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白の塔の魔術師   作者: ちゃい
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魔王の代理

 ハーメンランドの洞穴に着くと、ドラゴンが待っていた。


 (帰って来れてよかったね、あの子大変なんだよ。でも魔の国の事は一切言わないでね、N国の事を他国に言ってはいけないのと同じだよ。あの子の事は絶対に知られちゃいけないんだ)


 「わかりました」


 (ユーリが魔王になるなら話してもいいよ)


 「いや、いいです」

 魔族の事は現地の人に任せましょうよ。


 N国の自室に戻り、魔族って何だろうと考えた。大国①②とセルキアしか知らない、秘密の種族。N国人と魔族って目の色しか違わないし、地上と地下の違いだけで同じように暮らしていた。


 翌日大国③に戻るのが面倒になった。魔王に会って来ましたって言うのもだめなんだろうな、どう説明したらいいかわからない。

 

 (人に説明するって難しいし、どうしたらいいんだかわからなくなるよね。もう人の世界から出たらいいのに、魔王になりなよ)

 嫌なおさそい。


 N国の図書館で魔王についてくわしく調べてみよう。

 過去に存在した人間の敵…ではなかったな。

 目が赤く、高い魔力で魔物を従える…にしては困っていた。

 魔王城に住む、魔族の中で最強の者…なのか?あーよくわからない。

 神殿はあの子をどうしたいのだろう?セルキアに何かされるのだろうか。もう自分が魔王になった方が面倒ない気がしてきた、ドラゴンに誘導されてるのかな。


 図書館にいるのが知られてしまって、宰相様からの呼び出しがあった。宰相様の執務室に入るのは、いまだに苦手。


 「ユーリが大国③で雑用係をしてたらしいね、もうユーシスの所へはやらないよ。雑用係なら白の塔でもできるから」

 宰相様は微笑んでいるのに、悪寒がする。白の塔の魔術師に復帰することが決定した、逆らえません。


 「そのかわり自由に何してもいいよ、ユーリがN国の不利になる事はしないでしょう。いっそ世界中をまとめてくれたらいいのに」

 冗談だとしてもおそろしい、そそくさと自室に帰った。


 「ユーリがいないのー!」

 とりあえず今日も魔王城に来た。いますよ、ここに、足に絡まないでね。


 「昨日から泣いていらっしゃいます」

と側近の男が言う。本当にもう代わって!と目が訴えているが、君にもちょっと問題あるからね。

 それにしてもこの女の子、どうしたらいいのだろう。友達はいないようだけど、学校に行ってないのかな?両親もいないし、城内にほとんど人がいない。


 「ユーリー」

 なついてくるね、人になつかれたことないから困りますよ。わたしでもいいくらい誰もいないってことか。


 側近の男、ジルベスタに事情をよくきくことにした。資料を用意してもらい、内政について説明を受ける。


 「これを知ったからには、他国人のままでいるのはもう無理ですからね、魔王になってもらいますよ、逃しませんから」


 「えっ、すみません、でも代理で。魔王様が大人になるまで援助するつもりはあるけど、魔族でもないのに魔王は嫌です」


 「わかりました、では代理、説明しましょう」

 代理だよ、魔王じゃないから。


 「ユーリー」

 なんか、腕かんでるよ、登らないでね。魔王様、お座りして。わたしの上に座るから、頭で資料がよく見えない。


 魔の国は大国①②とセルキアの支援で成り立っている。地上の土地を渡せと言われても困るので、食料支援が途絶えたことはない。

 地下でも何か栽培できないかな。


 魔力量の多い数名が魔王城にいて、普通の魔族は城下町で暮らしている。魔王様の両親も魔王城にはいない。

 数年前に前魔王から選ばれた現在の魔王様は、子供ながらその力で後継者となった。ついでにジルベスタも側近として、力で地位を勝ち取ったらしい。


 魔の国の国内では通貨が配給されて、物資が届くので商店があり、食堂、病院、役所、学校がある。


 「魔王様って学校に行かないの?」


 「代理がいなかったから、行けなかったんです」


 「じゃあ行ってもらって」


 ジルベスタに、キョトンとした顔の魔王様を渡して資料を読む。すべてが支援となると金額が大きいから、自国内でまかなえたらいいのに。


 ジルベスタが急ぎたいのか、魔王様とジルベスタは今すぐ学校へ行くようだ。ここまで知ってしまって辞めるわけにはいかないけど、魔王様と二人で力を合わせたらよかったんじゃないの?

 ジルベスタ一人で魔物や龍脈を扱うには魔力量が足りなくて、魔王様は力があっても何もしなかったよね。わたしが来なくても、他にやりようがあった気がする。


 とりあえず今後は、魔物や龍脈のチェックをわたしがして、後は今までどおりジルベスタが事務仕事をすることにした。

 他国でいろいろな事が決まってくるので、魔王城だけでする事はあまりないし、元々ジルベスタがやっていたのだ。

 

 後は魔王様に友人ができて淋しがらなければ、うまくいくだろう。


 「ユーリさんって一瞬で解決してしまうんですね」

 ちがう!君のやり方がおかしかったんだよ。

 昼間わたしがここにいてもする事がないので、ジルベスタに任せて毎日学校が終わる頃魔王城に出勤することにした。


 初日の魔王城での仕事が夜に終わった後で、ハーメンランドのドラゴンの所に来た。わたしの話をきちんときいてくれるのは、姿が恐いけど、ドラゴンだけになってしまった。


 「自分が何をしたらいいのか、どこにいるのがいいのか、わけがわからなくなって…」


 (ネーデリアのリゲルに会いに行くかい?ここにいてもいいけど人は住みにくいし、ああ、一ついい場所がある、住めると思うよ)

 そこはどこの国の領土でもない、世界の中心にある秘密の島で、人には隠してあるらしい。


 (昔、ユーリのように魔王とよばれるのを嫌がった人が住んでいた城があるんだ、そこへ行ってユーリの城にしたらいいよ)

 そんな都合のいい城があるのか。


 「わたしがずっと使っても問題ないの?」


 (ユーリのためにあるような所だよ、ちょうど中央だから私たちと交信するのにも都合がいいし、龍脈が見やすくなるはずだから)

 それってドラゴンにとって都合がいいんじゃないの?





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