2話 私は誰?
これってどういうこと?
この子は誰?
私なの?
私は日本人なのに、どうして姿が変わってるの?
「おい、身体を震わせてどうしたんだ?」
おじさんが心配そうな目で、私を見ているわ。
どうしよう…なんて説明したらいいの?
「あの…自分の顔を見たら…」
言葉が出てこない。
本当のことを言っても、絶対信じてもらえない。
私が震えていると、突然温かなものが身体全体を覆う。
「え…おじさん?」
おじさんが私を抱きしめてくれているの?
何故だろう?
知らない人なのに、まるでお父さんやお母さんに優しく包まれているかのような感じがする。
全然、嫌な感じがしない。
「大丈夫だ。君は助かったんだ。今は、過去のことを考えるな。これからのことだけを考えろ」
これからのこと……おじさんがいるおかげで、心が落ち着いてくる。
私の姿が変化したこと。
家族の安否。
今考えても、解決できることじゃない。
今は、ここを早く抜け出したい。
「あ…ありがとうございます。少し落ち着きました」
「そうか」
そう言うと、おじさんが離れていき、私に温かな目を向ける。
この目、お父さんやお母さんが向けてくるものと似ている。
「よし‼︎ まずは、互いの自己紹介をしよう」
雰囲気を変えたいのか、おじさんが突然自己紹介を切り出した。
「俺はベイツ、Aランク冒険者だ。そもそも、俺は33歳だから、おじさんと呼ばれる年齢じゃないぞ」
33?
お父さんの年齢が35歳だから……おじさんと呼ばれる歳だよね?
違うの?
そもそも…Aランク冒険者って何?
それに私の名前は倉木咲耶だけど、この女の子の名前は何なの?
「あの…さっき自分の顔を見た時、驚いたことには理由があるんです。何か重大なことが起きたけど、それが何なのかわからないこと、そして……『この子、誰?』と思いました」
ごめんなさい。
今は状況がわからないので、真実を話せません。
でも、嘘は付いていません。
「つまり…君は記憶喪失ってことか?」
おじ…ベイツさんもキョトンとした顔で、私に尋ねてくる。
「だと思います」
記憶喪失…だよね?
この女の子の記憶なんて、全くないもの。
ベイツさんが何か深く考え込んでいるけど、どうしたのかな?
「どこまで記憶喪失なのかが重要だな。名前はわからないんだな?」
「はい」
《どこまで》って、どういう意味?
「君の症状を調べてみよう。今からいくつか質問するから、落ち着いて答えてくれ」
こういう時って、どんな質問が出されるのかな?
少し怖いけど、私は覚悟を決めて頷く。
「まず1つ目、この世界の名前は?」
「へ? 世界に、名前なんてあるんですか?」
あれ?
疑問に思ったことをそのまま口にしたら、ベイツさんの顔がより一層険しくなった。惑星と言ってくれたら、地球と答えたけど、どうして世界なの? 世界に、名前なんてあるわけないわ。
「2つ目、この国の名前は?」
え!?
ここは日本……だよね?
でも、ベイツさんの服装、どこか日本のものと違う。
私の知る服は、もう少し上質なもの。
それに、ベイツさんの横に置かれているもの、あれって鞘に入っているけど、剣だよね? あんな目立つものを堂々と持ち歩いていたら、銃刀法違反で捕まるはずだよ。そうなると、ここは日本じゃないの?
「わからないなら、無理して答えなくていいぞ。三つ目、君の得意な魔法は?」
「魔法!? もう揶揄わないでくださいよ。いくら私が子供でも、魔法なんて存在しないことはわかっています」
アニメとかで使われているけど、現実の世界で使えるわけないわ。そう思って言った言葉なのに、何故かベイツさんは気の毒そうな顔を浮かべる。
「これは、かなり重症だな。よし、決めた!! この出会いも、何かの縁だ。俺がこの世界の常識を君に教え、一人前になるまで育てる!!」
「ええ!?」
たった三つの質問だけで、どうしてそこまで飛躍するの!?
意味がわからないよ!!




