24話 冒険者ギルドへの報告
お父さん、お母さん、悠太、光希、眠いです。
昨日…と言えばいいのかな?
襲撃が深夜に起こり、ガブリ1階お客様側のテーブルや椅子類、入口が破壊されてしまったの。私はその修繕もあって、2時間くらい起きていました。終了後、眠ったけど、疲れがあまり取れていません。
そして今、お店1階お客様エリアにて、ルウリが、アルドさん、ミントさん、リットに、昨日起きた襲撃と、その原因となったクザンでのやりとりを話しています。そのやりとりをどうやって知ったのかに関しては、ちょっと強引だけど、フリードが暇なので配管に入って店内を探索していたら、店側の人たちが不穏な話をしていたので、盗み聞きしたということにしています。
1階の件に関しては何も言わず、店前で捕縛したと伝えています。ここで私のスキルを言えば、悪い人たちにも伝わってしまうからです。襲撃の証拠として、床には4名の襲撃者が深夜の時から同じ状態で、床に転がっているけど、随分とボロボロになっています。
「で、こいつらがその襲撃者?」
「お父さん、この人たち、なんか怖いよ。ずっと目が虚だもん」
「リット、そっちに行ったらダメよ」
「わかってるよ、お母さん」
3人とも、証拠を見せても、いまいち理解しきれてない。
まあ、当然かもしれない。
自分たちが起きたら、既にこの状態だもん。
誰だって、実感が湧いてこないと思う。
「念のため、こいつらからも事情を聞こうと思って、真夜中のうちに尋問したんだ。当初、全員が抵抗するから、僕のスキルと魔法で心身をボロボロにさせると、一応全て吐露してくれたよ。こいつらは闇ギルドに所属する冒険者、ギルドからの依頼で君らを誘拐殺害しようと目論んでいた。ギルドを仲介しているせいか、依頼者に関しては、何も聞かされていないようだね」
ルウリが誘拐殺害と言ったところで、3人は身体を震わせる。
ようやく、実感が湧いてきたのかもしれない。
「や…闇ギルド、誘拐して殺害、俺の言ったあの一言が原因で…。る、ルウリ。これだけは言わせてほしい。我々、家族を守ってくれてありがとう。君やフリード、ベイツがいなければ、俺たちは殺されていた」
「そ、そうね。ルウリ、私たちを救ってくれてありがとう」
「ルウリ、ありがとう」
アルドさん、ミントさん、リットがルウリに御礼を言ってくれた。
「アルドとミントは、リットに感謝することだね。彼女が咲耶のお友達になってなかったら、僕らも気づかなかっただろう」
ああ、それは言えてる。
知り合ってなかったら、一緒にクザンへ行くこともなかったもの。
「そうだな、リットもありがとうな」
「ええ、ありがとう。貴方が咲耶ちゃんとお友達になって、一緒にクザンへ行ってくれたことで、私たちには無事に被害もなく、生きているんだもの」
被害もなく…か。いずれ、リットたちには私のスキルのことを明かす日が来るかもしれない。この人たちなら、スキルの秘密を明かしても、無闇に喋らないと思う。それに、ルウリとフリードの餌を再現するには、スキルの力も必要だけど、味覚にも優れてないといけない。私とベイツさんだけでなく、味見してくれる人たちが必要だ。この人たちなら、頼りになるわ。
「えへへ…なんか褒められちゃった」
アルドさんとミントさんが、リットの頭を撫でて褒めると、彼女も照れて笑っている。
「あなた、これからは不用意な一言を言ってはダメよ」
「ああ、骨身に染みるほど理解したよ」
アルドさんが申し訳ない顔で、ミントさんに謝罪する。
「ところでルウリ、こいつら4人の処遇についてはどうするんだ?」
それに関しては、私も気になる。
「僕たちが、こいつらを冒険者ギルドに引き渡す。その際、深夜に起きた出来事を話しておく。どうして襲撃されたのか問われるだろうから、クザン内で言ったアルドの一言を言っておく」
襲撃してきた人たちの処遇って、冒険者ギルドに任せればいいの?
「そうなると、いずれ俺たちも事情聴取されるだろうから、辻褄が合うよう説明しておけばいいんだな?」
「そういうこと。あ、ちょっと待ってね。[スリープ]。これで、よし」
ルウリが話を中断し、4人の襲撃者に向けて魔法を放つと、彼らは目を閉じて、寝息を立てる。あれって、睡眠の魔法なんだ。
「さあ、続きをどうぞ」
「クザンの方は、どうなるんだ? 奴らのことだから、当然誤魔化すと思う」
ここからはあの4人に聞かれるとまずいから、魔法で眠らせたのか。
「この街のクザンに関しては、僕とフリードで潰しておく。フリードが真夜中のうちに店へ侵入し、証拠品を全て没収しておいた。それらに関しては、然るべき場所に提出する」
「然るべき場所?」
曖昧な言い方だから、アルドさんも疑問に思っている。
「ふふふ、必ずクザンを裁いてくれる場所さ」
言えない。国王陛下のベッドの上だなんて、口が裂けても言えない。そんなところに置けば、国自体が動いて、やがて大騒ぎへと発展するもの。誰が国王の寝室へ無断侵入したのか、資料の真偽も、絶対に調査される。アルドさんたちは、知らない方がいい。
「ルウリ。クザンが潰れるまでの間、私やお父さん、お母さんは、ずっと狙われ続けるの?」
リットが不安気な表情で、ルウリに尋ねる。
「安心して。そんな暇を与えないよう、フリードが店内の全てのエリアを徹底的に荒らしておいたから。ついでに言うと、既に誰かが治安騎士たちに通報したこともあって、今店は大騒ぎになっている。騎士たちへの対応、絶対に捕まることのない犯人探し、店内の片付け、そういった作業に追われるから、当分の間、店は休業さ。証拠資料の件もあるから、潰れるまで時間の問題さ。フリードと証拠資料の件に関しては、誰にも言わないように」
ルウリの言い方が怖いし、2体とも容赦がない。アルドさんとミントさんは、それを理解したのか、顔色が悪い。2体は、この街のクザンを確実に潰すつもりでいる。
「大丈夫、誰に言わない!! 悪い人たちは、駆逐される運命なんだよ!! ルウリ、色々と動いてくれてありがとう!! ベイツさんにも、後で御礼を言っておくね」
リットだけは、いつも通りのようで安心です。
「ベイツなら、家にいるよ。今日は店も定休日だし、空いている時間に行けばいいよ」
「うん!! お父さん、お母さん。朝のうちに行ってみようよ!!」
「そうだな、朝食を食べて行ってみよう」
「そうね」
私たちは朝食を食べ、お腹をしっかりと満たせてから家を出ると、冒険者ギルドとベイツさんの家の場所は方向も違うので、私たちはすぐに別れることになった。アルドさんたちと別れ、私とルウリは4人の襲撃者を連れて、冒険者ギルドへと向かう。ルウリは私の左肩に留まり、襲撃者たちを魔法でかなり上空へと浮かせたまま移動させているので、現在のところ目立っていません。上空を見上げると、小さな点がポツンと見えるので、襲撃者たちの視点から見ると、かなり怖い光景かもしれない。
○○○
私たちが冒険者ギルドに入ると、4人組のせいで、かなり目立っています。そんな中、フリードを仲間にしたこと、定食屋ガブリにおける深夜の襲撃、誰がその人たちを撃退したのか、ルウリによる事情聴取、フリードの店内無断侵入による怪しげな話を盗み聞したこと、襲撃の原因かもしれない店内でアルドさんの言った一言、『メニュー表に記載されている肉の味じゃない』について、私の口からアメリアさんに順序良く説明していく。
「なるほど、昨日は大変だったのね。それにしても、ルウリってこの国の言葉を話せるのが驚きだわ。ハミングバードの中でも、レベルの高いものは知能も高いと聞いていたけど、真実だったのね」
襲撃より、そっちの方に驚くの?
「そんなルウリとベイツ様がいるのだから、4人の襲撃者であっても、簡単に捕縛されるでしょうね。ただ、ガブリに泊まったのは、咲耶とルウリだけ。ベイツ様は、何故宿泊していないの?」
「ベイツさんもフリードから聞いていたので、襲撃者の人数も不明なので、念のためルウリと一緒に終日周辺を見張っておきたいと言ってました。あと、想定外はつきものだから、過剰にでも見張っておいた方が得策だと言ってました」
これは、後になって聞かされた事なんだよね。
「なるほど、過剰の見張りね。今回、それが功を奏して、4人の襲撃から何の被害なく終えたってことか。相変わらず、あの人の他者に対しての危機察知能力は凄いわね」
「はい?」
今のどういう意味?
「ああ、ごめんなさい。ベイツ様は、スキル[危機察知]を持っているのだけど、このスキルは通常自身の危険を事前に教えてくれるの」
危機察知だから、そういうものだよね。
「でも、ベイツ様の持つスキルだけ別格なのよ。まあ、実際に影響しているかは不明だけど、他人の危機に対して、かなり敏感なの」
「もしかして、私を助けてくれたのも?」
「ええ。あの人のおかげで、ガブリの人たちも助かったのね」
なんか、いいように理解してくれたので、私からは何も言わないでおこう。
「一応、私たちの方でも、あの4人を問い詰めておくわ。治安騎士たちに通報しておくけど、クザンの関係者と証明できないだろうから、アルドさんたちには、今後も用心するよう伝えておいてね」
「はい」
「それと、店への無断侵入は、猫又といえど犯罪です。今回はお咎めなしにしてもらうよう、私から治安部の人たちに言っておくわ」
「ありがとうございます、助かります」
ふ〜終わった〜。
こういうのって初めてだから、凄く緊張したよ。
今頃、リットたちはベイツさんと話し合っている頃だから、私はあの監視者さんと話し合おう。あの人の言った言葉、1つ1つから真剣さを感じた。彼女は自分に対して、どの選択肢を選んだのだろう?




