第55章:おだやかで平和だった、彼との残された日々(7)
2019年12月1日、早朝。
・・・この日ぼくは、宇都宮市清原にある、
『M』という企業の守衛手伝い勤務の、夜勤シフトが組まれていた。
とても寒い朝だったので、
トレーニングルームの茶太郎ちゃんのケージには、
保温の観点から、分厚い毛布がかけられ、
タイマーセットした石油ファンヒーターも、まだ赤々とともっていた。
もちろん、周囲には、可燃物をおかぬよう、
細心の注意を払ってはいたのだ。
まだ、実は、勤務開始まではたくさんの時間の余裕があったのだが、
ぼくは元来、
どこの現場へおもむくときににも、遅刻防止の観点から、
ふだんから、最低1時間の時間的ゆとりをもって、出勤するのが主義だった。
勤務開始と同時に、「さあ、始まりました。」となるのは、精神的にも、心情的にも、
ぼくにとっては負担が大きかったから、という理由もある。
仮眠をとったり、コンビニでトイレや買い物をすませる、ということもあったし。
(でも・・・ゆうべの茶太郎ちゃん、どうしたんだろうな・・・。とてもさびしい、意味ありげな、ぼくに何か伝えたいような・・・そんな悲しい目をしていたっけ・・・。)
しかし、
毛布全体に包まれたケージからは、
茶太郎ちゃんの様子は、かいもくつかめなかった。
こうした早朝に出勤することも多かったぼくは、
そんな朝には、母に彼の世話を一任し、いっさいを信用してまかせっきりになっていたのだった。
ぼくは、茶太郎ちゃんを物音で起こさないように、
そっと部屋から退出し・・・
車のエンジンをかけた。




