は闇代に向き直ると、
「俺の戦力は現在これだけ。一応は実戦的に作られているが、正直あまり期待できないかもな」
いつも通りの口調で、作戦会議を再開する。
「で、お前のはどうなんだ?」
「え? ええと……」
闇代は右袖に左手を突っ込むと、そこから星型の金属片を取り出した。
「これがわたしの武器。右の五芳星だよ」
「何じゃこりゃ。海星ブーメランにでもして戦うのか?」
「茶化さないで!」
闇代に怒られ、渋々黙る狼。
「除霊師の大半が持ってる器官で、自分の魂を込めることで霊刀を成形するの」
「霊刀?」
「うん。除霊師固有の武器で、戦う以外にも色んな用途で使われるの」
「なるほど」
狼は顎に手を当て、小刻みに頷いている。
「何とかなりそう?」
「そうだな」
「何とかなるの?」
「そうだな」
「くるくるぱー」
「お前がな」
「ちゃんと聞いてたんだ……」
「当たり前だろ」
適当に相槌を打っていたと思ったのだろうか。
「で、結局どうなの?」
「そうだな」
「もうそれはいいよ……」
「いや、わざとじゃないんだ」
釈明はしているが、傍から見てるとわざとやっているとしか思えない。




