ギア
ギアは、ダンジョンで幸せになって。
ギアは、まだ7才な割には、滅多なことで泣かなかった。
俺たち魔物は、恐いはずなのに。
「俺たちのこと、恐くないのか?」
ふと聞いてみると、ギアは少し考えてから
「父さん母さんの方が、ずっと恐かった」
そう答えた。
え、人間の親って、そんなこえーの?
俺たち魔物には親子とか無いからわかんねぇけど。
ギアの体のあちこちにある傷?紫色の痕?も、その親かららしい。
人間の仕組みはよく知らねぇけど、何となくみんな不憫になって、ギアには優しくなった。
ピイが、抜けた羽を使ってフワフワの布団を用意した。
これまたフワフワの枕付き。
サキュバスのセイラは、夜の街で人間相手に商売してるから、街で人間用の服を買ってきて、ギアに着せた。
うん、ボロ布しか無かったもんな。
ジョルアは、毎日、1日に3回も4回も5回も、ご馳走をギアに食わせてる。
ギアの食いっぷりが好きなようで、フフフと笑いながら、食い終わるまで、じーっと見てる。
かく言う俺は、家を作った。
ダンジョン内にな。
ほら、魔物と同じ家ってのも、なんか、かわいそうじゃねーか。
でも、まだ小さいから何かあったらいけねぇ。
だから、俺の家にくっ付けて、何かあればすぐ行けるようにした。
俺の家とドアで繋がってるから、いつでも行き来できる。
一応、ギアの家にも、小さいけれど、台所と居間と、寝室を作った。
トイレは、畑だ。
肥料になるから。
問題は、飲み水と風呂。
ギアは、めちゃくちゃ汚くて、聞くと、体を洗ってもらったことも無いらしい。
みんな、泣いて話を聞いてる。
オークのヒグは、泣いて鼻水出すぎて、変な鳴き声出てる。
「ピギッ」
魔物と人間、どちらが優しいか。