勇者?
ギアの気持ち、ここまで、ほとんど出てなかったですよね。
みんながバタバタと動いている間、僕はぼーっと立っていた。
今、オーガのカイは、なんて言った?
勇者が来た?
それで、みんなは、何だか周りを急いで片付けて、地面に印の付いてるところや、その近くに武器を持って立ち始めた。
「みんな、、、何してるの?」
僕が尋ねると、ジョーイがびっくりしている。
「ああ!えーっと、これは、その、、、なんだ、、、ギア!お前はマイティのところに行ってくれ!何か用事があるって言ってたから!!!ほら、急いで!」
ジョーイが、僕をグイグイと押して、下の階に行かせようとする。
「ねえ、さっきカイが勇者って言ってなかった?」
ジョーイの肩がビクッと揺れる。
「ギアは、あんな奴らと関わらなくていい。俺たちも、怪我なんかしないから、安心してくれ。マイティも歳だろ。寂しがるから、ちょっと行ってやってくれ。ここは大丈夫。みんな上手く逃げるし、カイやサーヤもいる。心配しないで」
ジョーイは、明るく笑って、みんなも同じように明るく、何でもないことのように笑って僕を下に送り出した。
僕は、ここにいても、みんなの邪魔になりそうだ、と判断して、下に降りていった。
マイティのところに着くと、カイとマイティが話していた。
カイは、汗だくだった。
「本当に勇者が来たんだな」
「ああ!だから、前のように上手くやられた感じにして逃げろよ。宝箱の中のギアの剣は、どっかに隠しておこう。薬草は、、、無いから、適当に麦でも詰めとく」
そんなことを言いながら、カイが宝箱から、見たことも無い美しい剣を取り出した。
そうして、剣を宝箱の後ろの岩山の隙間に押し込んだ。
今、僕の剣って言った?
宝箱に夢中で麦を詰めるカイとマイティに、ゆっくり近付く。
「大丈夫?」
僕がそう声をかけると、2人ともびっくりして、僕を振り返る。
手に持った麦を落として地面に散乱させている。
僕は麦を拾って、宝箱に入れる。
「手伝うよ。僕も、みんなの家族でしょ?」
そう笑うと、2人とも、しばらくポカンとした後に、大きく頷いた。
「そうだ!もちろん、ギアは俺たちの家族だ!!!」
カイが抱きついてきた。
マイティも、頬ずりしてくる。
感動すると、いつもこうなる。
「じゃあ、今、何の準備をしてたか、教えて?僕、もう子供じゃないよ。昨日15になったでしょ」
そう言うと、2人は視線でコミュニケーションを取って、カイが溜息をついてから話し出した。
これもカイの癖だ。
大切なことは、溜息ついてから話すんだ。
「ギア、お前の夢を壊すようで言えなかったが。俺たちの仕事は、ダンジョンの魔物だ。勇者たちが来たら、とりあえずやられたフリをして、ここの宝箱を持ち帰ってもらう。それが、俺たちの仕事なんだ」
カイは、一息に話した。
「ごめんな、俺らは、そういう存在なんだ。お前は人間だから、こんなことに関わるな。あの岩山の後ろ辺りに隠れてれば気付かれないから」
そうわざと明るい声で話すカイに、僕は震えた。
「なんでそんなこと言うの?」
僕の震える声に、カイがハッと僕を見る。
「僕は家族って言ったじゃないか!ボクもみんなと一緒に戦う!その為に訓練したんだ!」
勢い良く言うと、カイとマイティは、困ったように笑う。
「いや、ギア、、、俺たち、戦うわけじゃ、、、」
「わかってる!適当に戦って負ければいいんでしょ!僕はここでマイティといるから、心配しないで」
僕が笑って親指を立てると、カイも諦めたように、頷いて上の階へ戻っていった。
残った僕は、マイティにこれまでのことを聞く。
半年に1回くらい、勇者たちが来ていたこと。
僕が前に勇者に会ってから入口を塞いで、来なくなったこと。
年々、魔素が減って、みんな弱くなってきてること。
それでも、みんなが勇者にやられることなんてないこと。
僕には安全なところにいて欲しいという皆の願い。
そういうことを聞きながら、僕は考えていた。
二度と勇者たちがこのダンジョンに来なくなる方法を。
そう思って書き始めたら、ちょっと裏のある感じになっちゃいました。




