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第275話 気配を極めた者は世界を制す

評価やブックマーク等、応援して下さった全ての方、ありがとうございます。


「や、やったぞ、やってやった・・・ぞ・・・」


 バタッ!



 武蔵はホワイトサーペントを倒し、満足そうな表情で倒れてしまった。


 僕達は急いで武蔵の様子を見に行った。


 どうやら気を失っている様だ、やはり体調が悪かったのか・・・



「ヨウ様、どうやら武蔵君は、栄養失調のようです」×リラ


「えっ! 食材を買うお金ぐらいありましたよね?」


「おそらく、集中力を高める為に、断食をしていたのではないかと?」


「うはーーー!」×クレセントメンバー


「無茶するわね~」×ナギサ


「まさか、あれから一週間経ってるけど?」


「症状から察すると、一週間水だけしか取って無いのではないかと」


「うわ~ ヨウ君なら死んじゃうわね?」×アヤメ


「僕なら1日で死ぬ自信がありますよ?」


「あはは、今なら私達もそうかもだよね~」×ノノ


「どおりで、フラフラしてたわけだよね」×ツドイ


「んふふ、漢だね~ 武蔵君」×ナギサ


「少なくとも、僕には真似できませんね。大した奴です」


「褒めるのは早いわよ? ほら、あれ見て」


「えっ?」



 アヤメさんが指刺す先には、スキルオーブが転がっていた。


 おそらく、武蔵が倒したホワイトサーペントがドロップしたものだろう。


 それにしても、このフロアに1体しかいないスキル持ちを引き当て、低確率の<幸運>スキルオーブまでドロップするとは・・・


 ホワイトサーペントを知覚できるほど<気配感知>スキルを使い熟し、自力で<気配遮断>まで取得するなんて大した奴だ。


 これだけの事を、僕の予想より遥かに早くやり遂げるなんて、武蔵の根性の為せる業としか思えない。



「流石、ヨウ君が気に入った男だね。良いもの持ってるよ」×ツドイ


「でも、こんな無茶しちゃ駄目よ? ちゃんと、怒って上げないとね」×アヤメ


「確かに。罰として、たっぷり鍛えて上げましょうか」


「うはーーー!」×アヤメ達


「フフ、武蔵君も大変な師匠を持ったものですね」×リラ


「こんな優しい師匠は居ませんよ?」


「フフ~ 優しさって、厳しさとも言うよね?」


「そうとも言いますね?」


「んふふ、明日からの武蔵君が楽しみだわ♪」×アヤメ


「皆も武蔵の師匠になりたいんじゃないですか?」


「私は魔法を教えて上げよっかな」


「僕は同じ長物の武器だからね」×ツドイ


「私は高く売れる魔物素材を教えて上げよう」×ナギサ


「フフ~ じゃ、私は良い防具素材をドロップする魔物を教えてあげよっかな」×ノノ


「あはは、それ良いですね。自力で防具も揃えて貰いましょうか」


「フフ、では私は経済学を」×リラ


「それ違ーーーう!」×アヤメ達


「フフ、冗談です♪」


「あはははは♪」×クレセントメンバー



 とりあえず、今日は倒れている武蔵を連れて、自宅へ連れて行きメイドさん達にスープとお粥を作って貰った。


 たっぷりと栄養を取って、早く体調を戻して貰おう。


 しばらくすると武蔵が目を覚ましたので、皆で覗き込むとメチャクチャ驚いている。



「な、なんだ。どうなってんだ?」×ムサシ


「んふふ、覚えてないの? 武蔵君、倒れちゃったんだよ?」×アヤメ


「・・・そうか、俺魔物を倒して気を失ったのか」


「ソロで地下13階は、無茶だって言いましたよね?」


「す、すまん。どうしても試してみたくなったんだ。


知覚出来るかどうか試すだけのつもりだったんだけど・・・」


「思いっきり戦闘してましたよね?」


「知覚出来たのが、嬉しくなっちまって、つい・・・」


「言い訳はそれだけですか? 僕達が居なかったら死んでましたよ?」


「すみませんでした。助けてくれてありがとうございます」


「言葉だけじゃ、反省してるかどうか分かりませんし?」


「ぐっ! 何でもしますから、どうか許して下さい」


「本当ですか?」


「ほ、本当です」


「ではでは、明日から僕達が交代で訓練していきますから、泣き言は言わない様に!」


「んふふ、今までみたいに、楽な訓練だとは思わないでね」×アヤメ


「えっ? 今までの訓練も結構厳しかったような・・・」


「フフ、あんな無茶が二度と出来ない様に、鍛えて上げませんと」×リラ


「弟妹達を残して死ぬわけには、いかないでしょ?」×ノノ


「ああ、その通りだ。迂闊だった・・・もう二度と無茶はしないと誓うよ」


「分かってくれたら良いんです」


「とりあえず、メイドさん達がスープとお粥作ってくれたので食べて下さい」


「うおっ! メ、メイドさん?」


「初めまして! 私達はヨウ様にお仕えしているメイドです。以後、お見知りおきを」


「はい、あのスープありがとうございます」


「いえ、お気にせず」



 武蔵は余程お腹が空いていたのか、作り置きしていたお粥まで全部食べてしまった。



「フゥ~ メチャクチャ美味しかったです」


「そりゃ、一週間も食べてないと、お腹も空くよね」×ツドイ


「断食してたのもバレてるのか・・・」


「んふふ、古いやり方だけど、効果はあったみたいね?」×ナギサ


「ああ、次も出来るか分かんねえけど、感覚が鋭敏になった気がするよ」


「そだそだ、忘れてたけど渡しときますね」



 僕は武蔵がホワイトサーペントを倒しドロップした<幸運>スキルオーブを手渡した。



「こ、これ?」


「僕が出したミッションを見事にクリアしました。ちょっと驚いちゃいましたよ?」


「そっか、あの魔物からドロップしてたのか。苦労して倒した甲斐があったってもんだな」


「根性で、もぎ取ったもんね」


「そのスキルがあると無いとでは大違いですから、明日から頑張って稼いで下さいね」


「<幸運>スキルって言ったっけ? そんなスキルが本当にあるんだな~」



 武蔵はスキルを手に取ると、大事そうに胸に抱え習得していく。



「なるほどな・・・こりゃ、未確認スキルなのも頷けるわ」


「フフ、もしオークションに出品したら、世界中から注目されるでしょうね」×リラ


「うはー、やっぱりそうなるよな・・・師匠ありがとな。俺なんかの為に、そんな凄いスキル取らせて貰ってよ」


「いえいえ、僕の弟子ですからね~ サービスしちゃいますよ?」


「んふふ、今日から私達の弟子でもあるんだからね」×アヤメ


「明日からのプラン考えなんとだね~」×ナギサ


「僕としては、先に防御面のスキル取りが良いと思うんですけど?」


「先に防具を揃えた方が良いんじゃないかな?」×ツドイ


「そういや、レンタル防具借りてないんでしたね」


「すまん。あれ5万円もするからよ、最低限のポーションだけ買ったんだ」


「じゃあさ、シャドースパイダーとか、どうかな?」×ノノ


「魔糸玉ですね。お金稼ぎにもなるし一石二鳥ですね」×リラ


「あの魔物なら<気配感知>スキルの、おさらいにもなるから良いかもですね」


「地下1階から頑張ってたら、SPオーブ集めにもなるしね」×ナギサ


「じゃ、明日からは梅田初級ダンジョンに決まりですね」


「場所は分かるかな?」


「ああ、知ってる。有名な所だからな、電車賃が勿体なくて行った事ねえけど」


「んふふ、電車賃何て気にならないぐらい稼がないとだね」×アヤメ


「ちょっと、キモイ魔物だけど頑張ってね」×ノノ


「マジで?」


「えっと、大きな蜘蛛さんです?」


「ぐはっ! ワサワサしてるのか?」


「動くとそんな感じですかね? 結構動きが速いし」


「かはっ! なんかゾワッときた」


「女性なのに、そんな魔物倒して大丈夫だったのかよ?」


「私達は視界に入る前に、魔法で倒しちゃうからね?」×アヤメ


「あはは、私も見たくないから弓で倒しちゃうな~」×ナギサ


「反則だろ?」


「んふふ、武蔵君も早く魔法スクロール取りなさい。私が教えて上げるからね」


「俺が魔法? なんか似合わねえよな?」


「そんな事言ってらんないですよ? 打撃が効かない魔物とか居ますからね」


「スライム系とかローパーは厳しいね、クロウラーも苦戦しそうだし?」×ツドイ


「クロウラー行く前に、<追加攻撃>欲しいわね?」×ノノ


「あはは、やることが一杯で楽しそうですね」


「なんか、俺は怖いんだが?」


「罰もありますからね、頑張って貰いますよ?」


「全力で頑張らせていただきます!」


「あはは♪」×アヤメ達



 今日はゆっくりと休養して貰う事にして、僕達は帰る事にした。


 こうやって、初心に返ってダンジョン攻略を考えるのも楽しかったりする。


 クレセント本部に帰ってからは、フミさんと相談して武蔵の装備作りを考えて貰った。


 色々相談したところ、魔糸玉だけではなく虹糸も必要と言う事なので、クロウラーを倒してから防具制作になりそうだ。


 途中からミナミさんも話に加わり、防護服だけではなく皮装備も必要と言う事になり、ブラックベアの皮も欲しいところである。


 上を見たらキリが無いので、最初は初級ダンジョンで手に入る素材から集めていくプランを皆で練ることにした。


 僕達がワイワイと話しをしていたので、他の職人さん達やコトエさん、リッカさん、ソフィアさん、アリーシャさんと皆が話しに加わってきた。



「なんや、おもろそうな事しとんねんな~ ウチ等も混ぜてえな」×コトエ


「戦闘訓練なら私達でしょ?」×リッカ


「うふふ、私は料理を教えちゃおうかな~」×シオ


「私達も参加したいわね」×ソフィア


「ソフィア狡いわよ? 当然、私達も参加したいわ」×アリーシャ


「超人達が教えるより、私達の方が良いんじゃないかな」×シュアン


「シュアン達は、自分達の訓練が先でしょ?」×アヤメ


「え~ 面白そうなのに~」


「ダメダメ! 有用なスキルも、まだ揃え切ってないでしょ?」


「にしし、私は歌を教えちゃおうかな~」×イスズ


「いや、それは良いから」×全員


「皆で言う事ないでしょーーー」


「あはははは♪」×全員



 こうして何故か皆にも手伝って貰う事になり、武蔵育成計画が着々と進むことになった。


 少し武蔵に同情する気持ちになったけど、気のせいだと思っておこう。


 そして、翌日から梅田にある初級ダンジョンで待ち合わせをし、本格的な訓練を開始することになった。


 久しぶりにギルドへ行くと受付嬢さんが直ぐに対応してくれ、VIPルームへ案内されそうになったが、やんわりと断っておいた。


 すると、受付前に斗沢支部長が来てくれて、丁寧に挨拶をしてくれた。



「おはよう三日月君。今日は納品って訳じゃなさそうだね?」×斗沢支部長


「おはようございます。今日は初級ダンジョンに行こうと思って来たんですよ」


「ほほ~ 三日月君が初級ダンジョンに?」


「んふふ、斗沢支部長。今日はヨウ君のお弟子さんの訓練なんです」×アヤメ


「なるほど。三日月君の弟子なら我々も挨拶をしておかなければいけないね」


「そんなに、気を使わなくても良いですよ?」


「いやいや、何れ大物になりそうだからね」



 そんな話しを支部長さんとしていると、武蔵も来たようだ。



「悪い、待たせちまったか?」×ムサシ


「僕達も今来たところだから良いですよ」


「君が三日月君のお弟子さんなんだね?」


「えっ! 師匠、この人は?」


「あはは、そんなに緊張しなくても良いですよ?」


「だ、だってよ、見るからに偉いさんだろ?」


「私はこのギルドで支部長をしている斗沢と言う者だよ」


「支部長さん? メ、メチャクチャ偉い人じゃないか?」


「僕が凄くお世話になっている方だから、武蔵も覚えといてね」


「お、俺、若宮武蔵って言います。宜しくお願いします」


「こちらこそ、何か相談があれば何時でも来てくれたまえ。


ところで三日月君。社長も会いたがっているんだが、コーヒーでもどうかね?」


「いえいえ、今日は武蔵の訓練に来ただけですから、社長さんには宜しくお伝えください」


「そうかね、社長には、そう伝えておくよ。


また何かあれば、何時でも頼ってくれたまえよ?」


「はい、ありがとうございます」



 斗沢支部長は何時も心地良い対応をしてくれるので、話をしていても気分が良くなる。


 偉くなっても物腰が柔らかい人は尊敬出来るな。


 僕達は斗沢支部長と別れ、初級ダンジョンへ向かった。



「フゥ~ 緊張した。やっぱり師匠って凄い人なんだな?」


「んふふ、ヨウ君の機嫌が害したらギルドが潰れるからね」×ナギサ


「そ、そんな事ないですよー、誤解されるじゃないですか?」


「あながち、誤解じゃ無かったりして?」×ツドイ


「ツドイさんまで、止めて下さいよー」


「俺、もっと敬語で喋った方が良いかな?」


「ほら~ 誤解されたじゃないですかー」


「あはは♪」×アヤメ達



 武蔵に普通に喋ってくれと頼みつつ、地下1階のスライムからスタートする。


 武蔵は此処に来たことが無いので、とりあえず地下7階のシャドースパイダーまで歩を進めることにした。



「スライムか・・・」


「あれ、スライムが苦手なんですか?」


「俺、武器が金属バットだったから、思いっ切り叩かないと倒せなかったんだよな」


「あ~ なるほど。でも今のバトルスタッフなら大丈夫じゃないかな?」


「とりあえず、やってみるよ」



 武蔵はバトルスタッフを振り被りスライムに攻撃すると、見事に一撃で倒すことが出来たようだ。



「やっぱ、結構力入れないと無理っぽいな、中途半端だと跳ね返されそうだ」


「その方が訓練になって良いじゃ無いですか、さあドンドン行きますよー」


「きっちいな、おい」



 武蔵はドンドンスライムを倒していくと、やっと違和感に気付いたようだ。



「な、なあ、スライムボールってこんなにドロップしたっけ?」


「フフ~ やっと分かった?」×ノノ


「やっぱり、これって<幸運>スキルのお陰なのか?」


「そーいうこと。そんな事で驚いてちゃ駄目よ?」×アヤメ


「えっ」



 数分後、武蔵はその言葉の意味を理解するのだった。



「うはっ! これってSPオーブじゃ?」


「大正解!」×ナギサ


「初級ダンジョンで、SPオーブまでドロップするのかよ」


「ステータスは均等に上げて行って下さいね~ ちょっとずつ慣れて行かないとですから」


「こ、これ使うのか?」


「フフ、売りたい気持ちは分かりますが、お金は後から幾らでも付いてきますから」×リラ


「死なないためにも、強くならなくちゃですよ?」


「わ、分かったよ」



 武蔵は断腸の思いの様にSPオーブでステータスを上げている。


 しかし、2つ目3つ目になると、段々と理解が追い付かなくなってきたようだ。



「え、えっと、3つで4500万円・・・うはは! もうどうにでもなれー♪」


「ありゃ、壊れてきちゃったかな?」×ナギサ


「んふふ、壊れるのも、まだ早いかな~」×アヤメ



 続く地下2階ではニードルラットで<追加攻撃>のスキルオーブがドロップし、武蔵は完全に固まってしまった。



「おー、ラッキーでしたね? これでクロウラーも楽に倒せる様になりますよ」


「ははは、使うんだよな?」


「もちろん♪」×全員


「ははは、もうヤケクソだぁーーー」



 スライムよりは倒しやすいのか、武蔵はニードルラットを次々と叩き潰し、SPオーブも手に入れていく。


 目的地である地下6階に着き、<敏捷強化>と<腕力強化>スキルも手に入れていた。


 地下6階のブラックベアで苦戦するかもと思ったが、大型の魔物はオークで慣れていたのか、問題なく倒してみせてくれた。


 しかも、ブラックベアの動きを先読みしている様に見える。


 まさかと思い、武蔵に聞いてみることにした。



「武蔵、武蔵?」


「んっ?」


「ひょっとして、ブラックベアの攻撃が予測できてたり?」


「ああ、すげーな<気配感知>スキルって、次どんな攻撃が来るのか分かるよ」


「うはー!」×全員


「どうかしたのか?」


「どうかしたのかじゃないわよ! もうそこまで<気配感知>スキルを使い熟しちゃったの?」×ナギサ


「えっ? このために取らせてくれたんじゃなかったのか?」


「普通は魔物の索敵とかに使うんだよ?」×ツドイ


「ああ、なるほど。そういや魔物の位置も何となく分かる様になってた、便利なスキルだよな」


「んふふ、武蔵君。あなた天才なのかもね?」×アヤメ


「フフ、流石、ヨウ様が認めた少年です!」×リラ


「ホワイトスネークを感知できちゃうんだもんね、出来ても不思議はないか」×ノノ


「頼もしいですね~」


「褒めてんだよな?」


「もちろん♪」×全員


「気配を極めた者は世界を制す! ですよ」


「んふふ、それってヨウ君の格言だよね?」


「そーなりますね♪」




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