第69章:お葬式当日(1)
・・・そのむかし。
民俗芸能「幸若舞」の演目『敦盛』というものがあり・・・
その中の一節に、次のような文言がある。
『思へばこの世は常の住み家にあらず
草葉に置く白露、水に宿る月よりなほあやし
金谷に花を詠じ、榮花は先立つて無常の風に誘はるる
南楼の月を弄ぶ輩も 月に先立つて有為の雲にかくれり
人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり
一度生を享け、滅せぬもののあるべきか
これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第ぞ』
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ぼくたち人間も・・・
そして、茶太郎ちゃんたち動物も植物も・・・
この世に生を享けた、その瞬間から、
「死へのカウントダウン」が始まり、
いつか必ずやってくる、すべてのものたちとの「別れのとき」を味わわなくてはならぬ、
悲しき運命にある。
命あるものは、すべて「死」からのがれられないのだ。
それは・・・
どんなに権力があろうとも、
莫大な財産があったとしても、
ひとつの例外もなく・・・
神により、定められし、
けっして避けることのできない、
『宿命』なのだ。
☆ ☆ ☆
・・・はじめて、
真岡市のカンセキのペットアクアリウムの小動物コーナーにて、茶太郎ちゃんと出会って以来・・・
2019年12月3日、葬儀当日を迎えるまでの、9年あまりの年月は・・・
過ぎてしまえば、すべてが、
本当に、あっという間の出来事だったような気もする。
ぼくと茶太郎ちゃんは、
お互い、それぞれの立場で・・・
苦しくて、つらい時期も、たしかにあった。
だが、
今日の最後の大きな節目の日を迎えるまで、
いたわりあいながら、
励ましあい、助け合いながら、ここまでの道のりを、ともに仲良くあゆんできた。
・・・本当に充実して、お互い、幸せな毎日であった。
そして、いよいよ、
彼の最後の、愛らしい肉体を自宅で何枚か写真におさめたぼくは・・・
愛する茶太郎ちゃんとともに、
矢板市南部にある火葬場・・・
『しおや聖苑』に向けて、
出発した。




