次は利き足を
転げまわる彼の後ろで、船が動き出した。アンドレという男は冷静に、こちらに銃を向けたままだった。もう一人の部下がローズマリーの脇について、隠しているものがないかを探っていった。
「遊びはお終いにしよう、優男くん」
ケンザキが船の軌跡を確認しながらゆっくりと近づいてくる。
「次に、利き足を撃つからな」傷をあらため、まず部下に彼を後ろ手に縛らせてから出血がひどくならないように左の足にも布をきっちりと巻く。
「口はきけるだろう?」包帯を巻いた時とは全然違う乱暴な手つきで、彼の髪を掴んで顔を持ち上げた。
「元株はどこだ?」
「知りたいのならば、もっと、丁寧に、扱え」
歯を食いしばったまま、ローズマリーが応える。プレジャーボートが博士の元に近づいているのが音で分かった。サンちゃんはどう交渉したのか、まさか、オレみたいに撃たれてないよな。
「元株は、どこでしょうか」
ケンザキはそう言いながら、撃たれた個所に空いている方の手を当て、親指でえぐるように押した。ローズマリーは絶叫した。暴れ回ろうとしたが、もう一人にしっかりと体を固められている。更に、アンドレがもう片方の脛に狙いを定めていた。
「教えて、下さい、どこに、あるのか」
言いながら、ケンザキは傷口に指をぐいぐいと食い込ませる。
「分かった、話す、話すからやめてくれ」最後は裏声になってしまった。上にのしかかっていた男がようやく立ち上がる。ケンザキも一歩下がり、銃を持った男も脇に寄ってきていた。三人とも、罠にかかった猛獣を満足げに見おろしている。
「博士を確保」ケンザキの通信機から声が聴こえた。船に残っていた男からのようだ。
「状態は?」
「意識はないが、呼吸は安定している。熱は38.0度。脈拍110で安定」
「シャンピオンに聞いて、GH‐65をしとけ。アンプルは予備のバッグに入っている。黄色いラベルのやつ」
「わかった」
「少し時間がかかるかも知れん。西側ポイントaに移動して連絡を待て」
「了解」
ケンザキは少し船の方を見送ってから、またゆっくりとローズマリーを見おろした。
「博士は手に入ったから、オマエの情報は少し値下がりしたかな」
「オレの情報は安いかも知れないが、血の代償は高くつくぞ」
「ほう」ケンザキは本当にうれしそうだった。コイツはどこを切っても正真正銘、サディストなのだろう。
「別に……あの世に持っていきたい内容でもないし、教えてやるよ」
呻きながらもローズマリーは仰向けになった。




