第39章:運命の朝
・・・その朝のことは、生涯忘れられないだろう。
ぼくが、出勤前のわずかな時間に、
茶太郎ちゃんにご飯をあげようと、トレーニングルームに入ったとたん!
一種、異様な空気を感じ取ったのだった。
(・・・茶太郎ちゃんの様子がおかしいッ!)
ケージの中の彼は、ぼくに背を向け・・・
まるで、犬が「おすわり」するかのような姿勢の、後ろ足と下半身がガクッと床の金網に落ちた状態で、
みじろぎひとつしないのだ。
「茶太郎ちゃん、どうした!?」
そんなぼくの言葉を聞いた彼は、
かすかに首をこちらに向けた。
(・・・コレはただごとではない!)
即座に彼の異常を感じ取ったぼくは、
彼の下半身を、横にねじる形で、彼の両脚を横に向けた。
茶太郎ちゃんは、そのとき、声ひとつ立てなかったが・・・
実は、ぼくのそのマヌケで愚かしい「処置」のために、
とんでもない激痛にさらされていたのだ・・・!
そしてぼくは、母にこのことを急ぎ、伝えた。
「お袋・・・茶太郎ちゃんの様子がおかしい。頼む・・・病院にすぐに連れて行ってくれ!!」
・・・実はこの日、ぼくは仕事を休むことができなかった。
皆さんも知ってのとおり、現場によっては警備員は、
片側交互通行(= 通称:「片交」)といって、道路工事に伴う、車両の交通誘導をすることがある。
無線のトランシーバーで通信しながら、工事帯をはさむ格好で、通行車両を交互にながす交通業務だ。
・・・最低、2人以上の警備員が必要となる。
この日は、運が悪いことに、
よりによって、その「片交業務」に割り当てられていたのだ。
・・・もちろん、ぼくの代わりに、緊急出動してくれる隊員の余剰人員など、会社にはいなかった。
(・・・お袋、茶太郎ちゃんを頼んだぞ。茶太郎ちゃん、なるべく早く帰るからね。ごめんよ・・・。)




