第18章:短かったが、壮絶だった『倉庫暮らし』の日々(3)
除染の仕事仲間に、「稲枡」というおじさんがいた。
当時のぼくより、10個ほど年上。
その人が、ぼくの話を聞き、強力な粘着力のある、業務用のネズミ捕りシートを何枚もくれた。
「・・・これをな、ネズミの通り道に仕かけておけ。壁沿いの端っこのルートとか、うさぎのケージの載っかったテーブルの真下にでも置いておくんだ。きっと、ヤツラ引っかかるはずだぜ。」
と。
だが・・・
ネズミの頭の良さ、用心深さ、ずるがしこさは、けっして甘くはなかった。
まったくといっていいほどワナにかかる気配がない。
そして、そうこうしているうちに、ついに大晦日の夜を迎えた。
茶太郎の餌には、ネズミの食した形跡があった。
ケージの中の茶太郎の餌に目をつけ、茶太郎が攻撃してこないのをいいことに、侵入したあげく、ずうずうしくも、つまみ食いしたものと思われる。
しかし、「チモシー」という牧草のみを固めて作られたペレットの餌を、いかに雑食といえども、
ネズミの彼らが食べられはしない。
そしてその夜・・・。
ネズミの「宴」は、最高潮に達した。
「う・・・うるせえッ! だまれだまれだまれ!! しずかにしろ、しずかに!! もぉ、どっか行けよ、てめええらぁああ!!!」」
ぼくが怒鳴ろうがわめこうが、壁や床板を叩こうが、
ハッカのスプレーをまこうが何しようが、
「宴」は、まったくやむ気配すら見せなかった。
手も足も出ないぼくと茶太郎を、無数の小さな悪魔どもが、あざ笑っているかのようだった。
ぼくはたまらず、茶太郎をケージごと車の後部トランクに押し込め・・・
着の身、着のまま、命からがら、
ふたりで倉庫を脱出した。
(ふざけんじゃねえ・・・こんなところに、たとえ1秒だっていられるものかッ・・・!! 熊田君よぉ、おめ、なんてヒデェところに俺たちを招待したんだい・・・。恨むぜ。)




