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10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます  作者: 犬社 護
2章 家族からの別離(現世)

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22話 初めての原点回帰

「咲耶、起きて」


う〜ん、誰?

さっきから誰かが、私の顔を突っついている。

目を開けると、すぐ近くにルウリがいた。

リットが隣で寝ているから、起こさないよう注意しよう。


「ルウリ、どうかしたの?」

「緊急事態が起きた。1階に降りてきて」

「それならみんなを起こさないと」

「だめ。理由は1階で話す。魔法で3人の睡眠を深めているとはいえ、ゆっくりと降りてきて」


魔法を使ったって、何故3人を眠らせたまま、私を起こしたの? とりあえず、足音を立てないよう、階段を降りていこう。1階に到達すると、灯りが付いていて、全体を見渡すと、大変な状況になっていた。


「な、なにこれ!? 何が、どうなってこうなったの!!」


4人の屈強な男性が気絶し、魔法なのか、両手両足が光で縛られ、床に倒れ伏している。少し離れた位置に、黒いフードを被る人がいて、こっちも両手両足を縛られ、何故か文句を言わないまま、倒れ伏した状態で私をじっと見ている。あのフードの人、わかりにくいけど、多分女性だ。


店の状態が酷い。


ガブリの入口が破壊され、椅子やテーブルがいくつか壊されている。幸い、厨房の方は問題ないけど、これじゃあ店を開けられないよ。


「ベイツ、結界は?」

「咲耶が降りて、すぐに2階全体を覆っておいた」

「それなら問題ないね」


いや、問題大有りだよ!!


「咲耶、こっちの男4人は、リット、アルド、ミントを誘拐し殺そうとした襲撃者だ」

「誘拐して殺す!? ルウリ、意味わかんないよ。なんで、そうなったの?」


アルドさんたちを誘拐して殺すって、只事じゃない。


「アルドがレストラン[クザン]で、ぽろっと呟いた一言が原因さ」

「一言? 《オークの肉じゃない》と言っていたような?」

「それだよ。まだ、確定事項じゃないけど、クザンの連中は、メニューに表示されているものとは、異なる食材を料理に使用している」


なんか、似たようなことを日本のニュースで言っていたような?

確か、そういう時の言い方は…


「それって、食材を偽装しているってこと?」

「偽装…そうだね。その言葉が正しい」

「少し呟いただけで殺すってありえないよ」


「アルドは街の料理人の中でも、かなりの腕利きで、顔も広い。誰かに話して、話題を広められたら、店の風評被害になる。それに、クザンを出資統括しているのは、王都にいる【フェルデナンド家】という貴族なんだ」


「フェルデナンド家?」


なんだろう…今、何か頭がちくっとするような変な感覚がした。


「うん。その家を怒らせたくないから、一家を行方不明にさせて、森の中で殺す算段を立てていたのさ」


「酷い…自分のことしか考えていないんだ。あの一言だけで、店にこんな被害を与えるなんて許せないよ」


これ、どうしよう?

明日のうちに、修理できるのかな?


「あ〜その事なんだけどね、この4人のうち3人に関しては、僕とベイツが店の外で気絶させたんだ。でも、1人が逃げようとしたところで、そっちの女にぶつかり殺そうとしたせいで、女が反撃してしまい、男はそのまま激しく吹っ飛ばされて、店に突入したってわけ」


だから、こんな有様なのか。

ベイツさんとルウリだけなら、こんな被害を出すはずないもの。


「そういえば、外が静かだね。これだけの破壊だと、かなりの騒音で騒がられると思うけど?」


壊れた入口からそっと外を伺うと、周囲には誰もおらず、街灯だけが灯っている。


「それはベイツの闇魔法によるもので、家の周囲に音を遮断する結界を張っておいた状態で起きた出来事だから、周囲には何も聞こえていないんだよ」


そんな便利な魔法があるんだ。話を聞いた限り、そっちの4人は悪い人確定だけど、あっちの女性は被害者だよね?


「ねえ、ルウリ。どうして、被害者の女性を魔法で縛っているの?」

「それは、こいつが別口の監視者だからだよ」

「監視って、誰を?」

「君だよ」

「え、私を監視してたの!?」


全然、気づかなかった。


「そのようだね。スキル[解析]で女の情報を探ったけど、この子も色々とあるようだ。まあ、それは置いといて、咲耶にはこのぶっ壊れた光景を、スキルで修復してほしいんだ」


「スキル……もしかして、原点回帰?」

「その通り」


あれは無生物限定で、指定した対象物の時間を巻き戻せる効果がある。なるほど、それを使えば、この光景を無かったことにできるんだ。アルドさんたちには、いつも通りの仕事をしてほしいから、ここは私が頑張らないといけない。


「わかった、やってみる!!」

「まずは、スキルに慣れるためにも、そこの椅子を修繕してみよう」


初めてのスキル行使、私の身体にどんな影響を与えるのかわからないから、1個ずつ試していくんだね。


「うん、早速試してみる」


スキルの発動方法に関しては、色々と教わっているから問題ないはず。

原点回帰、発動!!


あ、私の視界が、VRのような変なカーソル表示が出てきた。これはスキルの説明欄にあったよ。私の見ている物は、長方形のようなカーソルに囲まれる。スキルを発動させたい場合は、心で念じればいい。


あ、壊れた店入口やテーブル、椅子類に、《希少性》《規模》《巻き戻し時間》《消費魔力》《所要時間》が表示されたわ。これも、説明欄に記載があった。


《希少性》は、巻き戻したい物体の価値を示していて、今の世界にとっての価値基準が表示される。基準は、高S>A>B>C>D低の5つ。基準高いほど、消費魔力も増加する。


《規模》は、巻き戻したい物体の体積を示していて、体積の基準は、大S>A>B>C>D小の5つに区分されていて、体積が大きいほど、消費魔力も増加する。


《巻き戻し時間》は、巻き戻す時間を示し、その時間が長ければ長いほど、消費魔力も増加する。


《所要時間》は、巻き戻すまでの時間を指している。これに関しては、ステータスレベルが高いほど、時間も短縮されていくとなっているわ。例として、ステータスレベル1での巻き戻し所要時間は、物品数に関係なく、1時間と指定されている。


巻き戻したい物品類は全部で12点、全て《希少性:D》《規模:小》と表示されている。巻き戻し時間の最小は1日前だから、《巻き戻し時間:1日前》に設定すると、消費魔力量は合計で36と表示された。もしかして、希少性もなく、規模も小さいから、12点ともに魔力を3ずつ消費するってことかな。


「ルウリ。消費魔力36で、壊れた全てを同時に修繕可能だよ」

「「「は!?」」」


え? ルウリ、ベイツさん、拘束されている女性が声をあげる。


「咲耶、全部指定して36?」

「そうだぞ。たったそれだけで、ここまで壊れたものを全て修繕できるのか?」


「ルウリ、ベイツさん、間違いなく36だよ。あとね、レベル1での所要時間は、物品数に関係なく1時間なの。全て指定して、やっていいかな?」


「全てを指定して、たった1時間。ベイツ、ここはじっくりと観察しておこう」

「そうだな。咲耶、身体に負荷が生じた場合は、すぐに言うんだ。初めてのスキルを行使する以上、どこで負荷が掛かるかわからない」


「わかりました、いきます。スキル発動!!


そういった瞬間、壊れた物品類や散乱している破損類がふわっと浮かび、白く半透明な光に包まれると、ゆっくりではあるけども、破損したものが元の物品へと移動していき結合していく。


「なんか、変な光景ですね」

「これが、原点回帰か」


ベイツさんも、初めての光景で、呆気にとられている。


「咲耶、今のレベルだと、1時間かかるんだね?」

「そうだよ、ルウリ。その間、絶対に眠らないようにって記載されているの」


ここで私が眠気に負けて眠ったら、解除されるってことだね。


「そうなると、暇つぶしが必要だね、それじゃあ、今のうちに、そっちの女から、色々と情報を聞き出そうか」


そうだった、私を監視していた女性がいるんだ。私たちが女性に視線を向けると、彼女はビクッとするも、光の鎖で拘束されている影響で立てないでいる。


「こっちは落ち着いたから、君からどうぞ」


ルウリが、彼女に先手を譲る。女性は警戒しながらも、私を見て、口を開く。


「話が違う。君は、無能者のはずだ」


監視者ってことは、誰かに私を監視するよう依頼されたってことだ。そうなると…私の両親に依頼されたことになるから、私の情報をある程度把握しているかもしれない。よし、こっちからも質問してみよう。


「監視者さん、私を監視していたのって、いつからですか?」

「君らがクザンに入る直前だよ」


女性は特に抵抗することなく、すぐに明かしてくれた。


「それじゃあ、私の今の状況を知りませんよね?」

「到着したばかりで、全くわからない」


ルウリやベイツさんもいるし、全然束縛から抜けられないようだし、言ってもいいよね。


「今の私は記憶喪失で、どうして山に捨てられていたのかすらも思い出せません。そんな時に、ベイツさんとルウリに助けられて、この街で生活するようになり、スキルに目覚めたんです」


フードを被ったままの女性は、目を見開き、かなり驚いているようだ。


「はは、あいつらの鬼畜の所業で、目覚めたようなものじゃないか」

「あいつらって?」

「君の両親さ」


私の両親……不思議だな、両親が何処にいるのか、私の本当の名前は何なのか、知りたいと思う欲求が全然湧いてこないよ。


「私は、山中で死んでいたと報告してくれませんか?」


床に倒れ伏したままの女性は、私をじっと見つめている。


「君は、自分の正体を知りたいと思わないのか?」

「今のところ、特に思いませんね。そもそも、私を山中に捨てる時点で、碌な両親じゃないことはわかります」


この人、その両親から雇われているはずなのに、何故か嫌悪感が湧いてこない。何故だろう?


「それは言えてるな…ぐ!!」


ルウリが何かしたのか、光の束縛が強まる。


「穏やかな話はそこまでだ。君、僕たちに全ての情報を明かす気はある?」

「悪いね。私は、依頼者のスキルで縛られている。依頼者の名前やスキル名を明かすと、死んでしまうんだ」


嘘をついている? でも、ルウリもベイツさんも、至って普通の表情だ。

依頼者って、私の両親だよね?


小説とかの展開だと、無能者の私が生きていると困るから、殺してこいと命令された監視者さんということになる。


どう対処すれば正解なの?


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