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魔王との戦い

 鬼月姫が地面を蹴った。


 瞬間。


 姿が消えた。


「速い!」


 カイルが叫ぶ。


 次の瞬間、真銀の目の前に鬼月姫が現れる。


「っ!」


 真銀が剣を構え、受け止める。


 ガァンッ!!


 凄まじい衝撃。


 真銀の身体が後ろへ押し込まれる。


 だが、傷はない。


「……?」


 鬼月姫が僅かに目を細める。


 真銀は剣を握り直した。


「ユラ!」


「はい、主」


「術者命代は?」


「正常に機能しています」


 ユラの声が響く。


「現在、主への攻撃による影響はすべて制作者へ転送されています」


「……千乃に」


「はい」


 真銀の表情が険しくなる。


「じゃあ、絶対に無茶するな!」


「主?」


「俺たちが傷つけば、千乃が傷つく!」


 その言葉に。


 鬼月姫の動きが、一瞬だけ止まった。


「……」


 紅い瞳が揺れる。


 だが。


「排除……」


 小さく呟く。


「……しないと」


 再び拳が振り抜かれる。


「くっ!」


 真銀が受け流す。


 ララが横から飛び込んだ。


「千乃!」


 鬼月姫が振り向く。


 ララの攻撃を避ける。


 その隙にライが駆ける。


 アイシィも魔力を放つ。


 カイルが剣を構えた。


「今だ!」


 六人が一斉に動く。


 だが。


 鬼月姫は、それらすべてを紙一重でかわしていく。


「速すぎる……!」


 カイルが驚愕する。


「魔王より強いって、本当だったのかよ!」


 鬼月姫が空中へ跳ぶ。


 巨大な黒翼が広がった。


「……!」


 真銀が見上げる。


 漆黒の翼。


 紅い瞳。


 白い髪が宙で揺れる。


 その姿は、かつての千乃とはまるで違う。


 それでも。


 真銀には分かる。


「……千乃」


 鬼月姫の動きが止まった。


「俺は、お前を攻撃したくない」


「……」


「でも、お前を置いて帰るつもりもない」


 鬼月姫は何も答えない。


 ただ、拳を握る。


 そして。


 真銀へ向かって急降下した。


「主!」


 ユラが叫ぶ。


 真銀も迎え撃つ。


 再び、二人の力がぶつかる。


 その瞬間。


 鬼月姫の表情が僅かに歪んだ。


「……っ」


 胸元へ手を当てる。


 何かを感じたように。


「どうした、千乃!?」


 真銀が叫ぶ。


 鬼月姫は答えない。


 けれど。


 懐の簪を、無意識に握りしめていた。


 そしてもう片方の手は。


 腕に嵌められた腕輪を覆っている。


「……なんで」


 小さな声。


「……なんで、苦しいの」


 真銀の目が見開かれる。


「千乃……?」


 鬼月姫は俯く。


 何かを思い出そうとしているように。


 けれど、その瞬間。


「鬼月姫!!」


 魔王の声が響いた。


「侵入者を排除しろ!」


「……!」


 鬼月姫の瞳から、再び光が消える。


「排除……」


 翼が大きく広がる。


 真銀が剣を構え直す。


 ララ、ライ、アイシィ、カイルもそれぞれ身構えた。


 ユラが告げる。


「主」


「ああ」


「制作者への負荷が上昇しています」


「……分かった」


 真銀は鬼月姫を見つめる。


「だったら、これ以上千乃に負担をかけさせない」


 剣を握る。


「俺たちは、千乃を傷つけずに勝つ」


 鬼月姫が翼を広げる。


 そして。


 再び、二人の距離が一気に縮まった。


 鬼月姫が、再び真銀へ向かって飛び込もうとした。


 その瞬間。


「待て」


 魔王の声が、謁見の間に響いた。


 鬼月姫の動きが止まる。


「……?」


 真銀たちも一斉に魔王を見る。


 魔王は玉座から立ち上がり、静かに笑った。


「お前たちに、一つ教えてやろう」


「……何を」


 真銀が警戒する。


 魔王は鬼月姫を見る。


「鬼月姫に施した暗示」


「……!」


 真銀の目が見開かれる。


「暗示……?」


 ユラも反応する。


「そのような情報は、これまで確認できていません」


「当然だ」


 魔王は淡々と答える。


「私が意図的に隠していたのだからな」


 鬼月姫は黙っている。


 魔王が続ける。


「今のお前たちは、鬼月姫を救おうとしている」


「ああ」


「ならば、簡単な話だ」


 魔王が指を上げる。


「**私を倒せばいい**」


「……!」


「私を倒せば、鬼月姫に施した暗示は解ける」


 謁見の間が静まり返る。


「……本当なのか?」


 真銀が問う。


「疑うか?」


「当然だ」


 真銀は剣を構えたまま答える。


「お前の言葉を、そのまま信じられるわけがない」


「ならば確かめればいい」


 魔王は笑う。


「私を倒せば、すべて分かる」


 ララが唸る。


「……なんか怪しい」


 ライも魔王を睨む。


「罠の可能性が高いな」


 アイシィも頷く。


「ですが……」


 ユラが言葉を続ける。


「魔王の発言に、虚偽の兆候は確認できません」


「……!」


 真銀が振り返る。


「本当か?」


「はい、主」


 ユラは鬼月姫を見る。


「少なくとも、魔王は事実を述べている可能性が高いです」


 真銀は拳を握った。


 そして、鬼月姫を見る。


 彼女は何も言わない。


 ただ、静かに立っている。


 懐には簪。


 腕には腕輪。


 そして、その瞳には。


 ほんの僅かに、迷いがあった。


「……千乃」


 真銀が呼びかける。


 鬼月姫の視線が、真銀へ向く。


「待ってろ」


 真銀は魔王を見据える。


「お前を倒す」


 魔王が笑う。


「来るがいい」


 その瞬間。


 鬼月姫の身体が、僅かに揺れた。


「……」


 そして。


 彼女の手が、無意識に腕輪へ触れた。


 指先が、腕輪をなぞる。


「……」


 何かを思い出そうとしている。


 けれど。


「鬼月姫」


 魔王の声が響く。


「行け」


「……」


 鬼月姫がゆっくりと顔を上げる。


 紅い瞳が、真銀を捉える。


 そのまま。


 一歩。


 前へ。


「……制作者」


 ユラが小さく呟く。


「どうした?」


「魔力反応が不安定です」


「……やっぱり」


 真銀は剣を握る。


 だが、その時。


「待て」


 カイルが前へ出た。


「……カイル?」


 真銀が怪訝な顔をする。


 カイルは。


 ゆっくりと。


 髪をかき上げた。


「ここは……」


 謁見の間が静まり返る。


「俺の出番だ」


「…………」


 全員が固まった。


 カイルは胸に手を当てる。


「魔王」


「……なんだ」


「そして鬼月姫」


 キメ顔。


「さらに、俺の仲間たちよ」


 誰も返事をしない。


「よく聞いてほしい」


 カイルが一歩踏み出す。


「この俺、カイルは――」


 髪をかき上げる。


「イケメンだ」


「…………」


「そして勇者だ」


「…………」


「さらに言えば、今日の俺はいつも以上にイケている」


 シーン。


 魔王城が。


 完全に。


 **シーン。**


 風すら止まったような静寂。


 ララが小声で言う。


「……カイル、どうしたの?」


「分からない」


 ライも真顔。


「何か始まったな」


 アイシィが困惑する。


「止めたほうがいいのでしょうか……」


「いや」


 ユラが淡々と答える。


「おそらく今止めると、さらに長くなります」


「そんな……」


 カイルは続ける。


「俺はこれまで、数多くの戦場を駆け抜けてきた」


「……」


「数多くの魔物を倒し」


「……」


「数多くの人々を救い」


「……」


「そして数多くの人々が、俺の姿を見てこう言った」


 カイルが目を閉じる。


「『なんて格好いい勇者なんだ』と」


「言ってないぞ」


 真銀が即答。


「黙ってろ真銀!」


「お前が始めたんだろ!」


「今、俺は重要な話をしている!」


「魔王との戦いより!?」


「もちろんだ!」


 カイルは胸を張った。


「俺の美しさは魔王をも凌駕する!」


 魔王のこめかみに、僅かに青筋が浮かぶ。


「……」


 ララが耳を伏せる。


「魔王、怒ってるよ」


「そりゃ怒るだろ」


 ライが呟く。


 しかしカイルは止まらない。


「見よ! この金色の髪!」


 サッ。


 風などないのに、髪がいい感じになびく。


「見よ! この鮮やかな青い瞳!」


 キリッ。


「見よ! この白銀の鎧!」


 キラッ。


「そして!」


 カイルが勇者の剣を抜く。


「この完璧なる剣技!」


「……」


「俺はカイル!」


 声が謁見の間いっぱいに響く。


「イケメンの勇者、カイルだぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ――シーン。


 魔王城が。


 また。


 **シーン。**


 誰も何も言わない。


 カイルだけが満足そうに頷いた。


「……ふっ」


「……」


「どうだ?」


 誰も答えない。


「感動しただろう?」


「してない」


 真銀。


「してない」


 ライ。


「してません」


 アイシィ。


「してないよ!」


 ララ。


「していません」


 ユラ。


「全員ひどくないか!?」


 その瞬間。


「……うるさい」


 鬼月姫が呟いた。


 カイルが振り返る。


「……え?」


「さっきから……」


 鬼月姫の眉が僅かに寄る。


「うるさい」


「…………」


 カイルが固まった。


「……俺が?」


「うん」


「……」


 数秒。


 カイルが胸に手を当てた。


「……まさか」


 鬼月姫を見る。


「この俺の美声が?」


「うるさい」


「俺の完璧な自己紹介が?」


「うるさい」


「俺の華麗なる勇者アピールが?」


「……うるさい」


 カイルが膝をついた。


「三連撃だと……!?」


 ララが吹き出す。


「ぷっ……!」


 ライも顔を逸らす。


 アイシィの肩が震える。


 真銀は額を押さえた。


「……カイル」


「なんだ」


「お前、続けろ」


「よいのか?!」


「千乃の気を引いてる」


「……!」


 真銀が鬼月姫を見る。


 確かに。


 鬼月姫は完全にカイルへ意識を向けている。


 その瞳から。


 ほんの少し。


 魔王の命令への集中が途切れていた。


「……そういうことか」


 カイルが静かに呟く。


 鬼月姫はカイルを見つめている。


「……なんなの、お前」


「俺はカイル!」


「……」


「イケメンの勇者、カイルだ!」


「それはもう聞いた。このおまけが。」


「おまけだと?!俺は勇者だ!」


 鬼月姫の声が、ほんの少しだけ苛立っている。


 だが。


 その瞬間。


 真銀は動いた。


「……今だ」


 右手を前へ突き出す。


「我が求めるは、ただ一つ」


 銀色の魔法陣が展開される。


 幾重にも。


 さらにその奥へ。


 新たな魔法陣が浮かび上がる。


「斬るべきは肉体ではない」


 光が集まる。


「斬るべきは魂でもない」


 光が一本の刃へ変わっていく。


「斬るべきは――」


 真銀の瞳が、鬼月姫を捉える。


「偽りの支配!」


 銀色の剣が完成する。


 刀身には無数の文字が浮かび上がっていた。


「我が意志!」


 さらに魔力が膨れ上がる。


「我が願い!」


 魔法陣が砕け、光が剣へ収束する。


「我が大切な者を取り戻すために!」


 真銀が剣を握り締める。


「――すべてを断ち切れ!!」


 鬼月姫が振り返った。


「……!」


 だが。


 もう遅い。


 真銀が一気に距離を詰める。


「千乃!!」


 鬼月姫が拳を振り抜く。


 真銀は紙一重でかわした。


 そして。


 銀色の剣を。


 鬼月姫の胸へ突き立てる。


 ドンッ!!


「……っ!」


 鬼月姫の身体が僅かに揺れる。


 しかし。


 傷はない。


 剣が触れた場所から、黒い魔力が噴き出した。


「……なに……これ……」


 鬼月姫が胸元を見る。


 黒い鎖のようなものが、次々と身体から抜けていく。


「暗示だ!」


 真銀が叫ぶ。


「お前を傷つけるための剣じゃない!」


 刀身が強く輝く。


「その暗示だけを――」


 バキッ。


 何かが砕ける音がした。


「――断ち切る!!」


 眩い銀光が、謁見の間を包み込んだ。


「……っ!」


 鬼月姫の身体から、黒い魔力が次々と噴き出していく。


 まるで、身体に絡みついていた見えない鎖が、一本ずつ砕けていくようだった。


 バキッ。


 バキッ。


 バキィィン!!


「ぐっ……!」


 千乃が胸元を押さえる。


「千乃!」


 真銀が剣を握ったまま叫ぶ。


「もう少しだ!」


「……真……銀……」


 鬼月姫の声が震える。


 その瞬間。


 魔王が立ち上がった。


「やめろ」


 低い声。


 だが、真銀は止まらない。


断界(だんかい)天ノ叢雲(あめのむらくもの)(つるぎ)!」


 剣がさらに輝く。


「鬼月姫!」


 魔王が叫ぶ。


「私の命令を聞け!」


「……!」


 千乃の身体が大きく震える。


「侵入者を……」


 黒い魔力が再び千乃へ戻ろうとする。


「排除……」


「千乃!」


 真銀が叫ぶ。


「俺を見ろ!」


「……」


「俺はここにいる!」


 千乃の紅い瞳が、ゆっくりと真銀へ向く。


「……」


「お前が何になってもいい」


 真銀の声は、震えていた。


「鬼月姫でも、鬼でも、神でも……」


 一歩、近づく。


「俺にとっては、お前は千乃だ」


「……」


「俺の妻だろ」


 千乃の瞳が大きく揺れた。


「……つま……」


 その言葉が、胸の奥へ落ちていく。


 何かが。


 遠い記憶が。


 ひとつ。


 またひとつ。


 浮かび上がる。


 笑っている自分。


 真銀と並んで歩いている自分。


 お揃いの腕輪。


 そして。


 簪を贈られた日の記憶。


「……」


 千乃の手が、懐へ伸びる。


 簪を握る。


「……これ……」


 ぽつり。


「……真銀が……くれた……」


「そうだ」


 真銀が笑う。


「俺があげた」


 黒い魔力が、激しく暴れ始める。


「黙れ!!」


 魔王が叫ぶ。


「鬼月姫! それは偽りだ!」


 千乃が魔王を見る。


 そして。


 初めて。


 明確な嫌悪を浮かべた。


「……違う」


「何?」


「これは……偽りじゃない」


 腕輪を見る。


 簪を見る。


「……私のもの」


 魔王が目を見開く。


「……千乃」


 真銀が呟く。


 千乃はゆっくり顔を上げる。


「……真銀」


「……!」


 今度は。


 はっきりと。


 その名前を呼んだ。


「俺はここにいる」


「……うん」


 千乃の声が、少しずつ元に戻っていく。


「……ずっと……探してた気がする」


 バキィィィン!!


 最後の黒い鎖が砕け散った。


 同時に。


 鬼月姫の黒い翼が大きく揺れる。


「……っ!」


 千乃がその場に崩れそうになる。


 真銀がすぐに支える。


「千乃!」


「……真銀……?」


「ああ」


「……私……」


 千乃は自分の姿を見る。


 白い髪。


 紅い瞳。


 黒い翼。


 鬼の角。


「……鬼月姫……」


 そう呟いたあと。


 真銀を見る。


「……私、戻れたの?」


「戻った」


 真銀は答える。


「ちゃんと戻ってきた」


「……」


 千乃の目に、少しずつ光が戻っていく。


 その時。


「感動の再会中、悪いが」


 魔王が口を開いた。


「まだ私は倒されていないぞ」


 全員が魔王を見る。


 カイルが剣を構える。


「そうだったな!」


 真銀も立ち上がる。


 千乃は真銀の隣に立った。


 そして。


 魔王を見据える。


 紅い瞳に、今度は確かな意思が宿っていた。


「……魔王」


「……」


「私を……操ったね」


 魔王が笑う。


「そうだ」


 千乃の拳が、ぎゅっと握られる。


「……じゃあ」


 黒い翼が大きく広がる。


「覚悟して」


 真銀が隣で剣を構える。


 ララ、ライ、アイシィも並ぶ。


 カイルが一歩前へ出る。


「そして最後に!」


 全員が振り返る。


「俺が魔王を――」


「カイル」


 真銀が遮った。


「今度は黙ってろ」


「なぜだ!?」


 千乃が。


 ほんの少しだけ。


 笑った。


「……相変わらずだね」


 その声を聞いた真銀も。


 小さく笑った。


 魔王が玉座から立ち上がる。


 黒と紫の魔力が、謁見の間を埋め尽くしていく。


「……ならば」


 魔王が両手を広げる。


「二人まとめて、ここで終わらせてやろう」


 真銀が剣を構える。


 千乃も、その隣に立つ。


 ふと。


 二人の視線が交わった。


「……千乃」


「うん」


「一人じゃ無理な魔法がある」


「……え?」


「二人なら使える」


 千乃の紅い瞳が輝く。


「……それって」


「ああ」


 真銀が頷く。


「俺たちの魔法だ」


 千乃が、にやりと笑った。


「……いいね」


 真銀が右手を前へ。


 千乃が左手を前へ。


 それぞれの魔力が重なっていく。


 白銀の魔法陣。


 紅黒の魔法陣。


 二つが交差し、巨大な円環を形成する。


「なんだ……?」


 魔王の表情が初めて曇る。


 ユラが解析する。


「魔力構造、確認できません」


「え?」


「私にも理解不能です」


 カイルが驚く。


「ユラにも分からない魔法だと!?」


「はい」


 ララが首を傾げる。


「じゃあ、何の魔法なの?」


「……分かりません」


 ライが呟く。


「嫌な予感しかしない」


 アイシィも一歩下がる。


「私もです」


 真銀が静かに口を開いた。


「始めるぞ、千乃」


「うん!」


 二人が同時に構える。


 真銀が言う。


「我が願いは――」


 千乃が続ける。


「**漆黒の終焉を(ノワール・エンド)超越せし(・トランセンデンス・)星辰の(アストラル)審判者(・ジャッジメント)ッ!!**」


「……」


 カイルが固まる。


 真銀が続ける。


「二つの力を一つに」


 千乃。


「**神域と魔境(しんいきとまきょう)相反する二つ(あいはんするふたつ)理を束ねし(ことわりをたばねし)究極(アルティメット)禁忌(プロヒビション)!!**」


「世界の境界を越えて」


「**因果律(いんがりつ)すら跪かせる、我らが魂の契約!!**」


「俺たちの力を」


「**今ここに顕現(けんげん)せよ!! 我が右手に宿りし終焉の銀河よ!!**」


 真銀。


「……魔王を倒す」


 千乃。


「**天上天下ェェェェェェェ!! 森羅万象ォォォォォ!!全部まとめて私たちの前にひれ伏せぇぇぇぇぇ!!**」


 カイルが思わず口を挟む。


「最後だけ急に雑じゃないか!?」


「黙ってろ!」


 真銀と千乃が同時に叫ぶ。


 魔法陣が轟音を上げる。


 白銀と紅黒の光が絡み合う。


 そして。


 二人が最後の言葉を交互に紡ぐ。


「俺の力を」


「**私の魂を!!**」


「二人の想いを」


「**この世界そのものへ刻み込め!!**」


「これで終わりだ」


「**さあ刮目(かつもく)せよ!! これが私たちの――**」


 二人が手を重ねる。


「最終魔法」


「**『神魔双星(ツインアポカリプス)終焉天星(ラスト・ノヴァ)ッッッ!!!!!』**」


 瞬間。


 世界が白く染まった。


 巨大な魔法陣が魔王の足元に出現する。


 その中心から、白銀と紅色の巨大な光が螺旋を描いて上昇する。


「ぐっ……!」


 魔王が魔力を放つ。


 黒紫の奔流が光へぶつかる。


 だが。


 押し返される。


「馬鹿な……!」


 魔王の表情が崩れる。


「私が……押し負けるだと……!?」


 真銀が千乃を見る。


「まだだ」


「うん!」


 二人が同時に力を込める。


「行くぞ!」


「ぶっ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


 ズドォォォォォォン!!


 光が爆発した。


 魔王城全体が激しく揺れる。


 黒紫の魔力が消し飛ぶ。


 魔王の身体が光に飲み込まれていく。


「この……私が……!」


 最後に。


 魔王の姿が完全に光の中へ消えた。


 静寂。


 魔王城に、煙だけが漂う。


 真銀は息を吐いた。


「……終わったな」


「うん」


 千乃が頷く。


 そして。


「……ねえ、真銀」


「ん?」


「今の魔法、名前どう?」


「……長すぎる」


「えー!?」


「あと後半ほとんど千乃の厨二病じゃないか」


「だって私たちの共同魔法だよ!?」


「俺のまともな部分、最後の『魔王を倒す』だけなんだけど」


「そこがいいんじゃん!」


「よくない」


 その横で。


 カイルが真顔で呟いた。


「……俺も次は、ああいう魔法を使いたい」


 ユラが即答する。


「無理だと思います」


「なぜ!?」


「主と制作者の二人で成立する魔法ですので」


「……」


 カイルが胸を張る。


「なら俺も誰かと組めばいい!」


 ララが首を傾げる。


「誰と?」


「……」


 カイルが黙った。


 魔王城に。


 再び。


 静寂が訪れた。

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