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第118話 :「ゴブリンを倒したら、なぜか美少女ゴブリンがついてきた」

「よかったな、みんな無事で。本当にお疲れさん!」勝利の余韻に浸りながら、俺は笑顔で美月と凛を迎えた。


「はい……戦ってる間は夢中でしたけど、今になってすごく疲れました」美月が目を細め、少しだるそうに呟く。


「お疲れ、美月もよく頑張ったな。ほんとありがとよ、あれはかなり無茶だっただろ」凛は猫の姿の美月を抱き上げ、優しくその頭を撫でる。


「そうそう、今回は美月と凛が一番頑張ってたんだし、ほんとお疲れさま。でもさ、どうしてあんな息ピッタリで空中戦できたわけ? 凛が跳ぶ瞬間にピッタリ足場出すなんて、普通ありえないでしょ」梓はやっぱり気になって仕方ないって顔で問いかける。


「えっと……実は凛に抱っこされながら、前足をずっと握られてたんです。凛が跳びたい時は、こうやって前足をギュッて合図してくれるんですよ。それで凛の位置を見て、どこに足場を作るのが一番いいか推測してました」


 美月は自分の前足を持ち上げて説明する。肉球は柔らかそうで弾力もあって……正直、俺も触ってみてぇなって思った。


「僕が跳ぶ時、片足を軽く畳むと、美月がもう片方の足の下に氷の足場を作ってくれる。あとは魔力の流れを感じ取って、合わせるだけだよ。」


 凛は軽い調子でそう言ったが、俺と梓には分かってた。――あれは信頼がなきゃ絶対にできない動きだって。さっきも互いを守り合ってたんだ、あんな単純なもんじゃない。


「……グルルルル」


 その時、低い唸り声が響いた。俺たちは反射的に警戒態勢に入り、俺は刀を抜いて音の方を睨む。


「まさか……あれだけの攻撃を受けて、このゴブリンまだ生きてるんですか」美月が爪を構え、今にも飛びかかろうとしている。


「なら、さっさととどめ刺すか。弱ったやつを相手にしてるみたいで気が進まねぇけどな」凛も鋭い目つきで殺す気満々だ。


 だが、俺はふと一つの考えが浮かんだ。


「ちょっと待て。……なあ、こいつ従わせられねぇかな? もっと言うと、梓の従属幻獣にできたりしないか?」


「はあ!? 瑛太、あたしゴブリンなんか使役したくないよ!印象最悪でしょ、あんな性欲モンスター、連れて歩きたくもない!」


 梓が即座に拒否する。言いたいことはよく分かる。俺たちの世界じゃ、ゴブリンは散々なイメージで描かれてるからな。


「……でもよ、そのゴブリン、雌なんだぜ。見た目じゃ全然分かんねぇけどな」俺がそう指差すと、美月も凛も梓も、同時に目を見開いて固まった。


 ゴブリンの醜悪な姿と「自分たちと同じ性別」という事実――そのギャップに、全員が衝撃を受けていた。


「それに、みんな気づいてたか? あいつの召喚獣と俺の召喚獣って、致命的な差があるんだぜ。俺のは倒されるとそのまま消えるけど、あいつのは死体を残すんだ。もしあいつの能力が使えたら――魔石、好きなだけ手に入れられるんじゃないか!」


 俺がゴブリンを生かしておいた本当の理由はそこだ。何で差があるのか知りたかった。召喚スキルにまで格差があるのか? この世界のシステムがどう動いてるのか、純粋に好奇心が湧いてきたんだ。


「へぇ、女の子だったんだ。じゃあ捕まえても問題なさそうだね。あたし、魔物の従えたことないし、こういう基本から始めるのも悪くないかも。でもこれ、Bランクだよ? 私に従わせられるかな?」


 梓が首をかしげながら言う。普段どおりに砕けた口調だが、目は真剣だ。


「俺にもできるか分からん。まずはやってみてくれ。ぶっちゃけ、俺だってこの世界のランクシステムを完全に理解してるわけじゃないからな」


 もうここに来て一か月近く経つ。迷宮を歩き回る生活にも慣れたせいで、細かいところが気になり始めている。たとえば、魔法が初級・中級・高級に分かれてるのに、“高”だから単純にダメージが高いってわけじゃないってこと。むしろ、それぞれ使える魔法の種類や効果が違う印象なんだ。


 例えば、初級の水魔法ウォーターボールは純粋に水属性ダメージ。だが中級の(ウォータースピア)は水属性ダメージに刺突ダメージが合わさった複合属性で、単純に「数値が上がる」わけじゃない。そんな感じだ。


 まあ、それはそれとして――。みんなも楽に進化したいって気持ちは同じらしく、結局そのゴブリンをまず捕まえてみようってことになった。梓がゴブリンの前に立ち、スキル(幻獣従属)を発動する。


 ゴブリンの身体に魔法陣が浮かび、光を放ち始めた。1分ほど経って……成功したらしい。ゴブリンの体にも魔法陣が浮かび、どうやら梓に従属した表示が出ている。


 だが――変化はそれだけじゃなかった。ゴブリンの身体が、じわりと変形し始める。何だこれ、胸や腰のラインが強調されてきて、黒い長髪が生えてきたぞ。あれ、女っぽくなってる……? しかも顔つきが、あのゴブリン特有のグロテスクさから、見事に“美少女”へ変わっていく。


「ちょ、ちょっと待て……その顔、何そのレベル!?」


 その顔は――まるで日本のアイドルの写真を切り抜いて貼り付けたみたいに整っている。唯一の違いがあるとすれば、肌色が緑であることくらいだ。


 光がだんだん弱まり、ゴブリン――いや、今や完全に美少女になったその子が眠るように横たわっている。俺たち四人は、思わずぽかんと口を開けて見入ってしまった。全員の頭の中に浮かぶのは同じ疑問だけだ。


「「なんでこんなに簡単に人型になれるんだよ……!」」

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