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白の塔の魔術師   作者: ちゃい
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夜会

 「ユーリ、ちょっといいかな」

 「なんでしょう?」

 「ファラディ様のことなんだけれど、ユーリも呼ばれてしまったからお茶会と、もしかしたら夜会も明日は出席しなければならないよ」

 「はい?」

 「王族に気に入られて招待を受けるとは、そういうことになる」


 うわぁ、どこに気に入られる要素があったのか、迷惑。

 「貴族風な衣装がいくつかあるから貸すよ。ユーリも行ってみるといい、吐き気がするほど嫌な目にあえるよ」

 ふふふ、と悪い顔でユーシス様が笑った。


 翌朝宿の食堂で食事中、パルネリア国の美しい女性外交員ハーシィ様と同席した。ユーシス様の知人にしては親しい。


 「ユーシス様、お久しぶりです」

 「お久しぶりですハーシィ様、お元気そうでなによりです」


 女性に対しては冷たい対応が基本だったはずなのに、彼女には心から微笑まれている。

 多くは話さず、今日のお茶会や夜会に出席することなどを、ぽつりぽつりと報告し合っている。

「それではまた後ほど。お会いできるのを楽しみにしていますわ」


 美しい笑顔の彼女を見送るとユーシス様が言った。

 「彼女はパルネリア国の貴族の娘なんだよ。夜会でたまにお会いするだけ。身分が違うからね」

と寂しそうにされている。ずいぶん弱気ですね。


 仕方なく、嫌々貴族風な衣装に着替えた。

 上着が少し大きい。飾りの付きすぎたキラキラした青色の服を着ただけなのに、身の置きどころがないくらい恥ずかしい、うー。


 「衣装くらいで落ち込むな、堂々としていろ。N国を見下せる者は少ないが、平民の外交員はいくらでもバカにされるぞ」


 ユーシス様は紺色の衣装に銀髪がさらさらと流れて、どこの貴族かというほど堂々としたものだ。

 こうはなれないな、王子か?と見まちがえる令嬢に言い寄られても仕方ない。

 しかし商品サンプルとカタログを抱えて、仕事する気満々だ。うっかり魔石商品買っちゃう人もいるんだろうな。


 宿の大通り側の入り口には、手配された馬車が次々と到着してくる。

 前方に青色のドレス姿のハーシィ様が見える。あら?とこちらに手を振ってくるので、二人で手を振ってお見送りする。

 ユーシス様が複雑な顔をしている。彼女、絶対ユーシス様に好意がありますよ、と言っていいのやら。わかりやすいけれど本人にはわからないのか。


 N国はファラディ様のお茶会に、と思っていたらあまりにも人数が多いため城内大茶会となり、庭園に人が大勢いて誰が誰やらわからない。


 ファラディ様のお庭も使われている。これだけいても一人一人がきちんとした招待をされているので、給仕も警備も確認するのですら大変なことになっている。


 ファラディ様と第二王女様にお会いして帰ろうにも、順番待ちであいさつすらできない。このまま夕方には夜会が始まってしまうので急ぎたいが、商人など後回しだ。帰りたくても帰れない。


 今日はこのままお茶会の参加者が夜会に参加するように、と伝言があった。

 最悪。帰っていいですよね、ユーシス様。だめ、とのことでした。


 それでも大勢いた人々はかなり減り、(帰ってよかったはずだ!)夜会直前に少しの間ファラディ妃にごあいさつできた。


 「あらユーリ、今日は最後まで居なくてはダメよ。とっても素敵よー、ユーシスに負けてないわ、がんばってね」

と何かを応援されてしまって、帰れない。残業ですよ、妃殿下。


 第二王女のソフィ様には、ケインの写真を気に入っていただけたようだ。写真は本人以上にうまく外交をしている。


 ケインが送ってきた王族アルバムには、N国王族のミニ情報が手書きで付け加えられていた。さすがケインくんである。


 第二王女様はケインの落書き付き王族アルバムをとても欲しそうにされていたが、差し上げるわけにはいかない、困った。


 彼女はケインのものなら何でもいいようだ。ユーシス様にきいてみよう。

 さすがに王様へのコメントがうるさいじじい、ではお見せできない。

 ケインの写真の下にはオレと書いてあったので、その部分だけ切り取って差し上げたら喜んでくれた。


 ケインの手書きの封筒とともに大切に仕舞ってくれるらしい。 

 可愛らしい十才の少女にとって、ケインは本当に夢のような王子様なのだろう。本人に会わせるのは後にした方がいいと思う。


 夜会が始まると控え室に残って、魔道具やカタログで興味のある方々に説明を始めた。ぽつりぽつりと各国の偉い方がやってくる。


 ネーデリアの新政府外交員とも会った。黒髪の若い控え目な男だった。

 「リゲル様の友人なのですよ」

 「ああ、それは。本当に残念なことでした」

 しばらく話をしたが、見知らぬ男の言うリゲル様はすでに遠い国の英雄で、わたしの知っているあの優しい人とは別人のように思われた。生命の維持は国の力で確実にされているから、安心していいらしい。

 わたしのためにこうなってしまったとしても、ずっと泣いていていいわけではない。


 ユーシス様と連絡が取れない。

 かなり多くの国の方々に来ていただいている。一般的な外交の挨拶と、型通りの説明と、魔獣探索用の注文を受けたりしている。お酒がずいぶん入ってきたようなので、説明はもう終わっていいだろう。

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