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 感染

 サンライズとマヤラがいったんベースに戻った時には、すでに日は西に傾きかけていた。

 ローズマリーの作ってくれたおむすびと携帯食料、水をかなりの量担ぎ、サンライズは再び博士のいる洞窟へと向かう。

 エンジンのないゴムボートも一そうあるので、海側からそれで行けば早いのだが、潮の関係か流れがだいたいいつも北東から何西へと向かっている、とローズマリーが言った。それに逆らって進むには今の装備では無理だろう、と目を伏せる。

 一応関係各所には連絡を入れ、コウダ博士の実験室と自宅から今回のウィルスに関する資料を捜してもらうことになった。

 エンジン付きボートを運んできてもらおうか、という話も出たがそれを待つ時間も惜しい。博士がいつまで話ができる状態かも全く分からない。助かった船長は、その後また発熱しており、意識が混濁したそうだ。肺水腫の症状も出始めているらしい。

 悪い事に、船長の息子も発熱したと連絡がきた。まだ、感染によるものなのか単なる体調不良なのかが判り兼ねる、ということだったが、念のために船長と同じ隔離病棟に入れることになったらしい。

 マヤラは両腕を抱えるように、サンライズを見送っている。

「なんだよ」サンライズは少し近くに寄って、しげしげと彼をみた。

「寒いの?」

「まだ冬終わってないから」よくみると、細かく震えている。

「今日はそんなに寒くないぜ」ローズマリーが近づこうとしていたのを

「触るな」サンライズ、はっと気づいて手で制し自分も二人から離れる。

「いつからだ?」厳しい声でマヤラに問うと、ローズマリーが挙げかけた手を止めた。

「マヤラ、まさか?」

「ヤバいかも」マヤラは急に座りこんだ。「オレも、ヤッバいかもね」

 発熱が始まっていた。「ロージー、来てはダメだから」

「手足口病、って言ってたんだよな、元々は」

 ローズマリーはテントから薬箱を出してきた。

 中の解熱剤を四つに分け、他の薬もそれぞれ分けてプラの袋に入れ直し、マヤラとサンライズの足もとに放り投げた。

「サンちゃん、二人分の方取って。マヤラはそっち。効くクスリはないけど、対処療法に頼るしかないだろう。熱冷まし飲んであとは水分補給忘れんなよ」

 更にマヤラの分の食料をリュックに詰めて、彼の足もとに弾みをつけて投げてよこした。

シュラフも放ってよこす。

 マヤラは拾い上げるのも大儀そうだ。それでも

「オレ、あそこの草むらで寝るから」と中腹の方を指さした。

 途中まで一緒に、というか、マヤラを先に立たせ、少し離れてサンライズがついて行く。 

 マヤラは冬眠から覚めたクマのようだ。逆に、このまま永遠の眠りについてしまわないといいのだが。

 マヤラが中腹に落ち着いたのを見届け、サンライズは先に進む。二度目の尾根道と崖は、それほど大変ではなかった。それでも、洞窟についた頃にはかなり夕闇が迫っていた。



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