中央の島
やって来ました、中央の島。ドラゴン三体の所への転移魔法陣付きの、古い石造りの塔を城というようです。
とにかく汚いので、浄化ではなく清掃をする。普通は住めないよ、魔法が使えてよかった。特に外側の石を磨いているが、ベトベトしていてなかなかきれいにならない。その後、島に掛けられている巨大な結界を強化した。
城の周りの庭には、一人で生活するのに充分な野菜があった。
野生化した食用の植物が、そこの生育条件が最適になっているかのように自然に生えていて、大木の果樹にはたくさんの実がなっている。これはなんだろう、まるで植物の声をきいてきたかのようにうまく循環している。あまりにも美しい畑で、見入ってしまった。
海岸には海草があり魚もいるし、家畜のような鳥の巣があり卵がある。誰かがそうつくったかのようにうまくできている。何年前だろう、五十年か百年?
(ユーリ、他人を連れて来てはいけないよ、利用されるから)
ドラゴンの声がきれいに聞こえる。誰も連れて来ないし、誰にも言わないよ。
(他の者には知られたくない事がいくつもあるんだ)
外壁の清掃が終わったので、中に入ります。窓を見ると十階建てで、丸い塔の中はかなり広い。一、ニ階は一部屋だけど、三階からは三部屋に区切られていて、その一部屋でもN国のわたしの部屋より広い。
今日は三階までにしておこう、三階の空き部屋を一室自分用に決めて、荷物を運ぶためN国に帰ることにした。上の階には前にいた人の遺骨があるかもしれないから、一人でここに泊まるのが怖い。
ハーメンランドのドラゴンの所に転移して、わたしの前に城に住んでいた人がどうなったのか、質問した。
(私だよ、彼の魔力と彼自身が大きな卵になって、百年前に私が生まれた。私の前世が彼だ、でも全く記憶がない)
彼の大きな魔力が、骨も含めて全てハーメンランドのドラゴンになったのか、ドラゴンって何だろうね。
(だからユーリの魔力もドラゴンに再生できるよ)
わたしは一切残らないんだね。
夕方、魔の国の王城に来た。
「ユーリー、おかえりー」
魔王様は少し落ち着いたようだ。
「た、ただいま?」
ここはわたしの家なのかな。
「今日ね、宿題があるの、ユーリも見て。学校でいい子ですねって、先生が言ったよ、お友達がいっぱいいた」
「よかったねー、宿題見ようか?いい子だね」
ジルベスタが見てやってほしいな、仲良くやってよ。それでもとびついたり登ったりしなくなったし、座っていられるからずいぶん落ち着いている。
「これを書くよ、見て」
賢い女の子だ、小さな手で教科書を書き写している、勉強は嫌いじゃないんだね。
「いい子にしていたら、毎日ユーリは来てくれる?」
毎日か。
「いいよ、毎日お城に来るから、いい子でいようね」
「うん!ユーリ、来てねー」
ジルベスタ、この女の子は淋しいようだよ。
「ジルベスタもいるから、毎日三人で夕食を食べようね」
「えっ、ジルベスタ?」
知らないの?
「いつも魔王様と一緒にいるジルベスタだよ」
「名前知らなかった、ジルベスタも友達なの?」
「そうだよ、仲良くしようね」
「うん!」
魔王様にとって、今までの彼は何だったのだろう、三人のメイドと同じ扱いだったのかな。
その日はジルベスタもよんで三人で食事をしたが、会話がない。魔王様は疲れていて眠そうだから、食べたらすぐに眠る準備をしてもらった。
「ジルベスタ、メイドも含めて六人で仲良く食事をしてはいけないの?」
「魔王様と私たちは違いますから」
「でも小さな女の子だし淋しそうだよ、みんな魔力があって選ばれたからここにいるんでしょう?わたしは来れない日もあると思うから、一緒に食事をしたり学校の話をしたりしてほしいな」
「代理になったのに、ユーリさんではなく私たちがやるんですか?」
「最初からジルベスタがすればよかったよね?魔族だし」
「私の魔力量では無理です」
「魔力で解決できる事は手伝うよ、でも家族は魔力ではなくても魔王様の成長に必要なものなんだよ。これはわたしからの命令だ、他の者にも言ってほしい」
ジルベスタはしぶしぶという感じで、いうことをきいてくれるようだ。それでは明日から六人で仲良くやっていきましょう。
翌日は朝から中央の島に来た。城は日光を反射するくらい磨かれているし、緑豊かで暖かい、誰にも知られていないわたしだけの美しい島。
中央に世界中の龍脈の流れを見られる場所があるらしいが、そこまでやりたくない。
(ユーリ、災害があってからでは復旧の手間が違うから、龍脈の流れくらい覚えてよ)
それをさせたいのだね、龍脈って人が管理するものなの?
(どうせユーリがやるんだよ、今ユーリが一番いろいろできるし、便利だし)
本音がでた、便利だって、元々ドラゴンの仕事だよね、ただの魔術師がやる仕事ではない。
(この場所でユーリがやるなら簡単な事だよ、今は別々にいろんな地域をみてるでしょう?それを一度にできて便利だから、とにかく十階まで行ってみて)
それではまず二階から。ここはキッチンと食堂、食料庫になっていて、調理器具も食器もある。きれいに片付いていて、今も使われているかのようだ。
次に三階、ここは空き部屋が三部屋あるだけだ。
階段を上がるが、後は物置き部屋だけだと信じたい。
四階のドアをそっと開けて中をのぞいて、すぐ閉めた。森だった、声がしたので誰かが住んでいる。うっかり見たけど、妖精?とよんだらいいのかな。
次に行こう、五階のドアもそっと開けると、草原に住処がつくられていて、一本角のきれいな馬?がいた。休んでいるようなのでそっと閉めた、ありえない。
もう何でもありなのか、六階に行く。ドアを開けると工房で、小柄な人たちが金属を加工していた。あっ、作業の邪魔をしてすみません、会釈してドアを閉めた。いろいろドラゴンにきいてない事があるようだ。
七階ではノックをすると、返事があった。出て来たのは顔が猫の人たちで、とりあえず引っ越しすること伝えて、挨拶をした。普通に話の通じる人でよかったけど、これは何?
八階でもノックをしたが、返事はない。そっとドアを開けると、中から炎の鳥がざぁっと音をたてて出てきた、危ない!そのままどこかへ飛び去って行った。住んでいるんですか?ありえる事ですか?
ドラゴンにだまされた。わたしだけの誰もいない城だと言っていたのに、これは何だ?魔窟ではないか、ありえないものと目が合った。
(ユーリ、ドラゴンと会っているくせに細かい所を気にするね)
細かい所だと?
(ドラゴンがいるんだから、他にもいるって思うでしょう)
思わないよ。
(ここは龍脈の重要な場所だって言ってあるよね、それなら他の者にとっても重要な場所なんだよ、そりゃあ来るでしょう、駐在員だよ。トマスは受け入れてくれたようだよ)
彼の名前を初めて言ったな、トマスさんです、ってそこじゃない。駐在員がいるなんてきいてないし、それならわたしはいらないでしょう。
(ユーリという主がいての駐在員だからね、ユーリは必要。関わりたくなければ気にせず住んでいていいんだよ。人ではないから誰もいないのと同じだよ)
同じわけないでしょう、だっているもの。妖精っぽい何かは遠慮がなくなってきているよ、出てくるよ。わたしはまだそれを自分の中で認めていないのに。




