今更ながら、バトルものは性に合わないかもしれない
「……ククッ」
笑い声。
「……ハハッ。……ハハハッ」
少年の口から、小さな笑みが漏れ出した。
「……?」
闇代はそれを不審に思い、足を止める。直後、
「!」
足元への射撃。闇代は即座に後ろへ飛び退く。
「アハ、アハハハハッ!」
狂ったような笑い声が、辺りに木霊した。
顔に手を当て、これでもかと笑い出す少年。自棄になってしまったのだろうか。
そんな彼を、闇代たちは呆然と眺めていた。
「……よくも、俺をコケにしてくれたな」
そして、風が嵐のように吹き荒れる。
「どうなってんだよ……?」
「この風こそが、あれの一番厄介な能力よ」
来たばかりの狼達に説明するかのように、優は呟いた。
「闇代ちゃんは一旦下がって。あれとまともにやり合うのは危険よ」
闇代はそれに頷き、後方へ飛び移ろうとする。
「……させるか」
しかしそれよりも早く、少年の放った弾丸が彼女の右足を貫いた。
「あっ……!」
足から力が抜け、闇代は体勢を崩す。
「……死ね」
そして無数の風が、闇代目掛けて襲い掛かる。
闇代は咄嗟に右手を突き、地面を転がってそれを躱した。直前まで彼女がいた場所を、風が穿っていく。彼女がそれに振り返る間もなく、再び風が繰り出された。闇代は勢いを殺さず、そのまま転がりながら追撃を躱していく。
少年が闇代に向けて発砲。その軌道は、闇代が自ら転がっていこうとしているその先に向かっている。
「……っ!」
闇代の頭部を貫こうとしていた銃弾は、紅の針に打ち落とされた。
「あんたの相手は―――」
それと同時に、優が少年に向かって疾走する。
「私でしょ!?」
振り下ろされた刀から、幾多もの紅い糸が放たれた。それらは弧を描きながら、少年へと突き進んでいく。血で作られた糸も、風に吹き飛ばされて形を失う。だが、元よりそれは当てるために放たれたのではない。
少年の気が逸れている間に、狼は『疾風の雷花』アレグロを放った。少年にではなく、闇代に向かってだ。アレグロはその先端に取り付けられた矢尻によって、空気を貫き高速攻撃を可能にした武器。その特徴をいかんなく発揮し、少年に反応されるよりも早く闇代の元へと辿りついた。そしてそのまま彼女の腕に絡みつくと、狼はそれを力の限り引っ張った。
さすがに少年も、空中を水平移動する闇代に気づいて発砲。しかし、優の刀に阻まれる。
「狼っ! 闇代ちゃん連れて退避しなさいっ!」
狼は闇代を抱き寄せ、少年達に背を向けて走り出す。少年がその背中に発砲するも、またしても優が防ぐ。
「……ったく。本気出さずに殺さず倒すって、どんだけ大変だと思ってるのよ?」
優はぼやきつつも、次の手を考え始めた。




