第286話 やっぱり理想の冒険者です
トールさん達を<千里眼>スキルで検索すると、驚いた事に中央区本町上級ダンジョンの地下24階に居るようだ。
「あそこって、火山地帯じゃなかったっけ?」
「そだよ、<適温効果>スキル無しなら厳しいとこなんだけどね~」
「流石トールさん。厳しいところ行きますね~」
「普通の冒険者は、耐熱効果のある装備で行くようですね」
「なるほど。そう言えば、ウルフとかグリズリーが居ましたもんね」
「私達って、スキルでどうにかしちゃうけど、普通ならフィールドによって装備を幾つも揃えないとなんだね~」
「しまったな~ 僕もやればよかったー」
「ビキニアーマーみたいなの期待してたり?」
「そ、そんな訳無いじゃないですか」
「熱いからね~ それもあるかもよ?」
「アヤメさんまで言う事ないじゃないですかー」
「うふふ、もうすぐ分かるじゃない」
僕達はトールさんが居る地下24階に辿り着くと、一切の気配を消してからトールさん達の所まで歩を進めた。
「あっ・・・」×全員
「んふふ、やっぱり女性はビキニアーマーだったわね」
「う、上着だけじゃないですか?」
「下はホットパンツみたいだね~ ヨウ君、残念」
「だから、期待なんてしてませんからね?」
「フフ、男性はチョッキみたいな装備なのですね」
「ファイアウルフの素材みたいだね。ちゃんと耐熱効果が付いてるわ」
「結構汗を掻いてるみたいだから、熱い事は熱いんだろうね」
「ヨウ君。汗ビキニだよ?」
「ツドイさんは、僕を何だと思ってるんですか?」
「眼福だよね?」
「眼福ですけど?」
「あっ!」
「あはははは♪」×アヤメ達
「にしし、帰ったらプール行こっか?」
「駄目ですー、ハワイの別荘に連れて行きますー」
「ええっ!」
「もう、ナギサが余計な事言うから、ヨウ君に火がついちゃったじゃない?」
「あはは、それも面白そうじゃない」
何故か話が変な方向にいったけど、僕達はトールさん達を尾行することにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
<トール視点>
「にゃあああ! 暑いよ~」×ユイ
「文句を言うな。ようやく耐熱装備が出来て、マシになっただろうが?」×トール
「うふふ、頑張ってファイアウルフを狩った甲斐があったわね」×サキ
「ああ、これでようやく火山地帯の捜索も出来そうだ」
「やっぱり装備の恩恵って凄いわね、ファイアウルフ狩りの時は、暑過ぎてたまんなかったもの」
「素材無しなら、この装備高くて買えなかったからね」
「逆に、ファイアウルフの皮が高額で売れたから儲かったよな?」
「うふふ、ラヴァサーペントの皮なら、もっと高く売れるわよ」
「わはは、上手くいきゃー、1枚700万円にはなるだろうな」
「この階にいるファイアグリズリーからドロップする、紅肝も高く売れるわよ?」
「もちろん狩っていくが今日の本命は、ラヴァサーペントだからな?」
「お金の為だ~ 暑いの我慢して頑張るぞ~」×ユイ
「ちびっ子の水属性魔法が頼りなんだからな? 頑張って貰わないと困るぜ」
「ちびっ子言うな~ 私はユイって名前があるんだよ」
「分かった、分かった。さあ行くぞ!」
「おー♪」
「おっ! 早速いやがったな2体居るようだが、いけるか?」
「任せろー、<ウォーターボール>!!!!!!」
ごちゃごちゃ煩いちびっ子だが、魔法の腕は大したもんだ。
1発の<ウォーターボール>で2体同時に当てやがった。
ここの魔物は水属性魔法で、かなり減衰するからこうなったらお得意さんだ。
「ナイスよ、ユイ!」
「あはは、流石私ー」
「調子に乗るな! 今の内に仕留めるぞ」
「おう」
俺達は弱ったファイアグリズリー2体を素早く倒した。やはり、水属性魔法があれば此処の魔物は楽ができる。
「お、おい、何か変なのドロップしてるぜ?」
「えっ? なにこれ、赤いSPオーブ?」
「にょおお! 8つもドロップしてるー、やたー♪」×ユイ
「喜ぶのは早いわ。赤いSPオーブなんて見た事も聞いた事もないわよ?」
「おいおい、紅肝なんて16個もドロップしてるぞ、どうなってやがんだ?」
「う、嘘? 大儲けじゃない!」
「まだ触るんじゃねえぞ。確かめてからだ」
俺はドロップした赤いSPオーブを見たが、危ねえような感じはしねえ。
手に取ってみると、ハッキリとSPオーブなのが確認できた。
「間違いねえな。これはSPオーブだ! 何で赤いのかは分からねえがな。試しに使ってみるか」
「ちょっと、トール大丈夫なの?」
「ああ、俺達は<鑑定>スキルなんて持ってねえし、ギルドへ持ち込んだら大騒ぎになりそうだからな」
俺でも少し緊張しちまったが、習得しSTRへ振ってみた。
「ぐはっ! なんだこりゃ・・・」
「ど、どうしたんだよー」
「3つだ・・・」
「えっ?」
「STRに振ってみたら、3つも上がりやがった」
「えええええええええええええええええええええっ!!!!!」×全員
「ちょっと? 凄いじゃない?」
「ああ、間違いなく未確認オーブだな」
「うはー、ラヴァサーペントどころじゃないな」
「とりあえず、皆1つずつ習得しとけ。ユイはINTに3つ使っとけ」
「なんで、私だけ3つなのよ?」
「馬鹿野郎! ここはMP命だ! INTが9も上がったら楽になるだろうが?」
「そうね、魔法の威力も上がるし、それが良いわ」
「やたー! ちょっと嬉しいかも」
「SPオーブ使うの久しぶりだな」
「ああ、今日は幸先が良い♪」
「うふふ、暑いのを我慢して通った甲斐があるわね」
「んんっ? 馬鹿トール、何で仏頂面してんのよ? 普通喜ぶとこだろー」
「うるせえな。危険って訳じゃねえんだが、何故か嫌な予感がしやがんだよ」
「それで、さっきから周りを見渡してたのね、何か居たの?」
「いや、誰も居ねえ・・・こんな事は初めてだ」
「おいおい、幸先が良いのに帰るなんて言わねえだろうな?」
「まあ、危険な感じはしねえからな、だが何か引っかかんだよ?」
「トールがそう言うんだったら、一応警戒しときましょうか」
「そうだな、トールの野生の感は頼りになるからな」
「誰が野生だ、馬鹿野郎!」
「あはははは♪」×全員
それから5度に渡り赤いSPオーブが8つドロップし、俺以外の奴も段々怪訝そうな表情になっていった。
「何かヤベエな、今日は?」
「おかしいよ? 大体なんで8つもドロップするんだろ・・・」
「トールの言ってた事が、分かってきたわね」
「さっさと次の階層に行っとくか・・・」
「今日はこの階層でSPオーブ集めといた方が得じゃね?」
「馬鹿ね? トールを信じた方が良いに決まってるでしょ?」
「そういうこった。俺達が生きて来られたのもトールのお陰だからな」
「なんだよ、気持ち悪いな?」
「うふふ、それだけ頼りにしてるってことよ」
そんな話しをしていると、次に倒したファイアグリズリーから、<腕力強化>スキルオーブが8つドロップした。
「・・・オーケー分かった! さっさと次の階層へ行くか」
「あはは、何なんだよ今日は? トール、明日死ぬんじゃない?」
「何で、俺だけなんだよ?」
「うふふ、でも運が良過ぎるのも不安になるわね?」
「運が良いだけと思うか?」
「運以外何があるって言うのよ?」
「いや、何でもねえよ」
フゥ~ どうやら今日は神か悪魔が憑いてるようだな。
尻がムズムズしやがる、こんな落ち着かねえ気分は初めてだ・・・
しかも、今日は全く危険な感じがしねえのも気になるんだよな。
まるで、何かに守られてるようだ。何なんだよ今日は。
次の階層に行く階段を見つけたので、地下25階に下りた。
ノーマルドロップの紅肝もドカドカドロップするから荷物も圧迫してきやがった。
このままじゃ目的のラヴァサーペントの皮が持てなくなっちまうので、タイミング的にも良いだろう。
「い、居た~ あれがラヴァサーペントじゃない?」
「そうね、思った以上に大きいわね」
「おい、MPは大丈夫なのか?」
「ん~ ちょっと張り切っちゃから、残り少ないかな~」
「MPポーション飲んどけ」
「良いの? 何時もはケチトールなのに?」
「馬鹿野郎! MPポーションは馬鹿高いんだよ? だが、今飲まなくて何時飲むんだって話しだ」
「今日は、メチャクチャ稼いでるからね、全部飲んじゃって良いわよ」
「わーい! 今日は魔法撃ちまくるぞー♪」
「ちゃんと節約しろよ?」
「言われなくても分かってますー」
「でも、火山地帯の魔物は水属性魔法があったら、一気に楽になるわね」
「逆に言うと無かったら地獄だぜ? ファイアウルフでも水魔法無しならメチャクチャ強かったからな」
「うふふ、ユイ様様ね?」
「えっへん♪」
「こうなると、ちびっ子以外にも魔法が使える奴が欲しくなるな」
「水属性魔法スクロールなら頑張ったら買えそうだけどね」
「さっきドロップした、<腕力強化>スキルオーブも2つ余ってるしな」
「私の分売っても良いよ? どうせ近接攻撃なんてしないしさ」
「いや、せっかくドロップしたんだ習得しとけって、これから何があるか分からんからな」
「そうよユイ。最初に決めたでしょドロップしたオーブやスクロールは優先順位を決めて皆で習得するって」
「了解だよー! じゃ、行っくぞー」
やはり、火山地帯の魔物はラヴァサーペントと言えど、水属性魔法で大きく弱体し、格上の魔物にも関わらず倒すことができた。
「うはっ! ラヴァサーペントの皮が8つもドロップしてるぜ?」
「うはー!」×全員
「えっと・・・1つ700万円として5600万円? うひゃ~」
「うふふ、嘘みたいね♪ 通常ドロップで、これだけ高額なのは嬉しいわ」
「上級ダンジョン地下25階で火山地帯だぜ? 敷居が高いだけあって旨味があるよな」
「水属性魔法必須だしね、高額になるのも頷けるわ」
「まあ、今日は旨味どころじゃないんだけどねー」
「ああ、俺達は冒険者だ。稼げる時は稼がないとな」
「ワハハ、そういうこった♪」
それからも、面白い様に赤いSPオーブやラヴァサーペントの皮がドロップしていった。
「ねーねー、この赤いSPオーブって高く売れるだろーね?」
「ステータスが3つも上がるんだもの、単純に考えても4500万円以上になるわね」
「駄目だ! 売るどころか、口外禁止だからな?」
「そうするのが良さそうね」
「えー、なんでだよー」
「馬鹿野郎! こんなの世間に出したら大騒ぎになるだろうが?」
「まあ普通に考えても、火山地帯が冒険者で溢れかえるだろうな」
「えー、駄目だよー、せっかく美味しい狩場見つけたんだからさ」
「それに、こんな異常なドロップは、今日だけだろうしな」
「えっ?」×全員
「おいおい、こんなのが何時までも続くと思ってたのか?」
「・・・地下25階からこうなのかと思ってたぞ?」
「そんな訳あるか。きっと、今日だけ天使が舞い降りて来てるんだろうよ?」
「トールがそう言うなら、そうなんでしょうね」
「ああ、それに、もう少し狩ったら今日は帰るぞ」
「え~ 調子良いのになんでだよー」
「もう荷物が持てねえだろうが。それに、欲張っても良い事なんてねえんだよ。次の階層はヤバそうだしな」
「そう言えば、どんな魔物なのかも分かんないのよね」
「ああ、地下26階の情報は無かったからな」
「トールがヤバそうだって思うとこなんて、行きたくねえしな」
「ちょっと後ろ髪引かれるけど、引き際って大事よね」
「そう言うこった」
ドロップ品であるラヴァサーペントの皮も鞄に入りきらず、鞄の上に括り付けて持って帰る事にした。
次が最後の戦闘だと皆に念を押してから、無事倒し終わった。
「やたー! またSPオーブがいっぱいだー♪」
「ち、違うわよユイ・・・」
「えっ? ス、スキルオーブだー! わーい♪」
「・・・なんで、6つなんだ?」
「そういや、8つで慣れちまったが、6つドロップって今日始めてだよな?」
「それよりも、どんなスキルなのか確かめよーよ」
「そうだな・・・」
俺達はそれぞれ1つスキルオーブを手に持ち、驚愕の表情になった。
「<激運>スキルだと?」
「お、お前等、急いで習得しろ! 誰にも見られねえうちにだ!」
「えっ?」
「良いから急げ!」
今まで感じた事がないような危機感が走り、俺は全員に<激運>スキルを習得させた。
「おい、このことは絶対に誰にも言うな。分かったな?」
「あ、ああ、そんなにヤバそうなのかよ?」
「過去最大にヤバそうだ。このスキルがバレたら命の危機なのは間違いねえな」
「そ、そんなにかよ?」
「習得しても、何となく運が上がるとしか分からないんだけど?」
「どんな効果なのかは、俺にも分からねえ」
「どうすんだよ? 習得しても良かったのかよ?」
「馬鹿野郎! これを習得しない手があるかよ? まあ、心配するな。気は進まねえが調べる当てはある。さあ帰るぞ、今日の事は全部他言無用だ」
「何時も馬鹿みたいに豪快なトールが、何でそんなに警戒してんのよ?」
「しょーがねえな・・・何でこのスキルオーブは6つしかドロップしなかったと思う?」
「そりゃ、たまたまなんじゃない?」
「ここまで、ずっと8つドロップだったのにか?」
「何が言いたいんだよー」
「おそらく、このスキルは余計に渡すわけにはいかなかったんだろうよ。だから、2つ回収されたって訳だ」
「ええっ?」×全員
「誰か此処に居るって言うのかよ?」
「姿は見えねえ、気配もねえ、俺の勘にも引っかからねえ、だが確実に誰かが居る!」
【おい、お節介坊主! 礼なんて言わねえからな?】
「な、なに行き成り訳が分からない事を、叫んでるんだよ。馬鹿トール?」
「わはは、なんでもねえよ♪」
「うふふ、なるほどね♪」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
トールさん達は、大量の荷物を抱えて帰って行った。
「か、格好良いな~ トールさん♪」
「んふふ、完全にバレちゃったね?」
「最初から全部6つドロップにしといたら、良かったわね」
「フフ、ヨウ様はトールさんには、バレても良いと判断されたのでしょう」
「しっかし、豪快なのに繊細な思考してるよね?」
「良い勘してるよ。彼」
「本当に冒険者って感じだよね、ヨウ君が気に入るのも分かるかも」
「フフ~ 流石にヨウ様が推す冒険者です」
「トールさんは、僕の理想の冒険者ですからね」




