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第138話 :「少し話したら分かった、美月は「排他的なもの」が嫌い」

 俺はふと気になって、美月に問いかけてみた。


「美月さ、最初にこの世界に来たときの口ぶりだと、けっこう女神様のこと敬ってる感じだったろ? なんで聖教の授業とかはあんなに嫌がってんだ?」


「えっと、別に女神様のことは嫌いじゃないの。むしろすごく感謝してるくらい。でも、(宗教)っていうもの自体には、どうしても抵抗感があるのよね」


 美月がそう言った瞬間、俺はちょっと驚いた。


「なんでだ?宗教になんか嫌な思い出でもあるのか?俺はそんな話一度も聞いたことないけど」


 凛も首をかしげながら口を開いた。


「そうだね、美月。僕も聞いたことなかったな。美月にとっては、けっこう大事なことなんじゃない?」


「……大げさなことじゃないんだけどね。小さい頃、父さんが旅行好きで、よく海外に行ってたの。その時に、とある国を訪れたんだけど……そこはまるで国教みたいに一つの宗教を国全体で信じていて、国民のほとんどがその信仰に従っていたの」


 美月は少し神秘的な雰囲気で語った。国名までは言わなかったけど、なんとなく察しはつく。彼女は続ける。


「それでね、現代の技術も知識もあんなに発達してるのに、すごく不思議な戒律を守ってて……しかもそれが法律にまで書き込まれて、国民も外国人も強制的に従わされるの。あれは、本当に嫌だったな」


 その言葉に、梓がすぐさま頷く。


「わかる気がするわ。自分が信じて選んだ教義を守って生きるのは自由だけど、狂信者って他人にまで押し付けようとすることが多いのよね。あたしもそういうの大っ嫌い」同じ気持ちの人がいたせいか、美月は少し熱っぽく話し出した。


「そうなのそうなの!日本の宗教って、人に善くあれとか、そういう教えが多いでしょ? それはいいと思うんだ。でもさ、日本でも昔は仏教を信じていたからお肉を食べちゃいけなかった時代もあったのよ。豚とか牛とか、人間にとって大事な栄養源なのに、“汚れた動物だから食べちゃダメ”なんて……現代から見たらすごく封建的でしょ?」


 その話を聞いて、俺もだいたい美月の言いたいことが掴めてきた。


「なるほどな……美月は、変な思想のせいで自分の生活が縛られるのが嫌なんだな?」


「そういうこと。正直ね、空気を読めっていう文化すら好きじゃないの。誰とでも友達になれるはずだし、他人に迷惑かけない限りは自由でいいと思うのに、“暗黙のルール”を守れって縛られるの、ほんと嫌。だから外国のほうが個人にとってはずっと生きやすいと思うな。実は外国があんまり“空気読む”なんてないもの」


 ……やっぱり美月は、昔いじめられた経験があるんだろう。だからこそ、排他的なことや強制される文化が大嫌いなんだ。凛は美月をそっと抱きしめながら、言った


「なるほどね。それ、すごく美月らしいよ。排他的なのが大嫌いだもんね。罪人とか悪人じゃない限り、美月はちゃんとクラスのみんなとも仲良くしてるし」


「まあまあ、そんなに拒否反応起こすなって。ルナリア女神様の教えだって、地球の宗教とは全然違うかもしれないだろ? だってここは本当に神様が干渉してくる世界なんだし。どう見ても邪神とか腹黒い悪人には見えねえしさ。とりあえずルリエ先生の授業、ちゃんと受けてから判断すりゃいいんじゃね?」


 俺がそう言うと、美月は少し渋い顔をしながらも頷いた。


 俺自身は楽観的に考えている。第一層の迷宮以来、女神様と直接会話することはないけど、あのギャルみたいなノリの口調からして、変な戒律を押し付けるタイプには到底思えない。


 もし本当に慈悲深くて「殺生はダメ」とか「肉食禁止」なんて思ってるなら、そもそも生物同士が殺し合わずに生きられる世界を最初から創ってただろう。


 でもルリエ先生の話を聞く限りだと、人間が過去に何かをやらかしたせいで悲劇が起きた――そんな印象なんだよな。女神様は、世界に直接干渉するより、ただ静かに見守るのを好んでいるように思える。


 真相を知るには、やっぱり授業の日を待って、ルリエ先生にしっかり質問していくしかねえな。

皆さま、こんにちは。


瑛太たちの物語に再び戻り、楽しんでいただけましたら幸いです。


実は最近、体調があまり優れず、そのため執筆にも少し影響が出てしまっております。しばらくの間は、いつもより短めのお話になるかもしれませんが、どうかご容赦くださいませ。

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