第310話 面白い物は世界中に還元しないとですよね
僕達はそれからも練馬区上級ダンジョンに通って、パンチングスライムを集めていった。
今日で50個を超えたので、そろそろ良いかと思い瀧見社長に会うためギルドへ行くことにした。
ギルドに着くと、また注目を浴びてしまうが、最近は慣れてきたかもしれない。
大勢の冒険者の対応をしていたサワさんが、他の受付嬢と交代して僕達の所へ来てくれた。
「こんにちは、三日月様」×サワ
「こんにちは~」
「最近、調子はどうですか?」
「はい、お陰様で絶好調です」
「それは良かった。しかし、モテモテですね?」
「うふふ、全て三日月様のお陰です」
「忙しくないですか?」
「はい、ギルドにはイツミと交代で来てますから、以前より楽なぐらいですよ?」
「なるほど、ギルドもちゃんと考えてくれてるんですね~」
「そだそだ。武蔵は頑張ってますか?」
「はい、とっても頑張ってますよ。ギルドとしても大助かりです」
「そかそか、たまには様子を見に行っちゃおうかな」
「うふふ、きっと喜ぶと思いますよ」
「では、御案内致しますね」
「ありがとうございます」
僕達は何時ものVIPルームへ案内され部屋の中に入ると、既に瀧見社長達が待っていてくれた。
「ようこそ、三日月君」
「急に来ちゃって、すみませんです」
「あはは、三日月君なら何時来てくれても構わんよ。毎日でも来て欲しいぐらいだからね。
今日は、納品に来てくれたのかね?」
「それもあるんですけど、ちょっと良い物が手に入ったんで、お裾分けしに来たんですよ」
ガタガタガタッ!
僕がお裾分けと言っただけなのに瀧見社長達は、椅子から立ち上がり驚いているようだ。
「あはは、そんなに驚かなくても?」
「い、いや、すまない」
「フフフ、三日月君からのお土産は、何時まで経っても慣れないのでね」
「今回は、そんなに大した物じゃないですから」
「何時もそう言って、驚かされているのだがね?」
「あれ、そうでしたっけ?」
「んふふ、きっと驚きますよ?」
「やはりかね? よし、覚悟はできたよ」
「アヤメさん、ハードルが上がっちゃったじゃないですか?」
「何言ってるのよ。何時も上がったハードルを飛び越えちゃうくせに?」
「そこまでの物なのかね、あまり前振りが長いと、心臓に悪いのだが?」
「あはは、えっと、とりあえず見て貰おうかな」
僕は『パンチングスライム』を床に取り出し、見て貰う事にした。
「こ、これは?」
「えっと、これは『パンチングスライム』って言うんですけど、鑑定結果はこんな感じですね」
僕は『パンチングスライム』の説明をすると、皆興味深く聞いてくれた。
「いやはや、ダンジョンとは不思議だね、こんな物までドロップするとは」
「僕もそう思います、でもこれ中々面白いんですよ?」
「確かに、それをギルドに譲ってくれると、我々も大いに助かるよ。間違いなく未発表のアイテムだね、どれぐらいで譲ってくれるだろうか?」
「いえいえ、無償でお譲りしますよ?」
「いやいや、これはかなりの貴重品なのだろう。せめて、買い取らせてくれたまえ」
「フフ、では1兆円で如何ですか?」
「「「「ブッ!? い、1兆円?」」」」
「あはは、リラ姉が、冗談言うの珍しいじゃない?」
「フフ、もちろん、冗談です」
「ほ、本当にありそうで心臓に悪いよ?」
「あはは、本当に無償でお譲りしますよ。でも、ちょっと、お願いしたい事があるんですよ」
「・・・何でも言ってくれたまえ、大抵の事は頑張らせて貰うよ」
「そんなに身構えなくても、大したことじゃないんですが。50個ほど用意しましたから、世界中のギルドに無償で配って貰えませんか?」
「そ、それは、冗談では無いのだね?」
「もちろんです」
「願っても無い・・・いや、我々としては非常に助かるのだが。三日月君にメリットが無いのではないかね?」
「まあ、そこはギルドへの恩返しと、面白そうな事は皆で共有しようかなってとこですね」
「また、三日月君に借りができてしまうね?」
「いえいえ、もう十分ギルドからは、お世話になってますから」
「三日月君からの提供だと公表しても良いかね?」
「そこは、ギルドからにして貰えると助かります、色々詮索されるのも困るので」
「分かった。では、有難くそうさせて貰うよ」
「本当にありがとう」
「あっそうだ。50個じゃ足りないと思いますから、また追加で渡しますね」
「フフ、何処から配るか精査に困りそうだよ」
「そこは、お任せしますので」
僕達はギルマスへの用事も終わったので、今度は湯楽さんのとこに遊びに行くことにした。
そろそろ、夕方になる頃だから、仕事も終わりかもしれないけどね。
「フゥ~ 三日月君には、何時も驚かされるね?」×瀧見社長
「全くです、凄い冒険者ですね」×斗沢支部長
「最初の<鑑定>スキルの買い取りに、誠心誠意で対応して良かったですな」×岩永部長
「ああ、あの時の岩永君の意見を聞いておいて良かったと、心底思う」
「碓井君も、三日月君の事に関しては他言無用だよ」
「はい、重々承知しております」×碓井課長
「しかし、何度見ても少年の様にしか見えないのですが、実績については驚くばかりです」
「ああ、人は見掛けでは判断できない見本の様な人物だからね。
だが、同時に恐ろしい人物でもある・・・
このギルドが世界一に成れたのは、全て三日月君のお陰だ。
その事を決して忘れないようにしようじゃないか」
「「「はい」」」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
警察署に遊びに来るのも数度目になると、流石に慣れてきたのか、以前の様に怯えられる事もなくなってきた。
「湯楽さ~ん! 遊びに来ましたよ~」
「だーかーらー、刑事課に遊びにくるんじゃねえ!」
「え~ 湯楽さんの1年分ぐらいの仕事は、手伝って上げたでしょ?」
「ぐはっ! 私の1年分の仕事が・・・」
「止めなさいよ。湯楽さんが落ち込んじゃったでしょ?」
「ごめん、ごめん。悪気はなかったんだよー」
「湯楽さん、コーヒーにしましょっか」
「へーへー、分かったよ。コーヒーだな、全く刑事課にコーヒーメーカーまで置きやがって」
「サイフォン式の方が良かったかな?」
「だから、此処は喫茶店じゃねえ」
「フフ、そう言いながらも、コーヒーを淹れるのが上手くなってきましたね?」
「フフ~ とっても美味しいわ、湯楽さん」
「そろそろ、軽食も欲しいとこですね~」
「贅沢は言わないから、サンドイッチとかね~」
「警視総監さんに頼んでおこっかな?」
「参ったから。なんか用意しとくから、そんな事、警視総監に頼まないでくれ」
「なんか、催促したみたいで悪いですね~」
「ハハハ、明らかな脅し付きの催促だろうが?」
「そんな事よりも、ほらっ! これ返しとくぞ。
とんでもない物を持たしやがって、それのお陰で大変だったんだからな?」
「ああ~ 『レインボームーン』ですか、そういや1つ渡してましたね。
なにか、あったんですか?」
「なにかどころじゃねえ! 知ってて渡したんだろうが」
「ひょっとして、男性に付き纏われちゃった?」
「そんな甘いもんじゃねえ。あれは集団ストーカーだ。
顔を隠してもゾロゾロと付いて来るから、家にも帰れなかったんだぞ?
署の皆からもジロジロ見られるし、落ち着かねえんだよ」
「うはー!」×アヤメ達
「加工もしてないのに、そんなに効果あるんだ?」
「うわ~ ヤバいんじゃない?」
「何がですか?」
「ヒメちゃんが加工してアクセサリーにしたら、危険物になるかもだね」
「あ~ なるほど。それはヤバいかもですね~」
「なんか怖い話ししてるが、それの効果を上げるなんて馬鹿な真似は止めとけよ?」
「ん~ もう遅いかもですね~ 全部ヒメちゃんに渡しちゃったから」
「あ、あの有名な彫金師かよ? どうなっても知らないぞ。言っとくけどな、それの効果は異性だけじゃねえからな? 女も寄ってくるんだぞ」
「ええっ?」
「うわ~ 人間ホイホイができちゃうね?」
「男性にも効果あるのかな?」
「ん~ ヨウ君に試して貰っても、私達じゃ効果があまり分からないし?」
「えっ! なんでです?」
「僕達は、ヨウ君にベタ惚れだからさ?」
「もうツドイ。そんなにハッキリ説明しなくても良いでしょ?」
「皆さん。ケーキでも食べます?」
「あはは、ヨウ君チョロ過ぎだって♪」
「部長さんに試して貰う?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。私は既婚者なので困るのだが?」
「男性にも効果があるか分かんないですよ?」
「それでも困る。湯楽の事を見てたからな勘弁してくれ」
「ん~ それじゃあ警視総監さんに試して貰おうかな?」
「だ~ 止めろって。とんでもないことになったら、どうすんだよ」
「あはは、大袈裟だな~」
「いーや、全然分かってねえって。ダンジョンの深層階でドロップするような物が普通な訳無いだろ?」
「そう言われればそうね、私達は慣れ過ぎちゃったかな?」
「僕達でも、簡単には手に入らなかった物ですからね~」
「フフ~ 『キングレインボームーン』をヒメちゃんが加工して出来たアクセサリーって、凄そうね?」
「湯楽女王様の出来上がり!」
「私で実験するんじゃねえ!」
「あはは♪」×アヤメ達
「笑いごとじゃねえって、なんて恐ろしい奴等なんだよ・・・」
「まあ、魅力が上がるだけですからね~ もっと怖い物がありますよ?」
「ゴメンナサイ。ユルシテクダサイ!」
「もう、私達が虐めてるみたいでしょ?」
「ハハハ、自覚がねえのって怖いよな?」
「こんなの、本当に冗談レベルだよ?」
「・・・分かった。分かったから、それ以上言わないでくれ」
「あはは、じゃ何かしたいことってあります?」
「ダンジョンには行かないのかよ?」
「もう行って来ましたよ?」
「私をダンジョンに連れて行く為に、来たんじゃないのか?」
「あはは、遊びに来たって言ったじゃないですか」
「そそ、何処に行ったって良いんだよ?」
「希望が無けりゃ、お持ち帰りで良いんじゃない?」
「私はファーストフードじゃないんだが?」
「フフ、私達のクラン本部は、誰でも入れる訳じゃ無いんですよ?」
「だろうな。控えめに言っても信じられない様なとこだからな」
「褒められると嬉しいですね。えっと、驚きたいですか? 驚きたくないですか?」
「その問いかけに驚いてるよ?」
「あはははは♪」×アヤメ達
「面白いね、湯楽刑事」
「面白いような事を言ったつもりはないんだが・・・」
「とりあえず、湯楽さんのために、驚かない方法でクラン本部に行きましょか」
「また、アヤメさん達と一緒に温泉に入ってて下さい」
「あの、温泉以上に驚く事があるのが驚愕するよ?」
「まだ、序の口ですよ?」
「頭が痛くなってきたぞ?」
「分かる~♪」×アヤメ達
「結構、苦労してんだな?」
「ヨウ君と居たら、日常茶飯事だからね~」
「異議ありですー」
「んふふ、却下します」
「ブー!」
「全く可愛いのか、恐ろしいのか分かんねえよな?」
「あっ! ひょっとして褒めてくれました?」
「ちょっとだけな」
「良かったねヨウ君。一歩前進よ」
「あはは、先は長そうですけどね」
僕は<亜空界>の温泉に湯楽さんとアヤメさん達を送り、クラン本部へ転移した。
「おかえりなさいませ。ヨウ様」×カンナ
「ただいま~」
「アヤメ様達は、一緒ではないのですか?」
「湯楽さんと温泉に入って貰ってるんですよ」
「では、私達も送っていただけますか?」
「何時もありがとう」
「いえ、私達の仕事ですから」
僕は<亜空界>のゲートを開いてから、自分もお風呂へ行くことにした。
最近温泉ばかり贔屓にしていて、クラン本部のお風呂に入って無かったから丁度良い。
僕の方にもアールさんを含んだメイドさんが3人も着いて来てくれたので、一緒に入って貰うようお願いした。
少し遠慮されたけど、1人は寂しいので入って貰い、一緒に湯船を堪能している。
「あふっ! いや~ やっぱり、気持ち良いですね~ お風呂は」
「うふふ、本当に日本人は、お風呂が好きですね?」×アール
「ロシアでは、あまりお風呂に入らなかったんですか?」
「私の国は寒いので、お風呂は好きでしたけど、日本とは少し違いますね?
ロシアでは、湯船の中で髪や体を洗います。
なのでお湯は、その度に捨てて次の人が入る時は、また溜めます」
「へええ~ ゆっくりと湯船に浸かってられないじゃないですか?」
「そうですね。お風呂を楽しむと言うより、体を洗うといった感じでしょうか。
日本の様に露天風呂なんてありませんでしたから」
「それは、ちょっと寂しいですね~」
「でも、バーニャと言うサウナは、ありましたよ?」
「なるほど。サウナの方が好きだったりします?」
「うふふ、日本に来てからは、湯船にゆっくり浸かるのも大好きになりました。
こんな大きな湯船に、ゆっくり浸かるなんて気持ち良過ぎますからね」
「私も大好きになりました」
「此処のお風呂は、景色も最高ですからね」
「あはは、気に入ってくれたなら良かったです」
「これを体験してしまったら、シャワーだけでは我慢できませんよね?」
「そそ、ササっと身体を洗って湯船に浸かるのが最高なんですよ。もちろん、サウナも好きなんですけどね」
「サウナも行かれますか?」
「ですね。一緒に行きましょか」
「「「はい♪」」」
「・・・タオルを巻いといて貰えます?」
「うふふ、気になりますか?」
「照れちゃうんです・・・」
「あれだけ綺麗な女性達に囲まれているのに、不思議な方ですね」
「アールさん達も、とっても綺麗だからですよ?」
「私達を褒めても何もできませんよ?」
「サウナで膝枕とかどうでしょう?」
「うふふ、畏まりました」
「はい、どぞどぞ」
「えっ! 私達がヨウ様に膝枕して貰うのですか?」
「何時も甘えてばかりだから、甘えて下さいー」
「す、少し照れるのですけど?」
「駄目でーす! どぞどぞ」
「で、でわ・・・」
「あはは、猫さんみたいで良いですね」
「・・・本当にクレセントに、入れていただいて良かったです」
「そんな嬉しい事を言ってくれると、撫でちゃいますよ?」
「うふふ、擽ったいですね。ですが、幸せな気分です」
「ア、アール。交代交代ー」
「もう少しだけ?」
「狡いー」
「あはは♪」
僕はアールさん達と幸せな時間を過ごし、リビングに戻ると湯楽さんとアヤメさん達は、既にリビングで待っていてくれた。
なので、夕食を取りながら話しをすることにした。
「お待たせですー」
「ヨウ君もお風呂に行ってたんだ」
「はい、サウナに入って来ました」
「あ~ ヨウ君。ビールが飲みたかったんでしょー」
「あはは、喉が渇いてる時のビールは最高ですからね」
「そう言えば、ここのビール美味しすぎないか?」
「分かりました? ダンジョン産のクラフトビールなんですよ」
「うはっ! ビールまでダンジョン産なのかよ、とんでもないな」
「此処でしか飲めないからね~ 貴重品だよー」
「止めろよ。通いたくなるだろ?」
「んふふ、そろそろ、決心ついたかな?」
「・・・分かったよ。これだけ三日月推しを聞かされたら嫌でも興味が湧くだろ。
私から見ても、可愛かったり怖かったり不思議だったりで、正直惹かれてるよ。
でも、最後に1つだけ、お願いして良いか?」
「お聞きしますよ?」
「私は今まで2人ほど、深い関係になった男性が居たんだよ。
でも、結局2人共、その・・・なんだ・・・最後までできなかったんだよ」
「それって、アレだよね?」
「そうだよ・・・何で最後まで出来なかったか未だに分からないんだ。
だから返事をする前で、おかしな話なんだけど、私を抱いてくれないか?」




