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第106話 :「絆が強敵を打ち砕く、そして見えた迷宮の真実」

 そうやって考えを巡らせつつ、必死に魔法の砲撃を防ぎ、回避していると――


「瑛太さん、今です! 次の光線は水属性です!」


 美月の合図。


「よし!」


 俺は即座にゴーレムへ向かって駆け出す。俺は進化して食屍鬼になった今でも、弱点は火属性。逆に水属性には耐性がある。つまり今が好機。相手の弱点を看破する絶好のチャンスだ。


 そして予想通り、青い光線が蓄積を終え、俺へと撃ち込まれた。


 最初は必死にかわしたが、接近するほど光速の奔流を回避するのは不可能。十歩先でついに被弾した。

 だが――俺は万全の準備を整えていた。重傷には至らず、そのまま光線を真正面から受け止めつつ突進する。


 やがてゴーレムが撃ち終え、充填の隙が生まれた瞬間、俺は刀に四属性の魔力を纏わせて振り抜いた。

 ズバァッ!


 手応えを感じた俺はすぐさま後退し、仲間たちへ情報を共有する。


「みんな、こいつの弱点は火属性だ! 火魔法を準備してくれ!」


 その一言で空気が変わる。だが同時に、ゴーレムの行動パターンが切り替わり、標的を俺に集中させてきた。


「……いいぞ、そのまま俺を狙え」


 俺は攻撃を回避しながら、姿を一瞬だけ揺らめかせた。次の瞬間にはまた通常に戻っている。ゴーレムは気付かない。


 実際に攻撃されているのは、梓が投影した俺の幻影。実体を伴ったほどにリアルな分身だ。本物の俺はというと――梓と共に、音もなく敵の背後へ回り込んでいた。


 短い隙を得た俺たちは、それぞれ火属性の魔法を準備。そして先陣を切ったのは梓だった。


「火の精霊よ、どうかあたしの願いを聞き届けてください。あたしの魔力を糧とし、この世界をあなたが望む正義の姿へと変えてください――《フレイム・ジャッジメント》!」


 ドカーン。梓が長く詠唱していた上位火魔法が、ゴーレムの背に突き立つ無数の管を飲み込み、爆発を引き起こした。


 連結されたエネルギーは暴走し、二次爆発を誘発。ゴーレムの巨体が大きく仰け反り、膨大なダメージを負ったのだった。


 梓の炎がゴーレムの背を焼き焦がしたことで、やつの巨体は悲鳴を上げるようにのけ反った。そしてそのまま、怒りの矛先を梓へと向けてしまう。


 つまり――背後が丸裸になったということだ。そこに立つのは、美月と凛。


「凛、あなたの刀に……火属性を」


「任せて、美月!」


 美月が凛の刀身に火の魔力を纏わせる。炎は赤く揺らぎ、刀身を包み込むように燃え上がった。凛は刀を鞘に納めたまま、無駄のない歩幅でゴーレムの背後へと近付いていく。


 七歩。あと七歩で届く距離――凛の構えが変わった。


「喰らえ!――《斬心・一文字》!!」


 瞬間、炎と剣気が刀身を駆け抜ける。まるで奔流のような熱気が刀尖に集約され、凛は一閃の抜刀を放った。刀はゴーレムの背を貫き、その胸を突き抜け、奥に隠されたコアを穿つ。


 ドゴォォォンッ!


 内部で火属性の魔力が爆ぜ、ゴーレムの身体から業火が噴き上がった。コアを損傷したせいか、奴はもう光線を放てなくなっていた。


「凛、十分です。あとは私に任せてください――《火炎の吐息》!」


 美月が大きく息を吸い込む。彼女は元々、氷の吐息しか使えなかった。だが今は違う。全属性の吐息を使える彼女が放つ炎のブレスは、数分間の蓄力を経た大技。


 ドォオオオオッ――!!


 紅蓮の奔流がゴーレムを包み込み、先ほどの光線に匹敵する破壊力を叩き込む。だが、それでもゴーレムは動きを止めない。


 立ち上がり、なおも拳を振り下ろそうとする巨体。


「しぶといな……だったら、トドメは俺だ!」


 俺は刀を構え、詠唱する。


「――チェックメイトだ! 《フレイム・ミサイル》、十二連発!!」


(具現描写)によって顕現した十二の火炎弾が一斉に射出され、矢継ぎ早にゴーレムへ叩き込まれる。

 ドゴォォォォォォォォンッ!!


 火炎の連撃にさらされたゴーレムは、ついに膝を折り、その巨体を地響きと共に倒した。


「ふぅ……確かに苦戦だったな。けど、人数が多いとやっぱ違う。もし俺と美月だけだったら、相当時間を食ってたはずだ」


 俺は感慨を込めてそう口にする。


「でも……どうしてでしょう? たった第三層なのに、敵の強さが急に上がりました」


 美月が首を傾げ、不思議そうに呟いた。


「……この迷宮自体が、もともとそこまで深くないんじゃねぇか? ただ、浅いからといって楽とは限らねぇ」


 俺はそう答える。


「瑛太君、それってどういう意味?」


 凛が小首を傾げて尋ねてきた。その仕草に、思わず可愛いと思ってしまう。


「俺さ、ゲームやってる時もそうなんだけど……作った奴の意図を考えるのが好きなんだよ。だからこの迷宮の存在理由についても、ずっと考えてたんだ」


「おや、仮説があるのですか? あたし、手持ちの本はほとんど読破しましたけど……迷宮に関する記述は一つも見当たりませんでした」


 梓も疑問を口にする。


「……ああ、あるぜ。まぁ簡単に言うと――この迷宮は、入ってきた奴を“選別”してる可能性が高いってことだ。目的まではわからねぇが、少なくとも“探索させるための迷宮”じゃねぇ。むしろ、“何かを封印してる”類のダンジョンだろうな」


 俺は少し神秘めいた口調でそう言い放つ。


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