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ずっと母と妹に搾取されていたことに気付けたので縁を切りました  作者: 朔晦 月陽


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母、辺境に


部屋に戻り、寝支度を整えてくれたライナの表情はどこか嬉しそうだった。

ルカルディ様との話をライナは聞いていた。


「ねぇ、ライナ。ここにくる前にあなたが考えてみたらいいと言ったでしょう?辺境伯様と話してみたら良いとも」

「ええ、覚えております」

「ライナは気付いてたのね、私の気持ち」


ライナは少し悲しげに笑った。


「私共はオルデアお嬢様の苦しみが分かっておりました。でも私共ではオルデアお嬢様のお心を救うことはできませんでした。でも辺境伯様ならと思っておりました」

「そう……私は何も見えていなかったのね」

「いいえ、それは違います」


ライナがきっぱりと強く否定した。


「私は思うのですが、あれは洗脳だったと思います」

「洗脳……」

「小さな頃からずっと。ですからフレッドさんはお邸から、ご家族から離れるべきだと」

「フレッドが。だからルカルディ様との婚姻話を持ってきてくれたのね」

「そうです。私達ではオルデアお嬢様を救うことはできませんでした。お嬢様を守る力もないのに、家族から引き離すことなどできなかったのです」


悔しい思いをしてくれていたのだろう。ライナの握った拳に力が入るのが分かる。


「私のために怒ってくれていたのね。ありがとう、ライナ」


ライナの掌が傷つかないようそっと手を取り、力を緩めさせる。


「辺境伯様なら、オルデアお嬢様を守り、救ってくれるのではないかと。それが現実となって本当に良かったです」

「ライナ、私、お母様が嫌いよ」


ライナが目を見開く。


「リリーも嫌い」


ライナが、今度は笑った。


「ええ、それでよろしいかと。……お嬢様、一度だけ言うことをお許しください」


そう言ってライナは小さな声で『私はオルデアお嬢様以外のローゼンフィル侯爵家の人が嫌いです』と言った。そこにはきっとお父様もロベルト様も含まれているのだろう。

私とライナは顔を見合わせて笑った。




お母様がもうすぐ辺境伯邸に着くという知らせを聞いても、私の心は穏やかだった。

家族としての情はあるし、お母様に冷たく当たるつもりもない。ただお母様に従う必要はないのだと、そう思えるようになっただけで心が晴れやかだった。

ライナが洗脳と言っていたが、本当にそうだったのだろう。

何を言われるのかと憂鬱だった気持ちは、何を言われても気にしないと前向きに変わっていた。

足取り軽くエントランスホールへとお母様を迎えに行く。

開け放たれた扉の向こうでお母様が馬車から降りるのが見える。


「え」


思わず声が漏れた。お母様の隣にリリーの姿があったからだ。


「あぁ、オルデア!会いたかったわ」


隣にいるルカルディ様に挨拶もせずお母様は私を抱きしめた。


「お母様、遠いところようこそお越しくださいました。お元気そうで良かったですわ」


私は抱擁を一度受け入れてからそっと離れルカルディ様へと視線を移す。


「お初にお目にかかります。ルカルディ・シュルベストです」


ルカルディ様の丁寧な挨拶に自分の無礼さに気付き、お母様は姿勢を正してカーテシーで挨拶をした。リリーもそれに続いて挨拶を交わした。


「リリーは不参加とお手紙をいただいていたから驚いたわ」

「なあにその言い方。せっかくお祝いに来たのに迷惑だなんてお姉様は相変わらず意地悪ね」

「迷惑だなんて言ってないでしょう?部屋の準備だってあるし先ぶれが欲しかったと言いたいだけよ」

「ごめんなさいね、リリーがやっぱりお祝いに行きたいというから一緒に来たのよ。久しぶりの再会なのだから意地悪言わないで素直に喜んでちょうだい」


来たことではなく、先ぶれもないことが失礼だという話なのになぜ意地悪になるのか。相変わらずのお母様とリリーに呆れるが、辺境伯邸のエントランスホールでこれ以上言い合いを続けるわけにもいかない。


「来てくれてありがとう、リリー。あなたも元気そうで良かったわ」


仕方なく私はリリーにも歓迎の言葉を紡ぐ。リリーはフンッと鼻を鳴らしただけだった。


「旅のお疲れもありましょう、部屋に案内させますのでまずは少し休まれては?ローゼンフィル侯爵夫人の部屋もすぐに整えますので、それまではお母上の部屋でお二人でお茶でも飲んで休まれてください」

「ありがとうございます。お言葉に甘えてそうさせていただきますわ」


さすがに辺境伯までは長旅だ。母もリリーも疲れが隠せていない。


「それではお母様、リリー、お夕食の時にまた」


お母様とリリーが辺境伯邸のメイドに案内されながら去っていくと、私は満面の笑みで続く来訪者を迎えた。


「フレッド、元気そうで良かったわ。疲れたでしょう?」

「なんの。オルデアお嬢様のお元気そうな顔を見たら疲れも吹っ飛びます」


今回お母様と一緒にフレッドも来てくれた。ルカルディ様と親戚に当たるのだし、結婚を見届けて欲しくて私からお願いしたのだ。


「フレッドのおかげで辺境に来て、私はとても元気よ」


私の笑顔にフレッドは何かを悟ったように笑顔で頷いていた。



夕食はフィリオ様達も一緒にとった。

辺境の料理も意外と美味しいのね、とリリーが失礼な発言をしても皆様笑顔で流してくださった。

夕食の後のお茶はお母様もリリーも疲れているからと辞退する。


「ではお母様、リリー、おやすみなさい」

「オルデア、明日話があるの」

「ええ、明日は結婚式の衣装調整の予定だけですので、サロンでお茶でもしましょう」


そう返すと、母は周りを気にした後小声で言った。


「ローゼンフィル侯爵家のことで話もあるので私の部屋で話しましょう」

「……分かりましたわ。では明日お部屋に伺います」


母は満足したように微笑み、部屋へと戻っていった。




お読みいただきありがとうございます

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