ヴァリアント各種説明
・ヴァリアント各種説明
始めに
・ヴァリアントとは
ヴァリアントとは、アルスフィールにおける人型の汎用ゴーレムの総称である。
元々は七百年程前に発生した大災厄の際に発見され、その後人類側の勝利の決め手となった伝説的な人型発掘兵器〈ヴァリアント〉をリバースエンジニアリングし、アルスフィールの技術で模して作られた物を祖とする。
その存在は大災厄が発生する度にリセットされていたアルスフィールの文明世界を、革新的に変革するほどの大発明となった。
・ヴァリアントの防御力と武装。
ヴァリアントは主にマギダイトで構成されているが、機体に使用されているのは堅牢さが売りの黒マギダイトである。
通常のマギダイトがガラスの様な特性を持つのに対し、黒マギダイトはいかなる衝撃、打撃、摩擦、熱変化、経年変化、魔法攻撃にも耐えるという特性を持つ。
余りにも加工性が悪いためアルスフィールの有史以来存在が無視されてきたという代物であるが、加工法の確立によりヴァリアントの構造材に用いられる様になってからは評価は一変。
そのありとあらゆる攻撃を通さない絶対の防御力は、ヴァリアントをこの世界最強の装甲戦力としたのだ。
しかしただ一つ、黒マギダイト単体では防げない物がある…それは衝撃。
対策としてはコクピット内に衝撃を緩和する魔術機構を施すというやり方だが、それにも限度があり、しかも高価であった。
その為、ヴァリアントに対する攻撃というのは搭乗者に衝撃を与え失神させる事で行動不能にさせるという物である。
またヴァリアントに弱点が無いわけではない。構造上、可動部単位での直接的なパワーはそんなに高くないため、たとえば機体が起動する前だとか、搭乗員が気絶している隙に機体をロープなどで巧く縛ってしまえば、機体の身動きを封じることが出来るのだ。
…ワニの口を縛ってしまえば開けなくなるのと同じ要領といえる。
そしてこれは戦闘時に撃破した敵機の無力化方法でもある。
攻撃の手段としては、ヴァリアントサイズの長剣やクロスボウ等が携行武装として一般的。
剣に関してはやや特殊であった。両刃剣の場合、片刃には対物用として刃が施されているのだが、刃のもう一方はヴァリアント同士で戦うには不要であるので刃が付いていないのだ。これはコストダウンと長寿命化の為でもある。
ヴァリアント同士が剣で戦う時は、刃が付いていない方へくるりと剣を回すのが戦いの合図だ。
クロスボウ等の矢はアルスフィールに生息する巨大な鳥である巨鳥類の羽が尾羽に用いられている。魔法の加護の掛けられたこの羽を用いることで、ヴァリアントサイズの巨大な矢は物理法則を無視して飛んでいく事が可能なのである。
・デストロイヤー級とマイティ級
ヴァリアントには、主に大きさの違いでデストロイヤー級とマイティ級の二つに分類される。
・デストロイヤー級
全高は12メートルほど。
最初に開発されたヴァリアントの分類で、その性能は絶大だが、大型のため取り回しが悪く運用コストも莫大。そのため半分廃れてしまっている。
軍用で作られた物しか基本的になく、各国の切り札として貴重に運用がされている。
・マイティ級
全高はデストロイヤー級の半分である6メートルほど。世間的にはヴァリアントというと本級の事を指す。
元々はデストロイヤー級ヴァリアントの素材採掘用に開発された物が原型であり、そしてデストロイヤー級のコスト面と取り回しが悪すぎる事から、それらの問題が薄い本級が注目されてなし崩し的にヴァリアントとして活用されるに至ったという経緯を持つ。
性能は大きさに見合った物だがデストロイヤー級における大まかな問題は解決されており、ヴァリアント普及の大きな要である。
・新性能ヴァリアント
実証機・チャレンジャーの完成によって新たなステージに到達したヴァリアントだったが、実働機へのフィードバックは遅々とした物であった。
…しかしそこに再び大災厄が発生。
危機に晒された各国は、より強力な機体を欲してチャレンジャーで確立した新技術を土台とした新しいヴァリアントの開発を開始。
そうして完成した、既存の物とは一線を画する性能のヴァリアント群に冠された名称が“新性能ヴァリアント”だったのだ。
基本的にはチャレンジャーの流れを汲んでいる機体に付けられるフレーズであり、代表的な物としてはリントウェールのパラディンとスティンガー、レンヌヴィルのグスタフ、クリスタニアのベルトールである。
・主立ったヴァリアント達。
・チャレンジャー
リントウェールやレンヌヴィル等の国々が合同で開発した、マイティ級ヴァリアントの技術実証機。
ヴァリアントの発見から五世紀半が経った頃、ルクドニアの各国では新しいヴァリアントの形を模索する動きが広がっていた。そして新たな〈大災厄〉の発生も懸念されていた事から、それは国際的な合同研究という動きとなった。
その研究は多岐に渡り、生産性をそれまでから格段に高めた製造法の確立から、各種材料の研究に新しいフレーム構造や関節構造の技術的革新まで。そうした挑戦の積み重ねとして、研究の成果の集大成と言うべきヴァリアントが建造される事になった。
完成し、“挑戦者”の名前が冠されたそのヴァリアントはまさにその時代の技術の結晶として、そして間違いなく次の時代を切り開く機体となったのであり、時の吟遊詩人は本機の存在をどんな宝石より輝かしいと詠ったのだ。
当時としては革命的な性能であったが、今の目で見ると機体の性能という意味では特筆する物はない。だが、現在のヴァリアントの形を確立させた記念碑的機体である。
・パラディン
リントウェールが開発した強襲打撃装甲騎兵。
全身をマギダイトで構成されていることによる絶対の防御力と、極めて高く良好な各種性能を誇る。
今から百五十年ほど前。再び起きた〈大災厄〉に際し、リントウェールは大陸での機動戦を行う快速駆逐部隊の編成を決定。
一撃で撃破可能な新兵器・バスターランスによる強襲一撃離脱を前提に、それを装備・運用するための強力なヴァリアントが求められたのだ。
そこで先だって開発された実証機・チャレンジャーの技術やノウハウをフィードバックした、全く新しいヴァリアントが開発される事となった。
…バスターランスの爆圧に自機も耐えるため、全ての部位にまでマギダイトを使用。
その恩恵による軽量化と、当時の最新の知見と工学で作られた各部やフレームの組み合わせにより、今までにないハイパワーと運動、機動性を獲得。
そうして完成した〈パラディン〉は、あまりもの高コストを受けてのマイナーチェンジを行いながらも、期待以上の高い性能を発揮したのだ。
同時に完成したスティンガーや、レンヌヴィルのグスタフを合わせ“新性能ヴァリアント”と言う新たな呼称が作られるほどであった。
その輝かしい性能は今でも鈍ることはない。
ただ一つ本機の問題があるとすれば、一機作るのに城が一つ築城出来ると言われるほどの高い製作コストぐらいだろう。
・ドラグーン
リントウェール本国の装甲竜騎兵部隊にのみ配備されていることからその名が付いた、パラディンの上位バージョン。
全てにおいて通常のパラディンを上回る性能を持つことから“ナイトマスター”の名前でも呼ばれている。
元々はこの機体がパラディンとして量産される筈であったが、あまりの高コストに急遽生産を中止、それまでに生産されていた60機余りは全て第一のパラディンの配備先である本国装甲竜騎兵部隊で集中運用されることとなり、以降の生産分はスティンガーのパーツや設計に一部を変更したデチューンタイプが作られることとなったのである。
・スティンガー
リントウェールが開発した強襲駆逐装甲騎兵。
開発中から指摘されていたように、コストがべらぼうに高く、大量導入が事実上不可能なパラディンに代わり、リントウェール装甲部隊の主力としてパラディンと同時に開発された量産型の新性能ヴァリアント。
その性能は各種の機体が充実した今の目でみればこそ、やや平凡で標準的、ともすれば機動性を除けば没個性とも評されるが、登場した当時は新性能ヴァリアントの一機として、既存のヴァリアントとは一線を画した物であった。
チャレンジャーの技術の純粋な量産化を目指した結果コストの暴騰したパラディンの反省から、本機の開発では徹底したコスト削減が計られた。
各パーツの規格や仕様はパラディンと同じで互換性があるが、材料は数グレード落ちる物を用い、製造の行程も各種の簡略化を行ったため、コスト比でみればパラディンの約八分の一という物になったが、同時に出力も四分の一、センサー性能も半分程まで落ち込んだ。
ただしこれはパラディンのスペックが高すぎるだけで、本機のヴァリアント単体の性能としては申し分ないほどであり、特に問題はない。
加えてパラディンの優秀な運動性、機動性能はほぼそのまま継承されたため、本機は単なるハイローミックスのローではない、駆逐作戦、奇襲、軽戦用として分類されたのである。
リントウェール本国ではパラディンの補助やヴァリアント部隊の数の面での主力として各装甲部隊や軽騎兵部隊などで運用されているが、他の採用国ではパラディンの代替機として等、多様な任務に従事している。
・ウォーリア
・スパルタン
・スコルピオン
リントウェールの開発した普及型の戦列装甲歩兵。
パラディンの量産型といえるスティンガーですら全ての部隊への全面配備は難しかった事から、主に各種任務の補助や軽戦用、ヴァリアント部隊の数的な穴を埋めるために開発されたのが本機種である。
基本型のウォーリアを軸に、重装型であるスパルタン、より軽戦に特化したスコルピオンに分化している。
格段の低コストと引き替えに性能は本当に最低限の物しか無く、実質現在の作業用ヴァリアントとは殆ど性能の差がないといえる。