第67章:しめやかな通夜と、お葬式の準備(5)
・・・嫌な思い出の渦巻く、
『T』という葬儀社の2号店をあとにしたぼくが次に向かったのは・・・
『山木屋』という葬儀社だった。
実は、この会社にも、ぼくは因縁・・・いや、リッパな「縁」があったのだ。
ぼくの最愛の父が、2003年9月23日のお彼岸に亡くなった際、
葬儀をお願いした会社だったからだ。
あれこれと、父に合った形の葬儀を演出してくださり・・・
おかげで父は、安らかに天国へ旅立つことができたのだった。
いまでも感謝しているのだが・・・
今回、
茶太郎ちゃんの件でもまた、
あらためて、
この会社の「あたたかい真心」「誠実で深遠な社風」というものを知ることとなった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
・・・葬儀社に着いたぼくは、
さっそく、茶太郎ちゃんの件について説明し、
彼専用の「骨壷」と、風呂敷がないか、たずねてみた。
ぼくの父の葬儀を担当してくださった従業員の方は不在だったものの・・・
優しそうなお姉さんと、誠実そうな中年男性が、対応してくれた。
事情を聞いた彼らは・・・
お忙しいにもかかわらず、
面倒くさそうで嫌な顔も見せず、
すぐに、「お目当ての品」を持ってきてくださった。
「・・・栗原様。ご希望に沿えるのかはわかりませんが、これなどいかがでしょう? 不要になっていた箱と、風呂敷なんですが・・・。」
そういって、彼らが渡してくれたのは・・・
古びてはいたが、
骨壷をおさめるのにはピッタリの立派な木箱と、
まっ白な、真新しい風呂敷2枚だった。
「これ・・・・いくらですか?」
「いえいえ。お代はけっこうです。ぜひ、これでよかったら、うさちゃんをねんごろに弔ってあげてくださいまし。」
「本当によろしいんですか? しかも、タダでこんな立派なものを・・・。」
「ええ、ぜひ。うさちゃんのご冥福と安らかな旅立ちを、わたしどもも、お祈り申し上げます。」
「あ・・・ありがとうございます・・・。このことは、一生、忘れません。」
ぼくは、
深々と頭を下げ、
合掌で見送ってくださった従業員おふたりに感謝しつつ・・・
ふたたび、涙にくれながら、
ゆっくりと葬儀社をあとにした。




