↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
202/259

ちのしろ、爆☆誕

 その日の翌日。


 星霜王国。


 城下町。


「千乃様が帰ってきたぞー!」


「今日はお祝いだぁぁぁぁぁぁ!」


「花火!」


「料理!」


「音楽!」


「全部用意しろー!」


「え?」


 千乃は。


 中央広場で。


 ぽかん。


 としていた。


「……何してるの?」


 町人。


「お祭りです!」


「何のお祭り?」


「千乃様帰還祭!」


「……」


 千乃。


「私が帰ってきただけだよ?」


「それが大事件なんです!」


「大げさだなぁ」


 その隣。


 真銀。


「……」


「俺もいるんだが」


 町人。


「もちろんです!」


「真銀様も千乃様が戻ってきて何よりです!」


「お二人とも!」


「おめでとうございます!」


「……」


 真銀。


「何のお祝いなんだ」


「生還!」


「帰還!」


「再会!」


「全部です!」


「……」


 真銀は。


 嫌な予感がした。


「千乃」


「なに?」


「帰ろう」


「え?」


「これは」


「絶対」


「何か始まる」


「……」


 千乃は。


 少し考える。


「でも」


 広場を見る。


 人々が。


 笑っている。


 花が飾られている。


 料理が並んでいる。


 子どもたちが。


 楽しそうに走っている。


「……」


 千乃。


 にこっ。


「楽しそうだから」


「もう少しいようよ」


「……」


 真銀。


「お前」


「こういう時だけ」


「妙に乗り気だな」


「だってお祭りだよ?」


「……」


 その時。


「では!」


 町人の一人が。


 前へ出た。


「本日の特別企画!」


「……?」


 千乃。


「特別企画?」


「はい!」


 町人たちが。


 一斉に。


「せーの!」


 ぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!


「うわっ!?」


「何だ!?」


 魔法陣。


 二人の足元に。


 突然。


 広がった。


「ちょっと!?」


 千乃の身体が。


 淡い光に包まれる。


「え?」


 光が消える。


 そこにいたのは。


 いつもの千乃ではなかった。


 白を基調とした。


 星の刺繍が入ったドレス。


 腰には。


 淡いピンクのリボン。


 髪にも。


 小さな星飾り。


「……」


 千乃。


「……かわいい」


 真銀。


「そこなのか?」


 そして。


 真銀も。


「……」


 淡い光に包まれていた。


 黒と白を基調にした。


 礼装。


 銀色の装飾。


 青い宝石。


 そして。


 胸元には。


 星の紋章。


「……」


 真銀。


「……何だこれ」


 町人。


「アイドル衣装です!」


「アイドル!?」


 真銀。


「俺が?」


「はい!」


 千乃。


「……」


 千乃。


 くるっ。


 ドレスを。


 少し。


 揺らす。


「これ」


「すごくかわいい!」


 真銀。


「お前」


「もう受け入れたのか」


「うん!」


「早い……」


 すると。


 町人たちが。


 さらに。


 魔法を発動する。


 広場の中央。


 ステージ。


 光の床。


 星型のエフェクト。


 音楽。


 どこからともなく。


 流れ始める。


「待て」


 真銀。


「何でステージまである」


「昨日から準備してました!」


「準備してたの!?」


 千乃。


「すごーい!」


「千乃!」


「なに?」


「感心するな!」


 そして。


 町人。


「では!」


「千乃様!」


「真銀様!」


「一曲お願いします!」


「……」


 真銀。


「断る」


 即答。


 千乃。


「私はやる!」


「千乃!?」


 真銀。


「お前!」


「だって」


 千乃は。


 ステージを見る。


「みんな」


「楽しみにしてるよ?」


「……」


 真銀。


 町人たち。


 全員。


「お願いします!」


「お願いします!」


「お願いします!」


「お願いします!」


 真銀。


「……」


 しばらく。


 沈黙。


「……千乃」


「なに?」


「俺」


「歌」


「得意じゃないぞ」


「私も知らない!」


「知らないのか!?」


 千乃。


 にこっ。


「でも」


「やってみようよ!」


「……」


 真銀。


 ため息。


「……分かった」


「やった!」


 町人。


「決まりだぁぁぁぁぁぁ!」


「「「うおおおおおおおおお!!」」」


 そして。


 音楽が。


 始まった。


 千乃。


 ステージ中央。


「……」


 最初。


 少しだけ。


 緊張していた。


 けれど。


 音に合わせて。


 一歩。


 くるっ。


 ドレスが。


 ふわっ。


 千乃。


「……」


 そして。


 笑った。


「楽しい!」


 真銀。


「……」


 千乃。


「真銀!」


「何だ?」


「もっと!」


「……」


「笑って!」


「無理」


「なんで!?」


 真銀。


 それでも。


 ほんの少し。


 口元が。


 緩んだ。


 町人。


「笑った!」


「真銀様が!」


「うおおおおおおお!」


 千乃。


「ほら!」


「笑ったじゃん!」


「……」


 真銀。


「お前がうるさいからだ」


「えー」


 音楽。


 さらに。


 盛り上がる。


 千乃。


 くるくる。


 踊る。


 星のエフェクト。


 光の粒。


 広場いっぱいに。


 舞う。


 真銀も。


 最初は。


 ぎこちなかった。


 けれど。


 少しずつ。


 千乃に合わせて。


 踊る。


「……」


「……」


 二人。


 並んで。


 歌って。


 踊る。


 町人たち。


「千乃様ぁぁぁぁぁ!」


「真銀様ぁぁぁぁぁ!」


「かわいい!」


「かっこいい!」


「最高!」


「お似合い!」


 千乃。


「お似合いだって!」


 真銀。


「聞こえてる」


「……」


 そして。


 最後のポーズ。


 二人。


 並んで。


 ぴたっ。


 星の光が。


 ぱぁぁぁぁぁっ。


 広場を。


 包む。


 拍手。


 歓声。


「「「「「うおおおおおおおおおおおお!!」」」」」


 千乃。


「楽しかった!」


 真銀。


「……疲れた」


「えー」


「俺は」


「普段」


「こういうことしない」


「でも楽しかったでしょ?」


「……」


「……少し」


「やった!」


 その時。


 一人の町人が。


「お二人!」


「はい?」


「名前!」


「……?」


「ユニット名!」


「……」


 真銀。


「ユニット?」


 千乃。


「……」


 少し。


 考える。


 そして。


「千乃と真銀だから」


「ちの……」


 町人。


「ちの?」


「しろ?」


「……」


 誰かが。


 ぽんっ。


 と手を叩いた。


「ちのしろ!」


「……」


「……」


「「「ちのしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」


 千乃。


「それ!」


「かわいい!」


 真銀。


「……決まったのか」


 町人。


「決まりです!」


「今日から!」


「千乃様と真銀様は!」


「星霜王国公認!」


「ちのしろ!」


「公認なの!?」


 真銀。


「勝手に公認するな」


 千乃。


「いいじゃん!」


「千乃……」


「私」


「ちのしろ」


「気に入った!」


「……」


 真銀。


 少しだけ。


 笑う。


「……まあ」


「悪くない」


「でしょ?」


 そして。


 町人たちが。


 また。


「ちのしろ!」


「ちのしろ!」


「ちのしろ!」


 と。


 叫び始める。


 千乃。


「ちのしろー!」


 真銀。


「おい」


「何?」


「自分で言うな」


「だって!」


 千乃は。


 楽しそうに。


 笑った。


 その日。


 星霜王国の城下町には。


 新しい名前が。


 生まれた。


 千乃と真銀。


 二人で一つ。


 星霜王国の。


 謎の即席アイドルユニット。


 その名も。


 ――ちのしろ。


 なお。


 本人たちの知らないところで。


 町人たちは。


 すでに。


 次回公演の日程を。


 相談し始めていた。


「次は新曲!」


「衣装も新しく!」


「振り付けも!」


「待って」


 真銀。


「誰が許可した」


 町人。


「千乃様!」


「千乃!?」


 千乃。


「え?」


「いいよ!」


「早い!」


 真銀。


「……」


 そして。


 城下町。


「ちのしろー!」


「ちのしろー!」


 今日も。


 星霜王国は。


 平和だった。


 ……たぶん。


 その日の夜。


 星霜王国。


 城下町。


 小さな集会所。


「……」


「……」


「……」


 町人たちが。


 長い机を囲んでいた。


 机の中央には。


 一枚の紙。


 そこには。


 大きく。


 こう書かれている。


『ちのしろ・新曲制作会議』


「……」


 一人の町人が。


 拳を握った。


「始めよう」


「おお!」


「我々の」


「次なる一曲を!」


「おおおおおおおお!!」


 別の町人。


「前回は」


「即興だったからな」


「今回は」


「ちゃんと作ろう!」


「歌詞!」


「曲!」


「振り付け!」


「衣装!」


「全部だ!」


「……」


 その時。


 一人の老人が。


「ところで」


「誰が作曲するんだ?」


「……」


「……」


「……」


 沈黙。


「……」


「……誰も?」


 すると。


 一人の若者が。


 手を挙げた。


「俺」


「音楽なら」


「少しできる」


「おお!」


「じゃあ!」


「頼んだ!」


「え?」


 若者。


「俺一人?」


「作曲家だろ?」


「そうだけど!」


「ならいける!」


「無茶振りだぁぁぁぁぁ!」


 しかし。


 町人たちの勢いは。


 止まらなかった。


「テーマは!」


「何がいい?」


「千乃様!」


「真銀様!」


「二人の再会!」


「帰還!」


「夫婦!」


「星!」


「愛!」


「希望!」


「盛りすぎ!」


 若者が。


 頭を抱える。


「一曲に全部入らない!」


「じゃあ二曲!」


「増やすな!」


 その時。


 別の町人が。


「そうだ!」


「ちのしろの歌なんだから!」


「二人を呼ぼう!」


「……」


「本人に聞けばいい!」


「それだ!」


 全員。


「「「千乃様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」


 翌朝。


 星氷神城。


 千乃の部屋。


「……?」


 千乃が。


 窓の外を見る。


「なんか」


「今日」


「町が騒がしくない?」


 真銀。


「昨日からだ」


「何してるんだろう?」


「知らない」


「……」


 その時。


 コンコン。


「千乃様ー!」


「はーい」


 扉が開く。


 町人が。


 数人。


 ぞろぞろ。


「おはようございます!」


「おはよう!」


 千乃。


「どうしたの?」


「お願いがあります!」


「何?」


「ちのしろの!」


「新曲を!」


「作らせてください!」


「……」


 千乃。


「いいよ!」


 即答。


 真銀。


「早い」


「だって」


「楽しそう!」


「……」


 町人。


「ありがとうございます!」


 真銀。


「俺は?」


「真銀様もです!」


「……やっぱり」


 千乃。


「真銀も歌おう!」


「……分かった」


「やった!」


 町人たち。


「では!」


「まず!」


「曲のテーマを!」


 千乃。


「テーマ?」


「はい!」


「ちのしろで」


「どんな歌を歌いたいですか?」


 千乃。


「うーん」


 少し考える。


「楽しい曲!」


「なるほど!」


「みんなで歌えるやつ!」


「いいですね!」


「踊れるやつ!」


「もちろん!」


「あと!」


 千乃。


 にこっ。


「聴いた人が」


「元気になる曲!」


「……」


 町人たちが。


 顔を見合わせる。


「それだ」


「それしかない」


「決まりだ!」


 若者が。


 紙に書く。


『元気』


『楽しい』


『みんなで歌える』


『踊れる』


『星』


「星?」


 千乃。


「星霜王国だから!」


「なるほど!」


 真銀。


「……」


「何だ?」


「お前」


「本当に」


「こういうの好きだな」


「うん!」


「即答……」


 町人。


「真銀様は?」


「……」


 真銀。


 少し考える。


「千乃が楽しそうなら」


「それでいい」


「……」


 千乃。


「……」


 町人。


「……」


「……」


「……尊い」


「何が?」


「何でもありません!」


 その日の午後。


 集会所。


 作曲会議。


「まずイントロ!」


「星の音!」


「どうやって?」


「魔法で!」


「魔法便利すぎない?」


 若者が。


 楽器を持つ。


「じゃあ」


「試してみます」


 ぽろん。


 ぽろん。


 優しい音。


「……」


 千乃。


「いい!」


「本当ですか?」


「うん!」


「じゃあ」


 少しテンポを上げる。


 ぽろん。


 ぽろん。


 ぽろん。


「もっと明るく!」


 千乃が言う。


「こう?」


 ぽろん。


 ぽろろん。


「そう!」


 千乃。


 手を叩く。


「それ!」


 真銀。


「……」


「何だ?」


「千乃」


「うん?」


「完全に」


「プロデューサーになってるぞ」


「え?」


「指示が具体的だ」


「だって楽しいから!」


 町人たち。


「千乃様!」


「もう一度!」


「ここ!」


「もっと跳ねる感じ!」


「はい!」


 若者。


「……」


「俺」


「作曲家なのに」


「千乃様に使われてる……」


「いいじゃん!」


「よくない!」


 真銀。


「諦めろ」


「真銀様!?」


 そして。


 数時間後。


 一曲の。


 仮曲が。


 完成した。


「……」


 若者。


「できました」


「おお……!」


 町人たち。


 楽器を鳴らす。


 明るい旋律。


 星が流れるような音。


 そして。


 最後には。


 二人で歌える。


 少しだけ。


 大きな盛り上がり。


「……」


 千乃。


「好き!」


「早い」


「すごく好き!」


 真銀。


「……」


「俺も」


「いいと思う」


 千乃。


「やった!」


 町人たち。


「では!」


「次!」


「歌詞です!」


「歌詞!」


 千乃。


「私」


「書いていい?」


 町人。


「もちろんです!」


 真銀。


「……」


「大丈夫か?」


「何が?」


「お前」


「厨二病になるだろ」


「……」


 千乃。


「ならないよ」


「本当か?」


「うん!」


「……」


 千乃。


 紙を。


 じっと見る。


「……」


「……」


「……」


 そして。


 ペンを。


 持った。


「……」


 最初の一行。


「……」


「『星の下で』」


 町人。


「いい!」


「普通だ!」


「千乃様が普通の歌詞を書いてる!」


「失礼じゃない!?」


 千乃。


「次!」


 さらさら。


「『みんなで笑おう』」


「いい!」


「次!」


 さらさら。


「『今日も一緒に』」


 真銀。


「……」


 千乃。


「どう?」


「いいと思う」


「ほんと?」


「ああ」


 千乃。


「じゃあ」


「もっと書く!」


 町人たち。


「お願いします!」


 こうして。


 星霜王国。


 城下町では。


 毎日のように。


 新曲制作が。


 行われることになった。


「ここもっと明るく!」


「はい!」


「ここでジャンプ!」


「はい!」


「真銀はもっと笑って!」


「……努力する」


「また努力するって言った!」


「何でそこだけ拾うんだ」


 そして。


 その日の夕方。


 町の掲示板に。


 一枚の紙が。


 貼られた。


『ちのしろ』


『新曲制作中!』


『近日公開予定!』


 町人たち。


「おおおおおおお!」


「楽しみだ!」


「次は何の曲だ!?」


「絶対盛り上がる!」


「振り付けも考えよう!」


「衣装も!」


「また!?」


 真銀。


「……」


 千乃。


「……」


 千乃。


 掲示板を見る。


「……」


 にこっ。


「楽しみ!」


 真銀。


「お前」


「もう完全に」


「アイドル側だな」


「うん!」


 即答。


 その夜。


 星霜王国の城下町には。


 まだ完成していない。


 一曲の歌が。


 少しずつ。


 形になっていった。


 そして。


 誰も知らなかった。


 この歌が。


 後に。


 星霜王国中の人々に。


 歌われることになるとは。


 もちろん。


 真銀だけは。


 少し。


 嫌な予感がしていた。


「……」


「また」


「踊るのか」


 千乃。


「踊る!」


「即答か……」


 ちのしろ。


 第二章。


 新曲制作編。


 始動。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。