表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の塔の魔術師   作者: ちゃい
62/106

保護者

 王立学院の奥にある森の中には、わざと魔物などをよびこみやすいような仕掛けがしてある。

 古代魔法の一種で、誰が何のためにその魔法陣を設置したのかわからないが、昔から森の中は危険だから、冒険者や魔術師以外は立入禁止になっている。


 冒険者ギルドのおばちゃんに魔物を倒してきなさいといわれたので、やる気はあるが実力のないユキを丸い結界の中に入れて、薄暗い森の中に入った。


 「ちょっと、ユーリ、出しなさいよ!」

 丸い結界は浮かせたままで歩いて行く。


 「私の魔術訓練なのよ、何やってるの?いい加減にして!」

 実力のない冒険者が魔物の餌食になるなんて、よくある話だ。


 「出してよ!」

 暴れても丸い結界の中だから、ごろごろ転がっている。

 本当に自分の重要性を理解していない、妖精王の話をイーリから一緒にきいたはずなのに、全く警戒しない。


 N国の町中では目立たなかったが、この魔物の森の植物がユキの魔力に反応し始めた。ざわめく木々の向こうから、何かが来ている。


 魔物のような魔素をまとった気配ではない、もっと清らかなのに、強大な力を持っている。


 「その娘をよこせ」

 まばゆいエメラルドグリーンの光が、森の中から現れた。


 「この世界を照らす光となる貴重な娘だ、人間が扱える者ではない、妖精王の元でこそ役に立つのだ」

 緑の精霊が妖精王の存在を認めた。薄暗い森の中に幻想的な光が満ちて、美しい精霊が浮かび上がり、ユキがびっくりしている


 「わたしはユキの保護者です、どうかわたしに預けてくれませんか」


 「魔術師か?この娘の力を扱える者なのだろうな、妖精王が迎えに来なかったのは保護者のせいなのか?」


 「そのようです」


 「この世界の光となる娘よ、このおかしな心もとない魔術師の元にいるのが望みなのか?こんな者より妖精王と共にいたいとは思わないのか?光り輝く美しい妖精王よりも、こんなちんけな魔術師を選ぶというのか、嘆かわしい」

 見た目の神々しさからは想像できないほど、口が悪い精霊だ、ひどいこと言われてるよ。


 「ええ、このへたれで自信のないおかしな魔術師が気に入ったのです、私だってどうかしてると思うけど、ここにいたいんですよ」

 はい?


 「そうなのか、全く困ったものだな」


 「ええ、困ったものです」

 ユキがきっぱり言い切ると、緑の精霊は名残惜しそうに振り返りながら消えていった。


 「なによ、言いたい事があるなら言いなさいよ」

 幻想的な光が消えるまで見ていたら、ユキが怒った。


 「いや、よかったな、と思って」


 「もう、これだからユーリは!」

 ユキは拗ねて、結界の中に閉じこもってしまった。


 それならば予定通り冒険者として軽く魔物でも倒して帰るか、と思ったが魔物の気配がない。


 小さいのが数匹いればいいはずなのに、全く出て来ない。緑の精霊のせいで逃げてしまったのだろうか?


 森の奥に入って行くのは危ないから初心者は行かないで、と説明されたが、魔物がいないので奥へ進む。どんな危険があるのかと警戒しているが、襲ってくるはずの植物が蔓を巻きつけてこないし、噛みついてくるはずの花が噛んでこない。


 わたしが力のある魔術師でなくても、最奥にある石柱で囲まれた古代魔法の魔法陣の遺跡まで来ることができた。

 召喚魔法の魔法陣のようだ、ここから魔物を召喚してでも数匹持って帰らなければいけないのかな。


 (魔物よ召喚されてくれ)

 出てこない、魔力不足だろうか。


 (魔物、出てこい!)

 何かを突き抜けた感じがして、わらわらと魔物が現れた。


 (わ、もうやめて)

 最後に大きな人形の魔物が出て来て、召喚が終わった。


 「ああ、ユーリさん、何でこんなよび方したんですか?」

 魔の国から、ジルベスタが来てしまった。


 「自分で張った結界を破ってまで、私に会いたい用事があるんですか?」

 魔の国の国境にある結界が破れたのか!急いで修復するための魔術を放った。

 この遺跡は魔の国の国境の魔物を召喚していたようだ、魔物を魔の国から出さない役目を少しは果たしていたのだろうか?わたしの結界が張られる前は、魔物がかなり出て来ていただろう。


 「ユーリさん、どうしたんですか」


 「いや、ごめんなさい、帰ってくれませんか」


 「結界が破られたから心配して見にきてみれば、まちがえただけなんですね?」


 「本当にすみません」


 「誰とまちがえたんですか、いい迷惑ですよ」

 転移魔法陣を設置すると、文句を言いながら帰って行った。魔物とまちがえたなんて言えない。


 ジルベスタと話しているうちに、魔物が逃げてしまった。帰りながら魔物を探していると、草むらの陰でうずくまっている小さなネズミみたいな魔物がいた。


 「ユキ、やったよ!」

と倒した魔物を見せるが、ユキは顔をしかめただけだった。


 「まぁ、あなたたち魔術師が二人でこれだけなの?」

と冒険者ギルドのおばちゃんに文句をいわれたが、ユキと二人でFランクの冒険者登録をしてもらった。

 やった、冒険者になれたね、と二人で喜んで冒険者証のカードを見せあったが、この後どうしたらいいのかな?


 N国はさっきまちがえて出てきた魔物が最後だから、他国へ行くしかないし、冒険者組織の立て直しって。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ