ハーメンランド王城
カメラを持ったままのユーシス様と、ハーメンランド王城前に到着した。魔石カメラを売りに来ているので、それはそれでいいのか。
王城へ入るとすぐに案内人が来てくれた。
案内されたのは意外にも王宮ではなく、王城の最奥といえばいいのか、隣の公爵家の庭に建っているのではないか、というほど外れた位置にある別館だった。
側室の部屋というよりはファラディ妃の館で、堂々としたものだ。
美しい庭はバラが多く植えられていて、公爵家の庭にも劣らない。内装も優美で花の模様が使われている。妃殿下はバラがお好きなようだ。
「いらっしゃいユーシス、待っていたわよ」
好奇心一杯の輝く瞳と、それでいて思慮深い大人の女性の顔を持つ、お美しい妃殿下がお待ちだった。側室の二番目という陰は全く見えない。権力争いはここまでやってこないのか、やわらかい表情をされる。
「ありがとうございます。新商品のカタログをお持ちしました、ご覧ください。それからこちらが魔獣探索のためにN国から派遣されました、外交員のユーリです」
「ユーリと申します、お招きいただきましてありがとうございます」
やった、あいさつは終わった。王族は苦手なので、下がってしまおうとした。
「あら、外交員なの?魔術師ではないの?」
「魔術師でもあります」
「そう、ではきっと強いのね。一人で魔獣と向き合おうだなんて。少し魔術を見せてくださらない?」
基本的に外国でN国の攻撃の術式を使うことは禁止されている。
その他の術式もN国の商売道具なので、簡単に公開していいものではない。どうしたものかー。
ユーシス様は小声でいけません、と言っている。
「申し訳ありません。N国で禁止されておりますので」
「そう、残念ね」
魔術に興味がおありになる。N国としては話しやすい方だろう。
「妃殿下、この魔石カメラをご覧ください」
とユーシス様はケインの写真を見せた。
「あら、素敵なおみやげね。ケイン殿下は笑顔が似合う方なのね、お元気そうでよかった。この写真、二枚いただきたいのだけれど」
「かしこまりました、明日お持ちします。他の商品もよろしくお願い致します」
「ユーシス、もう帰ってしまうの?」
「只今到着したばかりですので」
「それではまた明日ね、ユーリも一緒に来てちょうだい」
妃殿下はにっこり微笑まれた。お美しいが、困る。
旅費を多めにもらってあるそうなので、近くの高級な宿をとった。
ユーシス様と一緒に寝ることのないように、きちんと確認をとる。しかし現在どこの宿も混み合っていて、一部屋二名でしか空きがない。
安い宿では相部屋もあるくらいだと言われた。
「ベッドは二つですよね?」
「はい」
どうぞ、と案内された部屋は高級な家具とベッドが二つある部屋で、よかった。
高級宿なので他国の外交員らしい人もかなりいる。
「ユーリ、魔獣探索は祭りのような状況になるよ。これはほぼ世界中から人が派遣されているね。
転移が40分待ちの理由はこれだ、宿が埋まるわけだよ。
とりあえず魔獣祭りの後ろでカタログを配りなさい、前面に出て魔術使っちゃだめだからね」
とユーシス様に言われたが、なんだかわくわくする。
そうだ、魔石カメラと探知機の現物セットをロビーに置かせてもらって、注文書をフロントに頼もう。
さっそく明日からでも転移でいろいろ送ってもらって。
夜用に光る魔石もいくつかあったほうがいいだろう、暖めるものばかり気にしていたからいろいろ足りない。




