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白の塔の魔術師   作者: ちゃい
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ハーメンランド事前準備

 研修生の対応に疲れたのでユーシス様のところへ戻って来た。いつもの小会議室にいると思ったのにお出かけしている。


 白の塔は商人としてやっているので、外交員専用の部屋は与えられていない。

 白の塔内部に、外交員の印象をあいまいにするためにもいいらしい。


 わたしは今ユーリとしてやっているので、最近ユンタと呼んでくるのはジーク様くらいだ。この辺もかなりあいまいだ。


 黒の塔からは王命で大使が、神殿のつながりを利用して各国へ派遣されている。しかしネーデリアでもそうだったが、政治的なことはこちら任せで建物と人数だけが立派なのだ。

 わたしたちがN国同士だからといって受け入れられたことはないらしい。居心地悪そうだけど、行ってもいいよね?


 「ユーリ、ナーシャって子知ってる?」

 戻ってきたユーシス様がげんなりした顔できいてくる。あ、結界張り忘れてた。


 「N国のかなり貧しい地域の出身の、ジークが連れてきた子だね。

 小学校を出て中等科へ進まずに、魔力を使った仕事をしていたようだ。兄弟が多くて親も職に就いたり就かなかったりで、お金に不自由していたらしい。白の塔の給料を見て驚いていたようだからね」

 「はあ、苦労していた子なんですね」


 わたしはごく普通の家の子で、学院は高等科まで出ている一般的な平民だ。だから魔力があってもあまり使うことはなかった。その頃は少しあるらしい、くらいの認識だったのだ。


 「サシャの例を見て、自分もあこがれでそうなりたいのはわからなくもないよ。ジークがなんとかすればいいのに、あいつは私のところに押し付けたんだ。私の趣味が自分と一緒だとでも思ったのか!」


 ごもっともです。わたしも知ってて教えませんでした、すみません。ユーシス様が女の人にモテるのはいつものことだし。


 わたしもケイン殿下との一件を話した。やはりわたしたちは外交員だ、早く任地へ行こうと意見が一致した。


 寒さ対策のためと王家の調査で、三日後に旅立つことにした。

 魔獣の下調べはどこかで記事があったら見ておけばいいかな、実際会えるかわからないし、報告書は見つからなかった、でもいいのだから。


 さて、ユーシス様から簡単なハーメンランド王家の資料をもらったので、間に合わせで見てみよう。


 王様、王妃様、王子三名、王女二名、側室二名。


 第一王女と第二王子の母が王妃様。

 第一王子と第三王子の母が側室1で、第二王女の母が側室2。


 ややこしい、もう側室2は権力争いから外れている。

 王妃様派と側室1派が揉めている、というありがちな王室だ。


 それでも第二王女はN国のケイン王子と婚約の予定で、ほぼ決定している。

 またケインか!本人は承知していないらしいが。

 N国は側室2のファラディ様と懇意にしている。


 わたしたちはファラディ妃に招かれて、魔獣探索チームとして派遣される。

 もちろん商品カタログを持って、魔道具を売るついでの探索である。


 お茶会と夜会もあるが、ユーシス様が担当なのでわたしは関係ない。

 失礼のない限り、わたしはそういった会に出なくてもいいことになっている。


 ユーシス様ですらダンスや社交などせずに、商品カタログを持って得意先回りをするだけで、会場に入れてもらって話を聞いてもらうだけなのだ。 


 黒の塔は神殿関係者なので、どこの国でも神殿以外には関わらない。その辺は一貫していて会うことはない。


 初日にファラディ妃と第二王女のところで謁見があるが、その後は王宮から離れられる。わたしは歩く災難ですから、不敬罪になりそうな所からは早めに退散したい。


 二日目からはユーシス様と別れて、いよいよ魔獣の所へ行く。わたしにはそれが似合っている。

 魔獣のけりがついて、ある程度王族と顔をつなぎ、商売ができればいいので前回よりも楽だろう。


 いよいよ出発の日、魔法陣転移施設に来た。

 ケインがわたしに、ナーシャがユーシス様に文句を言っているが、準備ができたので出かけることにした。


 王城外のいつもの場所から、大国をとばしてN国からすぐハーメンランド王国の王城付近へ行けるらしい。王城からヘルトン領の領主館へも魔法陣がある。

 しかし混雑しているのか40分待ちだった。


 「ユーリ先生、強いくせに逃げるのですか!」

 しつこい、ケイン。

 「ジーク様に任せなさい、心配いらないよ」


 「ユーシス様、残念です。私をお忘れにならないで必ず帰って来てくださいね」

 ナーシャ、がんばるね。


 「外交員だから、帰って来るけどまたすぐ出掛けるよ。それよりねケインは王子だよ、知ってた?」

 「え、本当ですか?ケイン!王子なの?」

 あっ、ずるい。ケインが狙われている!


 「なんだ誰も知らなかったの?ユーリ先生も知らなかったよね。俺って目立ってない?」

 わりとね、顔までは知らないよ。こんなとこでこんなことしてる、なんてこともね。


 「ユーリー、知らなかった?自国の王子を一度も調べてみなかったの?外国できかれたらどうするつもり?ケインしか知らないってことないよね」

 まずい、王族は苦手では済まないらしい。


 「ケイン、王族アルバム送っといて!ハーメンランドの王城へ私宛で」

 「えー、俺が買って送るの?わざわざそんなものを」

 「最新版で頼むよー、二冊ねー」

とユーシス様。

 「それ、俺はもう載ってないかもしれなーい」

とケイン。大丈夫、君もちゃんと載っているよ。

 時間がきたので魔法陣に乗る。

 その瞬間ユーシス様は忘れていたとばかりに、にこやかに手を振っているケインを写真に撮った。すごい、早技。

 

 

 

 

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