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第143話 :「《勇者編》昨日の危機より驚いた!彼女が本を開いた理由」

 昨夜は、もし再び(負化大地)が(急速負化)してしまったときのことを考えると不安で……結局、私は一人で夜通し見張りをしてしまいました。


 けれど、そのおかげで皆さんはゆっくり休めたようで、今日はずいぶん早く起きられたのです。皆さんが目を覚ますと、次々に私のもとへ来てくださり、心配そうに声をかけてくださいました。


「あの……澪、ごめんね。今回の件では、私、本当に足手まといだった。あの「負化大地」の中で、ほとんど精気を吸い取られちゃって、あなたの力になれなかった。」真白さんが、どこか罪悪感を滲ませながらそうおっしゃいました。


「大丈夫ですよ、真白さん。決してわざとではないのですから。それに、今の真白さんは剣術での戦いが主体でしょう?今回のように相手が不死者となると、どうしても撃退は難しいのです。ですから、気になさらないでください」


 私はそう言って、真白さんを安心させるように微笑みました。


「私たち、どうやら寝過ぎちゃったみたいね。一晩中、澪に見張りを任せてしまって……本当にお疲れさま。あなたも疲れているでしょう? 少し眠ったほうがいいんじゃない?」梨花さんが心配そうに声をかけてくださいます。


「お気遣いありがとうございます、梨花さん。でも不思議と今はまだ元気なんです。ですから朝食をいただいて、それからテントを移動させてしまったあとに、少し眠ろうと思います」私はそうお答えしました。


 本当は、まだ突然(負化大地)に巻き込まれるのではないかと心配で……少し戻ることを提案しようと考えていたのです。


「それにしても、澪。あのあと、私たちはただ(負化大地)から逃げ出しただけでいいの? それとも、もう解決してしまったの?」エミリアさんが首をかしげて尋ねてきます。


「まさか。エミリアさん、私にもどうすれば解決できるのかは分かりません。ただ救援を聖国へ送っただけなのです。だから、今はしばらく待つしかないと思います」


 私はそう正直に答えました。そのあと皆で朝食をとり、ようやく私が休む番となりました。ほかの聖騎士の皆さんもまだ回復しておられなかったので、私は少し眠らせていただいたのです。


 ――およそ一時間ほど眠ったでしょうか。皆さんが目を覚まされたので、私も真白さんに呼び起こされました。


 話し合いの結果、現在の野営地をさらに数キロ退くことになり、視力の優れた聖騎士数名が(負化の地)の監視にあたることになりました。


 年配の聖騎士のオスティンさんによれば、ここから聖国に最も近い都市までもまだ距離があり、急ぎ馬を飛ばしたとしても二日はかかるとのこと。ですから、私たちは数日間は耐えなければならないのです。


 そうして行動を開始し、数キロ離れた場所で再びテントを張った私は、ようやく完全な休息に入ることができました。


 ありがたいことに、その間は特別な出来事もなく、私はぐっすりと眠ることができました。そして目を覚ますと、そこにはとても珍しい光景がありました。


「真白さん……? 本を読んでいるなんて珍しいですね。どうして急に?」私は思わず問いかけてしまいました。


「いや、そのね……澪。私、聖騎士なのに今回だけ気絶してしまって、他の聖騎士の皆さんと比べると全然頼りにならなかったの。それで相談してみたら、主な原因は聖魔法を使えないことにあるみたいで……。だから今のうちに聖魔法を学んでみようと思ったの」真白さんは、どこか決意を帯びた表情でそう言いました。


「なるほど……でも聖魔法って、本を読むだけで学べるものなのでしょうか?たしか、ただ学びたいと思っても習得できないと聞いた覚えがありますが……」


「ええ、その通り。だからオスティン先生に聖典をお借りしたの。女神さまの教義を理解できれば、聖魔法を使えるようになるかもしれないと思って。だって、私は聖魔法というスキルを持っているはずだから。本来なら聖騎士であるべきで、騎士止まりではないはずなのよ」


「そうだったのですか……聖典は貸していただけるものなのですね。……ところで、真白さん。もし本当に聖魔法の素質があるのだとしたら、それは日本にいた頃から信仰心をお持ちだったということですか? 私、初めて聞きました」


「はは……やっぱり言ってなかったよね。私の家は仏教徒だったのよ。だから両親は牛肉をほとんど食べなかった。でも私はあまり信心深くなかったから、普通に食べちゃってたの。多分、そんなに信仰心が強くなかったせいで、今も聖魔法を扱えないんだと思う」


 真白さんは苦笑しながらそう答えました。


 ――私はその言葉を聞きながら、彼女の真剣な横顔をしばらく見つめてしまいました。

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