結婚
白の塔に来てみると、サシャとドロシアが花束をユキに贈ってくれて、アンリとケインがおめでとうと祝ってくれた。
「ありがとう」
と花束を受けとったユキがとてもうれしそうでほっとした。
ジーク様は異世界人の結婚証明書を用意してくれていて、役人の代わりに立ち会ってくれた。
「普通の役人に異世界人の結婚証明書なんて見せられないだろう、ユーリが結婚するなんて俺じゃなきゃ許可できないし、立ち会い人に不満があってもあきらめてくれ」
「そんなことないです、ジーク様のようなすばらしい方が立ち会ってくださって感謝しています」
えぇ?ユキはジーク様を知らないから。そう思っているのがわかったのか、ジーク様がわたしをにらみつけた。
「はい、感謝します」
「そうだな、お前には本当に迷惑かけられたからな」
なんだってー!結婚証明書の署名が斜めになりそうだ、ユキも署名が終わるとジーク様が小声でおめでとうといってくれた。急に決まってまだ実感がないけど、これからはN国が結婚を証明する夫婦になった。
中央の島に帰ると、イーリが結婚のお祝いに豪華な食事を用意してくれた。
「ユーリ、ユキ、おめでとう」
エルフが結婚式に出す特別な料理とお酒が並ぶテーブルで、食事をはじめると、まず妖精たちが不思議そうに集まってきた。
「ふふっ、かわいいわね、私たち結婚したのよ」
ユキが説明すると、色とりどりの妖精たちがふわりふわりと舞い上がり、不思議な踊りで祝ってくれた。
その後から子猫とドワーフの女の子が、きれいな花束とかわいいお菓子を持ってきてくれた。二人ともすてきなドレスで、ぎこちなく歩く姿が可愛らしい。二人のお母さんが笑顔で見守っている。
「ありがとう、二人ともとってもかわいいわねー」
とユキが受け取ると、喜んでお母さんのところにかけていった。
「ありがとうございます」
お母さんたちにお礼をいうと
「島の主様が結婚するなんて、めったにない本当におめでたいことですよ」
といわれた。島の主様なんていうほどの者じゃないから、恐縮してしまいます。
食事の席についてお酒がはいると、イーリがユキにわたしの解説をはじめた。
「ユキはよくユーリなんかと結婚したね、ユーリの仕事を知っているかい?私も今までこんな人間に会ったことがなかったが、砂漠で大量発生した魔物を一瞬で消したり」
「本当?」
「それは、はい、そんなこともあったね」
「内戦で大規模戦闘中のところへ入って行って止めたり、火山の噴火を調節して町を守ったりだよ、ありえないんだ」
「ユーリが?」
「そうだよ、いつもとんでもないことばかりしているから、見ているほうはびっくりさせられているよ」
いや、好きでやってるわけじゃないって知ってるでしょう。
「それでもよければ、一緒にいてやってくれ」
「ありがとう、イーリ、それでもユーリはユーリよ」
「そうなんだ、それだからいつも心配させられてね」
「わかるわー」
なにそれ。
「でも、そんなユーリの側にいることが、私のこの世界での役割りのひとつで、そのために生き返ることができたのだとしたら、不思議な運命をありがたいと思うの」
こちらこそ。
「私は死んでしまって終わるはずだった命だから、なにもかもがすばらしいわ」
うっかり泣きそうになるユキが愛しくて、思わず抱きしめると、イーリはやれやれという顔で部屋へ帰っていった。
食事の後片付けを魔法ですませると、なぜかユキが不満そうにしている。
「なんで今まで魔法でやらなかったの?」
「わたしとユキは魔力量が多いからできるけど、一般のN国人にこんなことしたらびっくりされるよ、ここではよくても普通はやらないからだよ」
「じゃあ、ここでは魔法を使うことにしましょう」
反対意見はきかないつもりだね。
翌日から、リゲル様とユーシス様のところへ挨拶に行くことにした。
リゲル様は忙しい中無理やり会いに行ったので、ゆっくり話すことができなかったが心から祝福してくれた。
「おめでとう、ユーリがずいぶん大人になってびっくりした。ユキさん、ユーリをよろしくね」
リゲル様?なんでみんなわたしをユキにお願いしてしまうのかな。それでもネーデリアの竜の島は相変わらずわたしに優しい島で、包み込まれるような安心感があった。
その後ユーシスがいる大国③の大使館に来た。
わかっていたことだけどユーシス様はいつもの過保護で、仕事中で会えないからと、豪華な大使館の宿泊施設に泊めてくれて、部屋にはプレゼントが山のように置いてあった。
「怖いくらいの豪華さね、貴族にでもなったみたい」
「ユーシス様は元貴族だけど、今でも貴族と同じ暮らしぶりだよ、わたしのような平民には理解できないところがあるね」
「わー、初めての本格的な貴族の登場ねー」
まって、王子いたし、サシャも貴族の娘なんだけど。




