第46章:褥瘡(じょくそう)との戦い(2)
下半身がまったく動かず・・・
前脚のみで、本当にゆっくりとではあったが、
それでも元気に、ケージ内を動き回っていた茶太郎ちゃん。
重たい両脚を引きずり、懸命に前脚で、
半時計周りに、金網の床を移動していた。
(・・・茶太郎ちゃん、つらいよね。怪我をするまでは、毎日、ジャンプしてはしゃいで、ぼくの左腕に飛びついて、じゃれていたのに・・・。)
ぼくが無言の涙目で彼の頭をなでてあげると、
茶太郎ちゃんは、
(ほら、元気だしてよ。ぼく、こんなに歩き回って、しげお君と遊べているじゃない。だから、ちっともつらくなんかないし、さびしくもないんだよ。)
と、逆にぼくを励ましてくれているようだった。
・・・いや、まちがいなくそういう心境でいてくれていたのだろう。
ずっとあとにも実は、
そういった場面を皆さんと、あらためてまた共有することになるだろうが、
いまは、
「褥瘡」の話にフォーカスさせていただきたい。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
・・・人間の皮膚は、とても弱い。
しばらく寝たきりの生活になり、
体の、床と接している部分というものは、
うっ血して、血流が滞ってしまうために、
ほおっておくと、
「壊死」といって、組織が腐ってダメになってしまう。
さらに、その傷をほおっておくと、
そこからさらに、バイ菌やウイルスが体内に入り込み・・・
やがて、死にいたる。
そこで、一般の病院や介護施設などでは、
寝たきりで体が自力では動かせなくなってしまわれた患者の皆さんのために、
褥瘡防止の観点から、
「体位交換」という手技や介護技術を、患者様にほどこすわけである。
つまりは・・・
同一部位が、床や地面にずっと接触していないように、体制や姿勢を、第三者が変えてやる、ということなのだ。
茶太郎ちゃんの場合、
ゆっくりとケージ内を移動してはいたものの・・・
ずっと床に、体の下の部分が接触しっぱなしだったことに変わりなかった。
そしてある日のこと。
なにげなく彼の、
両後ろ脚の下の皮膚の部分をのぞいてみたぼくが見たものは・・・。
追伸:
看護の世界には、
「褥瘡は看護師の恥」という格言があります。
患者様に、床ずれを作らせてしまうような雑な看護をするナースは、看護師として失格である、という意味合いなのですが・・・
実際には、栄養の問題や、患者様ご本人の神経障害などの問題などにより、
なかなか完璧な褥瘡予防のための看護・介護をするのは難しいようですね。
ぼくも、上記のフレーズを、
看護学生時代、それこそ耳タコになるくらい、
毎日のように、
看護学校の先生方から聞かされてはいましたが・・・。




