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第339話 アヤメさんは優しい魔女ですよ

評価やブックマーク等、応援して下さった全ての方、ありがとうございます。


 今日も元気にダンジョンへ行こうとしていたら、珍しい人から電話があった。


 僕は皆に電話に出る事を伝えてから電話をとった。



「もしもし、三日月です」


「おはようさん、館元だ」


「館元さんですか?」


「おいおい、嘘だろ? サラリーマンさんだよ?」


「あはは、冗談ですよサラリーマンさん♪」


「まったく、スッカリその呼び方で定着させやがって」


「僕に直接電話してくるなんて珍しいじゃないですか? ひょっとして、飲みのお誘いですか?」


「まあ、なんつーか頼み事だ」


「ほーほー、高くつくかもですよ?」


「多少借りが増えたところで、もう誤差だろう?」


「あれっ? 僕、結構感謝されてます?」


「様付けで呼んでやろうか?」


「目上の人から様付けされたら、こそばゆいですよ?」


「どこが目上なんだよ、こっちの方が身体が痒くなるわ」


「年上、年上、メッチャ年上です」


「何度も年上って言うなよ? おっさんなのは自覚してるからよ」


「あはは、頼み事って女性ですか? 100人程で良いです?」


「ブッ!? 怖い事言うなよ、トリコに刺されるわ」


「OLさんなら大丈夫と思うんですけど、じゃ頼み事ってなんです?」


「ああ、俺のツレに会ってくれねえか?」


「あれれ、僕は彼女が沢山いるんですけど?」


「分かってんよ、誰が三日月に女紹介できるんだよ? アヤメさん達に殺されるわ」


「って事は、男性ですか?」


「言っとくがな、俺に女性のツレなんて居ないからな?」


「悲しい事をサラッと言いましたね?」


「俺も今、そう思ったよ・・・」


「でっ、その友人さんって、僕になんの用事なんですか?」


「さあな、昨日一緒に飲んでたんだが、三日月に会わせてくれって、うるせえんだわ」


「ふむふむ、サラリーマンさんが僕の事を言う訳無いから、最初から僕が知り合いって、知ってた人って事になりますね?」


「賢い子供は嫌いだよって言うとこか?」


「あはは、それ知ってます♪」


「まあ、一応偉いさんだからな、俺との繋がりぐらいはバレてんだろ」


「サラリーマンさんの友人なのに、偉いさんですか?」


「なんだよ? 別に不思議じゃねえだろ、偉いさんだが気さくで良い奴だからな?」


「横柄だったら殺しちゃうかもですよ?」


「・・・できたら殺さないでくれると助かる。飲み友達が減っちまうからな」


「一応善処しますけど、一つ貸しですよ?」


「脅迫すんなって」


「なんで脅迫になるんですか? 唯の貸しですからね」


「わあった、わあった、そいつに払わすからドンっと来いだ」


「可哀そうに?」


「可哀そうって言っちまってるぞ?」


「ホワイトジョークですよ?」


「真っ黒だよ! 言っとくが断っても良いからな? 俺は会わせてくれって頼まれただけだからよ」


「了解です。サラリーマンさんからの、お願いなんですから無下にはできませんね」


「助かる。それによ、気が合うと思うぞ?」


「僕、基本的に偉い人は苦手ですよ?」


「会えば分かるさ、またダンジョンへ行くんだろ? メール入れとくから返信しといてくれよ」


「僕は勤勉ですからね。えっへん!」


「ダンジョンマニアの間違いだろ?」


「そうとも言うかもです」


「じゃあな、ありがとよ」


「いえいえ」



 僕はサラリーマンさんからの電話を切ると、アヤメさん達も大体会話の内容を把握しているようだ。



「んふふ、護衛は要りそう?」×アヤメ


「僕はVIPじゃないですよ?」


「なに言ってんのよ? 世界一のVIPじゃない♪」×ナギサ


「フフ~ 世界一強いVIPだけどね~」×ノノ


「ですが、私達は行かない方が良いかもですね?」×リラ


「イケナイとこ行く気なのかな?」×ツドイ


「なんの事か、分からないですね?」


「フフ、向こうも頼み事をするなら、接待するような場所を選ぶでしょうから」


「なるほど・・・」


「なーに期待してんのよ?」×アヤメ


「あっ! そろそろソフィアさん達やアリーシャさん達を送って行かないとー」


「ヨウ君、誤魔化すの下手過ぎ♪」×ナギサ



 それからソフィアさん達やアリーシャさん達からも突かれながら送っていき、僕達はシュアンさん達と中国へ行くことにした。


 とりあえず、シュアンさん達とギルドへ立ち寄ると、何故か大勢の冒険者で溢れていた。



「今日は混んでるわね?」×シュアン


「なんかあったのかもな、ヤン部長も今日は休んでるだろうし、ダンジョンに行くか?」×ソヒョン


「待って、ヤン部長も居るみたいよ」×フィ


「昨日は徹夜だったのに、タフね~」×ソンイ


「仕事はキッチリする人だからね」×テユン


「・・・って言うか、混んでる原因ってヤン部長じゃない?」×ギュリ



 ギュリさんが言う通り、ヤン部長が受付に顔を出したら集まっていた男性冒険者達が一斉に騒ぎ出した。



「い、居たぞ、あの女性だ」


「なんて美人なんだよ?」


「最近は、ギルドに美人が多く集まるんだよ♪」


「シュアン達だろ? 確かに『至宝』って呼ばれるだけはあるよな」


「それに、SSランク冒険者の女性達もだろ?」


「彼女達はテレビで見るより綺麗だったからな、驚いたぜ」


「今は、それよりも超絶美人なギルド職員だろ?」


「あんな美人の職員がギルドに居たか?」


「そんなの、どうでも良いだろ? とりあえず俺は求婚する」


「馬鹿野郎! 俺が先だ!」


「てめえ、殴り飛ばしてやろうか?」



 どうやら、本当にヤン部長目当てに男性冒険者が集まって来ている様だ。


 僕としては、その気持ちは分かるな~ ヤン部長ピークベリーで若返ったのに妖艶とも言える色っぽさがそのままなんだもの。


 それにしても暴動がおこりそうなぐらいになってるのには驚くな。



「にひひ、綺麗になり過ぎちゃったかな?」×ナギサ


「フフ、少し悪い事をしてしまいましたね」×リラ


「あっ! そろそろキレそうよ?」×シュアン


「・・・ヤバいよな」×ソヒョン


「そなの?」×ツドイ


「うん、かなり怒ってるよー」×テユン


【フフ、ウフフフフ・・・やかましい男共!!!!!


付き合えだ? 結婚しろだ? 一目惚れだと?


分かり易く言ってやるから、よく聞きやがれ!


私は女性しか愛さない! 私は女性しか愛せない!


ピーチク、パーチク囀られても、一切無駄だぁああ!


分かったかぁあああああああああああ!!!!!】×ヤン部長



 大勢集まった男性冒険者や受付嬢達は、ヤン部長の叫び声で固まっているようだ。


 しかし、清々しいまでのカミングアウトに惚れ惚れしてしまう♪

 


「・・・・・・・・・・」×男性冒険者達


「そ、そんな・・・」


「ほ、本当に一目惚れだったのに・・・」


「そりゃないぜ・・・」


「ハハ、言ってやった・・・言ってやったぞ。もうどうにでもなりやがれ」×ヤン部長


「格好良い~~~!!!!!」×アヤメ達


「ヤン部長、最高~~~!!!!!」×シュアン達



 パチパチパチパチパチパチ!!!!!



「なっ! お前達聞いてたのか?」



 ヤン部長は、恥ずかしいのか両手で顔を隠して俯いてしまった。


 でも、見事な啖呵だったので、僕も少し興奮してしまった。


 どうやら、本当に吹っ切れたんだなと思うと、嬉しく思う。


 周りに居た受付嬢さん達も、全員ヤン部長に拍手を送っている。



「ヤン部長ー! 格好良かったですよー! また帰りに来ますねー」



 僕はヤン部長に、それだけを言い残しダンジョンへ向かう事にした。


 アヤメさん達やシュアンさん達も、良い笑顔をしているので今日のダンジョン探索は捗りそうだ♪



「ん~ やっぱり、少し惜しい事をしたわね?」×アヤメ


「まだ、遅くないかも?」×ツドイ


「駄目ですよ? 僕達は応援あるのみです」


「ヨウ君も残念だったんじゃないの?」×シュアン


「あはは、でもヤン部長の自分を貫く生き方を見て、本当に格好良いと思っちゃったんですよ」


「んふふ、そうね分かるわ」×ナギサ


「さて、僕達はダンジョン探索を頑張りますか」


「ヤー♪」×全員



 僕達は、シュアンさん達と共に北京上級ダンジョンへ向かった。


 今日も地下10階からスタートし、シュアンさん達の訓練を兼ねながらドンドン先へと進んで行った。


 そして、地下20階のボスを倒し、新たなフィールドに足を踏み入れた。


 そこは、どうやって形成されたのか、不思議な所だった。


 その風景は険しい奇石のような山々、美しい渓流、生い茂る森、そして大型の岩窟といった幻想的な自然の魅力に溢れていた。



「うわ~ 凄い所ね」×アヤメ


「ですね~ 奇石地帯ってとこですか?」


「どうやったら、あんな奇妙な形の山になるんだろ?」×ナギサ


「私達も行った事ないですけど、中国には実際にこういうとこがあるみたいですよ?」×ソンイ


「そうなんだ? あんな所怖くて登れないよね」×ツドイ


「私達みたいに空でも飛べない限り無理よ?」×ノノ


「フフ、良い物がありそうですね」×リラ


「お宝を探しながら進みますかー♪」


「ヤー♪」×全員



 僕達は高く奇石のような山を見上げながら進んで行くと、直ぐに初見の魔物を発見した。


 って、言ってもスライムなんだけど、その大きさが半端じゃ無かった。



「ひゃ~ 全然可愛くないわね?」×ギュリ


「あれだけ大きいとね~♪」×テユン


「確かに、あんなのがポンポン跳ねてたら怖いわよ」×フィ


「魔法じゃねえと倒せそうにないな?」×ソヒョン


「以前の私達なら逃げるしかない魔物ね」×シュアン


「魔法の練習もたっぷりしといて良かったわね」×ソンイ


「下手に斬ったら分裂しちゃいそうだから、魔法にしときましょっか」


「んふふ、私の出番ね?」×アヤメ


「やりすぎちゃ駄目よ?」×ナギサ


「分かってるわ、私をなんだと思ってるのよ?」


「業火の魔女?」×ツドイ


「消滅の魔女の方が良いんじゃない?」×ノノ


「殲滅の魔女と言うのは?」×リラ


「誰も生きてらんないから死の魔女とか?」×ナギサ



 チラッとシュアンさん達を見ると、笑顔が引き吊ってガクガクと震えていた。



「アヤメさん、アヤメさん、シュアンさん達が怯えてますから?」


「あのね~ 私の事を誤解し過ぎでしょ?」


「す、すみません!」×シュアン達


「だから、謝られたら余計に私が怖いみたいじゃない? ちゃんと見てなさいよ」



 アヤメさんは、そう告げると魔力を練り始めたようだ。


 普段は即座に放つ魔法を、ここまで時間を掛けることに皆が不安になっている。



「ちょ、ちょっとアヤメ、冗談だから無茶しちゃ駄目よ?」×ナギサ


「んふふ、今一度、私の完璧な魔力操作を見せてあげるわ♪」



 僕は<魔力感知>に意識を注いでいると、どうやらアヤメさんは広範囲の魔物に照準を合わせているようだ。


 無数にいるビッグスライムに魔力が集まって行く。


 準備が整ったのか、アヤメさんの表情が自信に満ち溢れた輝かしい笑顔になっている。


 なんて綺麗なんだろうと、改めて見惚れてしまう。



「見なさい! <黒炎インフェルノ>!!!!!!!」



 次の瞬間! 視界に移るだけでも複数いたビッグスライムが、まるで体内から炎が溢れ出したかのように黒い炎に包まれた。


 それは、まさに一瞬! そう一瞬の出来事だった。


 巨大なスライムは黒い炎に喰い尽くされたかのように消えさっていく。


 魔物を倒した時に見える、光の粒子すら燃やし尽くしたかのように。



「うは~ 凄いや。このフロアの魔物が感知できない」


「そ、それって、この階層全ての魔物を燃やし尽くしたって事?」×ナギサ


「そうなりますね」


「・・・・・・・・・・」×全員


「あによ? 派手さは無いけど、完璧な魔力制御だったでしょ?」×アヤメ


「派手さしかないでしょーーー!!!」×ナギサ


「さっき、僕達が言ったの全部該当するかもだね」×ツドイ


「フフ、そんなに怯えなくても基本、大丈夫ですよ?」×リラ


「シュアン大丈夫? 怖かったよね? 怒らせなかったら大丈夫だからね?」×ノノ


「えっ? ちょっと涙目にならなくても良いでしょ? そんなに怖がんないでよー」×アヤメ


「す、すみません。許して下さい」×シュアン達


「だから、謝んないでよーーー」



 どうやら、今の魔法を見たシュアンさん達は、生存本能が勝手に恐怖を感じているのか身体の震えが止められないようだ。


 それからアヤメさんは、一生懸命シュアンさん達を宥め、普段の状態に戻るのに時間が掛かったけど、もう大丈夫みたいだ。



「もう、皆が私を誇張するからよ?」×アヤメ


「その誇張を、軽く超えたような?」×ツドイ


「なんでよ? スマートだったでしょ?」


「フフ、スマート過ぎたから怖かったのではないでしょうか?」×リラ


「そだよー? 考えてみて、一瞬で殺されたら怖くない?」×ノノ


「覚悟する時間もないかんね~♪」×ナギサ


「・・・結構、難しいのね」×アヤメ


「アヤメさん、アヤメさん!」


「あによ?」


「同類、同類♪」


「いやーーー! ヨウ君ほど人外じゃないものーーー!!!」


「なんでですかーーーーーーーーーー!!!!!」


「あはははは♪」×リラ・ノノ・ツドイ・ナギサ


「素直に笑えないんだが?」×ソヒョン


「ハハ、この広大な感知範囲に入ったら、何時でも殺せるってことだもんね?」×ソンイ


「私達って生かされてたんだね~」×テユン


「止めてよ。また怖くなるでしょ?」×ギュリ


「アヤメさんは、優しい。とっても優しい。絶対優しい」×フィ


「んふふ、言っとくけど私だけじゃないからね? 私達の実力は大体一緒なんだから」×アヤメ



 アヤメさんの言葉にシュアンさん達は、そっとリラさん達に目を移していく。



「ちょっとアヤメ、なんて事言うのよ?」×ナギサ


「んふふ、だって私だけ怖がられたら嫌じゃない♪」


「僕、怖くないよ」×ツドイ


「も、もちろん私もだからね?」×ノノ


「フフ、もう手遅れかと?」×リラ


「いやーーーーーーーー!!!!!」×シュアン達


「叫ばないでーーーーー!!!!!」×アヤメ達


「あはは♪」



 それからは、またシュアンさん達を宥めてダンジョン探索を再開していった。


 階層を進んで行くと、次々と初見の魔物に出会ったが、残念ながら目新しいスキルや魔法スクロールはドロップしなかった。


 地下25階に辿りついた所で、良い時間になってきたので今日は帰ることにした。


 次に来た時、北京上級ダンジョンも制覇出来るだろう。


 新たな素材は沢山集まったので、今日もヤン部長の喜ぶ顔を見れるだろう。


 僕はニコニコしながらダンジョンを出て、ギルドへ向かった。


 ギルドへ着くと、何故かまた大勢の冒険者で溢れていた。


 だが、よく見ると男性冒険者ではなく、今度は女性冒険者が多いようだ。


 また、ヤン部長が対応しているけど、何故か様子がおかしい。



「あ、あの、私ヤン部長の言葉に感動しました!


じ、実は私も女性が好きで、ずっと悩んでたんです。


でも、今朝ヤン部長の言葉を聞いてから、私の悩み何て吹っ飛びました。


私もこれからは、女性が好きだって胸を張って言う事にします」


「私もです! 今まで、なんて小さな事で悩んでたんだろうって思いました」


「私は受付嬢をしながら、ずっとヤン部長をお慕いしておりました。今朝のヤン部長の言葉に身が震える思いでした」


「私は今朝の話しを聞いて駆けつけました。ヤン部長の様な立場がある女性が立派だと思います」


「私もです!」


「あの、迷惑かもしれませんが是非、ヤン部長の御傍に居させて貰えませんか?」


「私も、お願いします」


「お願いします!」×女性達


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 私は少し混乱しているようだ・・・


いや、皆の言葉は非常に嬉しい。本当に涙が出そうだ。


私も、これだけ多くの女性達が駆けつけてくれたなんて、信じられないぐらいだ。


一体どうして、こんなことに?」


「そんなの当然じゃないですか? 同じような悩みを抱えてる女性達が今朝の話しを聞いてジッとしていられる訳がありません」


「それに、こんなにも美しい女性だとは思いませんでした」


「私もお付き合いしたいなんて言いません。少しでも近くに居させて貰えれば・・・」


「ヤン部長! 僕に名案があるんですけど?」


「み、三日月? 三日月様!」




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