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序章・ある派遣社員の末路

 それは失われた40年。


 かつては世界で2番の経済力を誇った日本も、その40年後の2029年には、遅々として進まない福島第一原発事故の影響や、経済的に結婚できない若者の増加により少子高齢化が一層進んで人口が大幅に減少していた。


 更に技術への投資を行わず技術職への賃金カットを行なったことにより、優秀な人間はアメリカ・中国・インド・東南アジアの新興国などへ逃げ出したことで、日本の工業技術は停滞し、国際的競争力も失った結果、産業空洞化で観光産業以外めぼしい産業もほぼ無くなり、結果として年金、健康保険、介護保険などの制度も崩壊した。


 そのため60歳以上でそれを望むものは、ヘリウムガスによる安楽死と死後の遺体に関しての焼却処理も行政が無料で行うことになっていた。


 こんな状況では未来への希望などどこにも見えず、一般的な日本人には絶望しかなかった。


 もとは体育会系の新卒で北海道拓殖銀行に入社した銀行マンであった、前田健二は北海道拓殖銀行の破綻後は転職活動もうまく行かず、フリーターから派遣社員としてなんとか生活を続けるうだつの上がらないおっさんとなっていたが、彼が60歳になると会社からの継続契約はなく、職場から退職させられてしまった。


「もう、これじゃどうしようもないな……死ぬしかないか」


 そして安楽死施設ヘ歩いて向かおうとした途中で、認知症の後期高齢者が運転する乗用車に轢かれて彼は命を落とした。


「ごふ……安楽死施設で死ぬのも、車に轢き殺されるのもそうかわらない……か」


 暗い暗い冥界へと落ちていった先で出会ったのは、女性らしい姿をしているが全身に蛆がたかり、

頭・胸・腹・陰部そして両腕と両足に蒼白い蛇をまとった、とても強力ななんらかの存在だった。


「ふむ、お前は私の姿を見ても驚かぬか?」


「バイトで特殊清掃もやりましたからね。

 まあ車に轢かれた私の遺体もおそらくひどいものでしょうけど」


「そうか、いまや大倭豊秋津島おおやまととよあきつしまでは、我が子孫が絶える寸前のようだ」


「ああ、確かにもはや日本人は滅ぶ寸前と言えますね」


「私もそれは本意ではない。

 故にお前の魂を記憶を保たせ、知的な能力を底上げしつつ、生まれたときに戻してやろう。

 そのかわり大倭豊秋津島の民が滅ぶのを阻止してほしいのだ」


「そんなことが……本当にできるのでしょうか?」


「一日で千五百の産屋を立てるという言葉を思い出させるのだよ」


「それは誰に?」


「それはわが愛しき兄にして夫、さあ行くがいい」


 その言葉を聞いた瞬間ふわっと浮かび上がるような感覚とともに私は意識を失った。


 そして再び意識を取り戻した時、眼の前の風景はとても懐かしいものだった。


「ここは俺の学生時代の子供部屋だ……よな」


 そして下から母親の声が聞こえてきた。


「健二ー、そろそろ起きて歯を磨きなさい」


「あーい、今起きるー」


 勉強机の上にあるカレンダーを見れば今は1984年だった。


「俺は中学生に戻った……のか?」


 前回の人生の記憶は間違いなくある。


 しかし、今現在までのことも問題なくわかる。


 今現在、スクールファイト 〜泣き虫先生のラグビー戦争〜というラグビーを題材にした学園ドラマがやっていて俺はその影響もあって高校と大学でラグビーをやることにしたはずだ。


「いや、体育会系はだめだ、まずそこから変えなければ。

 そして民間銀行への就職じゃなく、キャリア官僚にならないとだめか?」


 大倭豊秋津島、つまりはこの世界の日本の未来を変えるためにできることとはいったいなんだろう?

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― 新着の感想 ―
少子化で国が滅びるなら世界中の国が日本よりも先か同時に須く滅亡しますよ? アフリカ以外は日本の前後0.3ぐらいしか違いがないのですから
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