そこに果てはないらしく
サツキちゃんが手紙を書いている。いっぱい、いっぱい。
「そんなにたくさん誰に送るの」
隣の席の僕が聞いたら、彼女は「憎いあの子だよ」なんて言って笑った。
反対側のサツキちゃんの隣は、ダンボール箱が置いてあって、その中に書き上がった手紙が山積みになっていた。ふたつ折りの白い紙が、何百枚も、積まれているのだ。
さらさら書いてはすぐに便箋を埋めて、二つ折りにして、その山に放る。また次の便箋を手にとる。なんて真剣な顔だ。
どんな手紙を書いているのだろう。僕はちら、と、サツキちゃんの手元を覗いた。
サツキちゃんの慣れた手つきから生まれる、文字の羅列。
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
「死んでしまえばいい」
見られることに抵抗はない様子で、サツキちゃんは言う。
「でも、殺したい訳じゃない」
妙に穏やかな表情のままさらさらと文字を連ねる。サツキちゃんらしい、きれいな字だ。
「ただ、こんなに憎んでる人がいるっていうのを、あの子は知らないみたいだから」
こんなに穏やかな顔をしているくせに、真っ黒な感情がきれいな字から流れ出している。
また、一枚書き上がった。サツキちゃんはそれをふたつ折りにして、山の中に放る。
「いつまで書くつもりなの」
そう聞いたら、彼女はくすっと、柔らかく笑った。
「私が飽きるまで」
世界中の紙が尽きたって、書き尽くせるほどの気持ちじゃないんだ。だから私が飽きるまで。
暗にそう言われた気がした。
サツキちゃんの手は、まだ当分止まりそうにない。




