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運命の人と幸せな記憶  作者: 霜月聖


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消えて、戻る

予約って何のことだろう。

先ほど幸太郎に言われたことが何のことかわからず困惑してしまう。

首をひねりながらリビングに戻ると、テーブルには温泉地のパンフレットが何枚か置かれている。


「もしかして、これのこと?」


一番上に置いてあったパンフレットを手に取り、ぺらぺらとページをめくる。

するとページの間からひらりと一枚のメモが落ちてきた。

拾い上げて見てみるとそこには旅行のタイムスケジュールが書かれている。

時間や観光地、ホテル名などが記載されたそのメモは明らかに自分の筆跡で。


「こんなの書いたかしら。全然思い出せない。」


日付を見ると結婚記念日に合わせて日程が組まれている。

最近結婚記念日の話をした覚えはないし、ずいぶん前に話してそのまま忘れてしまったのか。


「物忘れなんて、誰にでもあるわよね。とりあえずこのメモの通りに宿の予約をとればいいのかしら。」


宿の予約サイトを開こうとスマホを取り出すが、もしこの予定が変更されていたらどうしようと思いなおす。

出発日まで1か月以上余裕はあるし、今日幸太郎が帰ってきたら最終確認して一緒に予約しよう。

そう考えて、メモをパンフレットに挟み、朝食の洗い物をしようとキッチンに向かった。


________


その夜、幸太郎が帰宅して夕食を食べ終わった後にそういえば、と声をかける。


「朝に言ってた旅館ってメモに書いてあったあそこでいいのよね?日程もあのメモの通りで。」


すると幸太郎はきょとん、とした顔でこちらを見ている。


「もちろん。朝にも言ったろ?どうしたの?」


「ああ、そうよね。念のため確認してから予約しようと思って聞いただけよ。洗い物終わったらやっておくね。」


そう返事をすると幸太郎は納得したようだ。頷いてよろしくね、と言ってお風呂に向かった。

その背中を見届けて、洗い物も終わったためスマホとメモを取り出し、予約サイトに情報を入れていく。

予約完了の表示を確認し、ついでにネットショッピングでもしようと何気なく通販サイトを開いた。


旅行も決まったことだし、それ用の服でも新調しちゃおうかな。


そうと決まれば、動きやすいワンピースやシャツなどを物色していく。

いくつか好みに合うものが見つかって、どれにしようかと悩んでいると幸太郎がお風呂から上がってきたので声をかける。


「あ、幸太郎。旅行用に服を少し買おうと思って見てたんだ。悩んでたんだけど、この中だったらどれがいいと思う?」


通販サイトのお気に入り画面を表示して、幸太郎に渡す。

しばらくスクロールして考えていたが、これがいいな、とスマホを返された。

そこには白いレースが縫い付けられた水色のワンピースが表示されていた。

やっぱりね、と思い思わずふふっと笑いがこぼれる。


「なんで笑ってるの?これじゃないほうが好きだったの?」


ちょっとおどおどしながら聞いてくる幸太郎に、違う違うと笑いながら答える。


「幸太郎ってこういう”良いところのお嬢さん”みたいな服装好きよねって思っただけ。私、もともとこういう服装は好まなかったのにいつの間にか幸太郎の好きそうな服ばかり選ぶようになったな~、と思ってつい笑っちゃったの。」


そう、私は女性にしては身長が高いため、可愛らしい服装は似合わないのではないかと思っていた。

そのため大学時代の服装はカジュアル寄りで、スポーティーな恰好ばかりしていた。

しかし、幸太郎と付き合って一緒にショッピングに行ったとき、彼氏の好みの女性になりたいという、今思えば少々くすぐったい動機で幸太郎に自分に似合いそうな服を選んでほしいと頼んだのだ。

その時幸太郎は、ベビーピンクのマーメイドスカートを選んだ。

思わず、えっ、とつぶやいた私に幸太郎は


「美咲ちゃんは肌が白いから淡い色が似合うよ。スタイルもいいんだし、いつもダボっとした服着てるけどこういうのもいいんじゃない?」


そう言って、試しに着てみなよ~と試着室に連れていかれ、ええい、ままよっ!と着替えて幸太郎の前に立つと笑顔で『やっぱり似合うね』『可愛いね』と褒めちぎるものだから、顔を真っ赤にして再び試着室に戻り、ささっと着替え、そのスカートを購入したのである。

付き合いが長くなるにつれて、そのような女の子らしい服装が幸太郎の好みなのだと気付いた。

ジーンズにTシャツの日とスカートの日だと、あからさまにスカートのほうが嬉しそうなためどんどん私服にスカートが増え、自然と女の子らしい服装を自分一人でも選ぶようになったのだ。


女の子らしい服装が好きなことを指摘すると、幸太郎は少し照れ臭そうに


「いいだろ、別に。美咲はスカートに合うんだしさ。需要と供給の一致だろ。」


照れ隠しなのか冷蔵庫の麦茶を取り出し、一気に飲み干している。

そんな姿をまた笑いつつ、先ほどの水色のワンピースをカートに入れた。


________


いつも通りの朝、朝食を用意しコーヒーを淹れる。

頭に寝癖を付けてあくびをしながら起きてきたあなたに「おはよう」と声をかける。

目玉焼きを載せたトーストを食べるあなたを見ながらお弁当を包んだ。

「行ってらっしゃい」と声をかけ、カバンを渡す。


幸太郎を見送り、リビングに戻ろうとするとポケットに入れたスマホがブブっと震える。

通知を確認すると、通販サイトのものだ。

カートに購入していない商品が残っていることを伝える表示に首を傾げつつ、サイトを開くと可愛らしいワンピースがカートに入っていた。


「こんなの買おうとしたかしら。ワンピースならもうちょっとすっきりしたシルエットのほうが、、、」


そうつぶやいてワンピースを検索すると、デニム生地のジャンパースカートが目に入った。


「こっちのほうが好きだな。さっきのは私には可愛すぎるわね。」

そういって、水色のワンピースは購入を取り消し、代わりにジャンパースカートを購入した。


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