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最終決戦5

 世界が軋む。


 王の魔力が一気に収束していく。


 黒い空がさらに深く沈み、奈落そのものが圧を増していく。


「ここで終わらせる。」


 王の声は静かだった。


 だが確かに“決定”の響きがあった。


---


「させるかよ!」


 真銀が踏み込む。


 剣が黒い空間を裂く。


 だが王は一切動かない。


 ただ一歩、横へずれるだけで攻撃を回避する。


「予測。」


「修正。」


 その一言で、真銀の動きが“先読みされている”ことが分かる。


---


 ララが叫ぶ。


「速すぎる!」


 ライが低く唸る。


「いや……速いんじゃない。」


「全部読まれてる。」


 アイシィが翼を広げる。


「世界の流れそのものを見ている。」


---


 千乃はその場で膝をつきながらも、ノートを抱えていた。


 ページはまだ動いている。


 真紅の文字が増え続ける。


 だが。


 まだ足りない。


「まだ……。」


「届かない。」


---


 王が千乃へ視線を向ける。


「その本。」


「完成させる前に消す。」


 右手がゆっくりと上がる。


 黒い魔力が一点に集まる。


 それはもはや攻撃ではない。


 “消去”。


 存在そのものを削る力。


---


「千乃!」


 真銀が叫ぶ。


 同時に飛び出そうとしたその瞬間。


「待て。」


 老人が低く言った。


「今の奴は、お前では止められん。」


「じゃあどうすんだよ!」


---


 老人は千乃を見る。


 そして静かに言った。


「ノートじゃ。」


「……?」


「その本は、完成させるために存在しておる。」


---


 その言葉と同時に。


 ノートが強く脈打った。


 ドクン。


 真紅の光が一気に広がる。


 ページが一枚、勝手にめくれた。


 さらにもう一枚。


 そして。


 まだ触れていないはずの“最後のページの一つ手前”が開く。


---


 そこに刻まれ始めた文字は、これまでと違っていた。


 ただの技名ではない。


 “繋がり”。


 誰かが誰かを守った記録。


 誰かが立ち続けた痕跡。


 戦いの意味そのものが、文字になっていく。


---


 王の目がわずかに揺れる。


「それは……」


 初めて声が乱れた。


「それ以上は……成立してはならない。」


---


 真銀が気づく。


「何だ……この感じ。」


 剣が軽くなる。


 身体が軽くなる。


 力が増しているわけじゃない。


 “繋がっている”。


 千乃と。


 仲間と。


 この世界と。


---


 ララが笑う。


「なんか……元気出てきた!」


 ライも目を細める。


「これは……補正か。」


 アイシィが静かに言う。


「違う。」


「共鳴。」


---


 千乃はノートを見つめる。


「これ……。」


「私の技じゃない。」


 その瞬間。


 王が初めて動いた。


「破壊する。」


 黒い光が放たれる。


 今度は真銀ではない。


 ノートへ。


---


 だが。


 真銀がその前に立つ。


「させるかよ。」


 光が直撃する。


 衝撃が世界を揺らす。


 しかし。


 千乃の結界がそれを完全に受け止めた。


---


 王の声がわずかに低くなる。


「なぜ止まらない。」


 千乃はゆっくり顔を上げる。


 血は流れている。


 だが目は死んでいない。


「だって。」


「まだ途中だから。」


---


 ノートのページが、最後の一つ手前で止まる。


 真紅の文字が震えながら浮かぶ。


 あと一歩。


 あと一行。


 その先にある“最後の技”。


 まだ誰も触れていない領域。


---


 王は静かに手を握る。


「ならば。」


「完成より先に終わらせる。」


 空が割れる。


 奈落が泣くように揺れる。


 真銀が剣を構える。


 ララが力を溜める。


 ライが息を吸う。


 アイシィが翼を広げる。


---


 そして千乃は。


 ノートを、もう一度強く抱きしめた。


「お願い。」


「もう少しだけ。」


 その言葉と共に。


 最後の一つ手前のページが、静かに“開き切る”音がした。

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