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第一話 追放

拙い文章ですが、よろしくおねがいします

 この世界には、スキルという概念が存在する。

 スキルは、神々より賜った奇跡だ。

 常識的に考えてありえないことを可能としてしまう代物であり、人には最低一つのスキルが宿る。

 二つ以上のスキルを手にするには、迷宮の主を討伐する必要がある。


 俺がもっているスキルは三つ。

 一つが、〈魔力供給〉というスキルだ。

 文字通り、俺のもつ魔力を俺が指定した者に分け与えることができる。

 ファーラント迷宮から入手したものである。


 一つが、〈図化〉というスキルだ。

 俺を中心とした、半径数十メートルの円の範囲が図として頭の中に浮かぶ。

 クォーツァル迷宮から入手したものである。


 ———そして、俺が生まれ持ってきたスキル。


 それが、〈無限魔力〉だ。


 このスキルは、一切のタイムラグなく、魔力を必要量創り出すことができる。


 俺はこのスキルのことを、周りには秘密にしている。

 魔力とは、全てのものの源となるものだ。

 それが無限に生成できるということは、つまり、等価交換の概念がぶっ壊れるってことだ。

 そんなものが世間に公になれば、とんでもないことになるだろう。

 具体的には分からないが、少なくとも、碌な目には遭わないはずだ。


 だから、俺は〈魔力供給〉と組み合わせて、陰ながら同じパーティーのメンバー達を支持してきた。


 〈無限魔力〉にはデメリットがある。

 それは、魔法を使うことができないというものだ。

 魔力があるのに、魔法は使えないというのは皮肉な話だ。


 更に、肉体がひどく脆くなる。

 走ることはできないし、長時間立つこともできない。

 まぁ、正直、〈無限魔力〉の代償としては軽すぎるとは思うが。


 ともかくとして、俺はそういった事情で戦闘には参加できない。

 それでも、俺は与えられた役目をきっちりとこなしてきた。

 自分では確かにそう思っていた。


 ———でも、相手はそうではなかったらしい。


「ロウレン。君をこのパーティー〈黒獅子〉から追放する」


 とある宿の一室で、俺は追放宣告を受けたのだった。



---




 冒険者パーティー〈黒獅子〉は、Bランクパーティーであり、その名と所属するメンバーは有名だ。


 〈剣鬼〉ヨハン。


 〈魔女〉メアリー。


 〈聖少女〉ミーシャ。


 〈剛拳〉ダリア。


 そして俺———〈無能〉ロウレン。


 世間から、俺はそんな冷ややかな目で見られている。

 だが、俺は別にそれでもよかった。

 パーティーメンバー達が分かってくれるのならば、他の誰にも分かってもらう必要はない。

 どれだけ世間様の評判がひどかろうと、彼らさえ、俺のことを分かってくれていれば。


 ———けれど、本当は、誰一人として俺を認めてはいなかったみたいだ。


「は………なんで」


 情けない声で、俺はパーティーリーダーである〈剣鬼〉ヨハンに返した。

 金髪緑眼、その端正な顔立ちからは想像もつかない、荒々しい戦い方。

 戦っているときの姿は、まさに〈鬼〉の形相と言えよう。

 ゆえに、彼は〈剣鬼〉と呼ばれるのだ。


 ヨハンは、はぁっ、と溜息を吐くと、あしらうように言った。


「お前さ、戦闘中、何やってんの?」


「それは、魔力の供給だ」


「はぁ………で、他には?」


「他には、って………えっと、周囲の偵察とか」


「それしかやってないの?」


「え?」


「俺達が必死になって戦ってるのに、お前はそれくらいしかしてないの?」


 固まった。

 それくらい、と言うが、俺は全員に、もとの魔力量の一万倍ほどの魔力を供給している。

 魔力を分け与えるだけで、傷は回復しないが、気力や体力は回復する。

 そのため、〈黒獅子〉は別名〈底なしの戦意〉とも呼ばれている。


 彼らは、俺からそれくらいの恩恵は受けているのだ。

 なのに、それくらい、か。


 ———いつも優しく、戦いの終わったあとには酒を飲み合い、笑い合ったヨハン。

 そのヨハンと、目の前のヨハンが同一人物だとは、到底思えなかった。

 口に出して反論する。


「いや、それくらいって言うけど———」


「言い訳やめて」


 俺の言葉を遮って、ヨハンの隣に佇むメアリーが言った。

 腰まで届く銀髪に、闇の巣食う黒き瞳。

 豊満な胸と細いからだは、無自覚ながらに色気を放っている。

 清楚そうな雰囲気を醸し出しているが、その実はただのビッチである。

 ゆえに、彼女は〈魔女〉と呼ばれている。

 男喰らいの〈魔女〉、と。


「戦闘とか関係なしに、あなたを見ているとイライラするの。虫唾が走って仕方がない。そうやって言い訳しているところも、男らしくなくてもっとムカムカする」


 蔑むような目つきで俺を睨みながら、彼女はそう言った。

 その姿は、優しく微笑み、優雅に紅茶を飲む、俺の知っている彼女の姿とは、重ならなかった。


「どうかーん。あんたさぁ、ふつうにじゃま。ヨハンといちゃいちゃしたいのにぃ。あんたがいなくなったらぁ、ヨハンのハーレムができる!」


 同調するように、ヨハンに後ろから抱きついているミーシャが言った。

 背丈やからだつきは明らかに十代前後のこどものそれだが、年は二十二であり、れっきとした大人だ。

 炎のような赤髪をツインテールにしており、その頬は紅潮している。

 見に纏うは、その身の丈には合わないだぼだぼな神官服。

 その服装ゆえに、〈聖女〉の少女で〈聖少女〉と呼ばれている。


「まぁ、そういうことだ。分かったら、とっとと出て行ってもらえないかな? あっ、荷物は置いて行ってくれよ。それはお前のじゃなくて、俺たちのものだからな」

「……………」


 何も言えなかった。

 何を言っても無駄な気がした。

 だから、ただ口をつぐんだ。


 心の中に、いろいろな感情が渦巻いている。

 絶望、悲しみ、苛立ち、罪悪感。

 ここにいたら、全部ぶちまけてしまいそうな気がした。

 もしもそうしてしまったら、俺は、本当に———


「………分かった」


 それだけ言い残して、俺は部屋を出た。


「ようやく、ようやくいなくなってくれた!」

「はぁ、本当に疲れたわ」

「これで、ヨハンをひとりじめできるぅ」

「……………」


「…………くぅっ」


 扉越しに聞こえる、そんな言葉を背に。

次回「第二話 宿屋」

11月1日 同時刻 更新

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