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第113話 :「闇からの奇襲を退け、そして見えた敵の姿」

 俺たちの予想どおり、最初のホブゴブリンだけじゃなく、さらに複数の敵が潜んでいやがった。


 しかも今回の連中は暗殺系統ばかりで、常に影から俺たちの隙をうかがい、少しでも油断を見せれば即座に襲いかかってくる。


 再び敵の気配を察知した俺は、左側へと刀を振り抜き、ホブゴブリンの突きを受け止めた。俺は右利きだから基本は右手で刀を握る。だが左手には、愛用の短剣《黒曜石の短剣》を抜き、そのまま敵の顔面めがけて投げ放った。


 短剣は正確にゴブリンの片目を貫き、奴の勢いを削ぐ。数歩後退した隙を逃さず、俺は刀をその胸に突き立てた。心臓を貫いた一撃で、敵は崩れ落ちた。すぐに死体を回収し、隊列に戻る。


 今の俺たちの陣形は――前方に美月、左に俺、右に梓、後方を凛が固める形だ。この布陣が崩れりゃ、一気に群れに襲われかねない。だからこそ迅速に片付ける必要がある。


「ちっ、いったいどんだけ敵がいるんだよ。まだ二十メートルも進んでねぇのに、もう三十回近く奇襲されてんぞ」俺がぼやくと、美月が周囲を見渡しながら答える。


「分かりませんけど……まだ、かなりの魔物に見られている気がします」


「まったく……。常に警戒しながら進むのは、精神的にきついな」凛も疲れをにじませる。数時間ずっと気を張り詰めてりゃ、無理もない。


「普通の冒険者パーティーなら、きっと偵察役が一人はいるはずだよね。そうすれば正体を暴いて直接叩けるのに」梓がオタクっぽい口調で分析する。


 ――まあ、梓は隠れオタクだし、こういう知識には妙に詳しい。それにしても進行が遅いのは、敵の待ち伏せだけが理由じゃない。


 この部屋には追加の制限がかかっていた。そう――ここでは魔力が自然回復せず、しかもスキル使用時の消費が二倍になっていやがる。無駄撃ちなんてしてたら、あっという間に干上がる。だから慎重に、少しずつ前へと進むしかなかった。


 そんな中、俺はふと足を止めて言った。


「みんな、ストップ。……また罠だ。ちょっとカバーしてくれ」


 そう、このエリアには罠まで仕掛けられている。しかもちょっと前に、一度罠解除中にホブゴブリンの奇襲を食らったこともあった。


 目の前の仕掛けは魔法系の罠、それも召喚型だ。仕方ねぇ、また魔力を消費してでも解除するしかない。

 俺は(具現描写)スキルを発動し、集中して解析に取り掛かる。


 その時だった。


「僕の領域に踏み込んで、瑛太君を傷つけるなんて――許さない!」


 闇に覆われた空間でも凛の感覚は鈍らない。半径三メートル以内に近づけば、敵の魔力を即座に察知できるのだ。どれだけ潜伏に長けた刺客でも、彼女の目は誤魔化せない。


「はっ!」


 鞘から抜刀するまで、わずか〇・五秒。

 閃光のような一撃が走り、ホブゴブリンの胴を縦に断ち割った。

 真っ二つになった死体が地面に崩れ落ちる。


 ……さすがは凛、頼もしすぎる。


 梓がホブゴブリンの死体を見下ろしながら、まるでなんでもないことのように口を開いた。


「今日だけでホブゴブリンの肉、いっぱい手に入ったな。そろそろ食材にするしかないかもな。」


 ……おいおい、淡々ととんでもねぇこと言いやがったな。美月はその瞬間、全身の毛が逆立つみたいにぴんと硬直して、顔を真っ赤にしながら叫んだ。


「梓、そんなひどいこと言わないでください!ゴブリンの肉がどれだけ不味いか、知らないからそんなこと言えるんです。あれは臭みがすごくて、しかも硬くてパサパサで……本当に吐きそうになるんですよ!」


「ふーん、そうなの?でも、こいつらは上位種でしょ?もしかしたら、味もマシかもしれない。……それとも、美月は瑛太の料理の腕を信じてないの?仕方ないね。瑛太、新しい料理を試したいならいつでも言って。美月が嫌がっても、あたしが最後まで味見してあげるからさ。」


 挑発するように笑う梓に、美月は慌てふためいて顔を真っ赤にして反論する。


「ち、ちがいます!瑛太さん!もし挑戦するなら、私だって喜んでお手伝いします!梓さんだけに試食させないでくださいね!わかりましたか!」


「はいはい……。よし、じゃあ今回の新料理の素材はホブゴブリンの肉に決定だな。みんな、気合い入れてこの苦難を乗り越えようぜ!」


 俺はそう言って、半分本気、半分冗談で会話を締めた。軽口を叩き合ってるのも、気持ちを和らげるためだ。こんな終わりの見えねぇ通路を進むんだ、少しでも気を抜かねぇと精神が持たない。


 罠を解除し終えた俺たちは、もう一秒でもここに長居したくなくて先を急ぐ。だが俺の中で、根本からケリをつけなきゃって気持ちが強くなっていた。だから久々に、俺はSランクスキルを発動させる。みんなの心をリンクするスキルだ。


「……いいか、しゃべんな。返事もしなくていい。俺の声が直接、みんなの頭に響いてるはずだ。今から俺が作戦を伝える。敵の潜伏場所はおおよそ割り出せた。だから次は……こう動く。」


 内容を聞いた仲間たちは、黙ってうなずくように視線を交わして同意を示した。


 今回の先手を任されたのは梓だった。理由は簡単、彼女の魔力だけは正常に回復するからだ。おそらく魔力特化のスキルのせいだろう。この不利な環境も、梓にはあまり意味を成さない。


 梓は静かに心の中で高級の風魔法を詠唱し始める。魔導書を読み込んでわかったが、高級魔法は声に出さなくても、心の中で唱えれば十分発動できる。


 そして敵はやはり俺たちの変化に気づかず、またしてもゴブリンアサシンを差し向けてきた。……正直言って、知恵は多少あるが所詮その程度。


 同じ手で何度も仕掛けてきて、それで勝てると思ってるんだからな。まさにあの言葉通りだ。「狂人とは、同じことを何度も繰り返しながら違う結果を期待する奴のこと」。


 敵は馬鹿か狂ってるかどっちかだ。俺は迫る小刀を受け止め、すぐに梓に合図を飛ばす。


「今だ梓!敵の正面じゃなく、向かいを狙え!!」


「わかってる!正体を暴いてやる!!――《スパイラルトルネードシュート》!」


 梓の風魔法が放たれ、渦を巻きながら空間を切り裂く。そして、ありえねぇことに、魔法は半ばで止められた。


 ……そうだ。そこには敵の防御結界が張られてた。次の瞬間、隠蔽が剥がれ、影に潜んでいた一群の姿が露わになる。


 アサシンよりも一回り大柄で、装備も洗練されたゴブリンたち。その中心には――白いローブを羽織ったゴブリン。


 ……あいつだ。こいつが、今まで俺たちを陰から何度も狙ってきた張本人に違いない。


皆さま、こんにちは。


ここ数話では、瑛太たちの現在の感情や、彼らの関係性の雰囲気を描かせていただきました。これを通して、より一層キャラクターたちを好きになっていただければ嬉しく思います。


そしてついに、今回の戦いにおいて敵の正体が明らかとなりました。物語はいよいよこの戦闘のクライマックスへと突入いたします!どうぞ次回以降の戦闘にもご期待くださいませ。


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