第211話 宮上光汰は頑張ります
評価やブックマーク等、応援して下さった全ての方、ありがとうございます。
<宮上光汰視点>
え~っと・・・ナギ姉の言ってたクランは、この辺りなんだけどな~
おっ! あったあった、このビルか~
うはー、結構入りにくいじゃないか・・・かと言って、ナギ姉に着いて来て貰うのも恥ずかしいしな。
よし、気合入れて入るか。でも、ちょっと覗いてからにしてみよう。
おっ! 今なら受付に女性が1名居るだけだ。
入るには今しかないな、ちょっと聞いてみよ。
俺は自動ドアから建物内に入ると、受付に居る女性と目が合った。
結構可愛らしい女性で、年は同じぐらいだろうか、おそらく冒険者なんだろうけど話すのに結構緊張してしまう。
「はい、当クランにどんな御用件ですか?」
「あの、入会希望で来ました。よ、宜しくお願いします」
「クスクス♪ そんなに緊張しなくても、怖い所じゃ無いですよ?
入会希望ですね。どうぞ、此方のテーブルにお掛け下さい!」
「はい」
「ではまず、此方の入会申込書に必要事項を記入して下さいね」
「はい」
俺は言われるがままに記入していき、受付の女性に手渡した。
「宮上光汰さん、20歳ですね。私と同い年ですね」
「やっぱり。俺も同じくらいかなと思ってました」
「うふふ、クランの入会は初めてですか?」
「はい、冒険者になってから、友人と何回かダンジョンへ潜った事がある程度です」
「なるほど、なるほど。じゃ、簡単な説明をさせて貰いますね」
「はい、お願いします」
俺は受付の女性から説明を受け、ようやく話をするのにも慣れてきた。
「簡単な説明は以上ですね」
「分かりました。ありがとう」
「どうします? 早速Fランクの模擬戦場に案内しましょうか?」
「はい、お願いします」
「うふふ、年も同じだし、一緒にダンジョンに行く事もあるかもですね~」
「その時は、宜しくお願いします」
「了解です!」
1階にあるFランクの模擬戦場へ連れて来て貰うと、最初に目に付いたのが美しい女性だった。
クール系の美女であり、大きな胸をしているのに見事なアスリート体型だ。
どうやら、高ランクの女性なのか、戦闘技術の指導をしているようだ。
しかし、最近ナギ姉とかアヤメさん達の様な、綺麗な女性を良く見るな~
まあ、ナギ姉達は別格なんだけど・・・
「あっ! レイさん。今日も指導しに来てくれたんだ」
「あの女性、レイさんって言うんだ?」
「うふふ、そうよ。綺麗な女性でしょ? Aランクの冒険者なんだけど、最近よく指導しに来てくれるんです」
「おらおら、ひよっこ達、早く立て! 魔物は待っちゃくれねえぞ?」×レイ
「はい、お願いします」
「ほらほら、またガードが下がってんぞ?」
パンッ! 「痛えー」
「剣の腹でケツ叩かれたぐらいで痛がるな」
「レイさーん、新人さん連れて来ましたよー」
「おっ? 新入りか、鍛えてやるから武器を持って入って来い」
「えっ? さ、早速なの?」
「うふふ、レイさんに鍛えて貰えるなんて、幸運なんですよ?」
「そ、それじゃ・・・」
俺は心の準備が出来てなかったんだけど、せっかくなので指導して貰う事にした。
俺の使う武器はナギ姉が買ってくれたバスターソードなので、模擬戦場に設置してある木製のバスターソードを選ぶことにした。
ずっと武器は、バスターソードが良いなと思っていたんだけど、ナギ姉が紹介してくれた鍛冶師さんがオーダーメイドで作ってくれた。
ミナミさんって言う、メチャクチャセクシーな女性で、またドキドキしてしまった。
筋肉の付き方を見るとかで上半身裸にされ恥ずかしかったけど、まさかオーダーメイドで作って貰えるとは思って無かったので驚いてしまった。
そして、出来上がったバスターソードは刀身が黒くメチャクチャ恰好良い!
素人の僕が使うには、勿体ないぐらいだった。
一見したら黒鉄製に見えるんだけど、隕鉄って言う希少な金属で出来ているらしい。
なんか、凄い性能があるみたいなんだけど、まだ秘密だと言って教えてくれなかった。
あまり目立たない様な防具も揃えてくれ、ナギ姉には感謝しかない。
そして、木製の剣を携え、レイさんと言う女性に挨拶をすることにした。
「先程、このクランに入会したばかりですが、宮上光汰と言います。宜しくお願いします」
「私は久我麗だ。皆はレイって呼ばれている、宜しくな。
見た所、武道の経験は無さそうだが、なんかスポーツをしてたのか?」
「はい、ずっと、野球をやってました」
「ふむ、ガタイは良いな・・・とりあえず剣を振って見ろ」
「はい」
俺はレイさんの前で剣を振ってみたが、バットの様にスムーズには振れなかった。
「あはは、素人丸出しだな♪」
「すみません・・・」
「気にするなって、変な癖付いてるより良いさ」
「基本的な武器の扱い方を教えてやるから、身に着くまで振り続けろ。
それとな、私等の相手は魔物だ。攻撃は全て回避する事を心掛けろ。
剣でガードする時は、攻撃が躱せねえって思った時だけだ。分かったか?」
「はい、分かりました!」
「まあ、その調子じゃ、身に着くまで数年掛かるだろうけどな」
「ええっ? そんなにですか?」
「そんな、直ぐに強く成れるかよ、まあコツコツ頑張れ」
「はい」
レイさんは口調が厳しいけど、実に丁寧に指導してくれた。
基本的な武器の扱い方から回避方法まで、身体の動かし方を教えてくれた。
本当に何も知らなかったので、実に勉強に成った。
何よりありがたかったのは、これからどんな訓練をして行けば良いのか理解出来た事だ。
レイさんの言う通り、数年掛かるかもしれないけど、頑張る意欲が湧いて来た。
まあ、ナギ姉にも、当分の間はスライムだけで頑張る様に言われてるしな。
俺はレイさんにお礼を言い、クランを後にした。
そして、次の日から初級ダンジョンのスライムで頑張る事にした。
俺は単体で居るスライム相手に、回避訓練をやることにした。
レイさんに教えて貰った足運びで、スライムの体当たりを回避し続ける。
なるほど! こうやって実際にやってみると、実に理に適った動きだと思う。
本当に大切な事を教えてくれたんだなと実感し、レイさんに感謝した。
次に、武器の使い方を練習しながらスライムを倒していく。
ミナミさんが作ってくれたバスターソードは凄い斬れ味で、相手がスライムとは言え一撃で倒す事が出来た。
ふぁ~ 以前スライムと戦った時は、こんなに簡単に倒せなかったのに凄いな~
俺は教えて貰った上段から下段、突き技を次々と練習していくとスライムのドロップ品であるスライムボールがドンドン溜まっていく。
以前は全然ドロップしなかったのに、面白いようにドロップする。
きっと、これがヨウ君がくれた<激運>スキルの効果なのだろう。
とんでもない物貰っちゃったんだな・・・ナギ姉はヨウ君じゃなきゃ絶対手に入らないスキルオーブって言ってたけど。
ヨウ君って、どんだけ凄い人なんだよ?
次々にドロップするスライムボールに喜んでいると、もっと驚く事になる。
うはっ! 本当にSPオーブがドロップしちゃった・・・
ナギ姉からSPオーブもドロップするから、絶対ソロで活動しろって言ってたけど、本当にドロップしちゃうんだ。
これって、売ると1500万円になるんだよな・・・これだけで大金持ちになれるやん。
ナギ姉からは、売らずにコツコツとステータスを上げる様に言われてるけど。
俺って、恵まれすぎじゃね?
とりあえず、ナギ姉に言われた通り、ステータスを上げとこう。
お~ STRが1つ上がった。何か嬉しくなるな♪
よ~し、コツコツ頑張って、強くなるぞ!
そして、スライム狩りに慣れてきた頃、通路の曲がり角に居たスライムに攻撃すると、見えない所に3体のスライムがいてリンクしてしまった。
しまった。少し不注意だったか。
スライムは、ポムポムと跳ねながら3体同時に体当たりをしてくる。
俺は何とか2体を回避したが、最後の1体の体当たりはガードも間に合わず食らう事を覚悟した。
身体に力を入れ衝撃に耐える体制を取ると、スライムは見えない壁のような物に弾かれ助かったようだ。
俺は3体のスライムを倒して改めて思う。
そうか、これが<追加防御>の効果なんだ。
初めて攻撃を食らうから気付けなかったけど、これもあったんだ。
説明は聞いてたけど、実際に効果を知ると凄さが分かるな・・・流石にとんでもない値段なのが分かる。
ヨウ君が過保護って言ってたのが分かるな、ナギ姉だけじゃなく俺にまで・・・
今度会ったら、もう一度お礼を言っとこう。
しかし、不注意だったな・・・これからは、もっと周りにも気を配ろう。
こうして、俺は夕方になるまでスライム狩りに精を出し帰る事にした。
流石にもうクタクタだ、ドロップ品はギルドの受付嬢である小林咲羽さんか、斉藤愛美さんに売る様に言われているので探す事にした。
少しキョロキョロとしたが探すまでもなく、2人共綺麗な女性達の中でも一際美しい女性だったので直ぐに分かった。
なんで、こんなに美人ばかりなんだよ? 嬉しいけど・・・
俺は、斉藤愛美さんの所へ行き声を掛けることにした。
「あの、すみません。俺、宮上光汰って言うんですけど」
「あ~ 貴方がコウタ君ね?」
「はい、ドロップ品の買取りをして貰って良いでしょうか?」
「ええ、話しは聞いてるわ」
イツミさんは別室に案内してくれ、俺みたいな新人相手に丁寧に対応してくれた。
イツミさんはスライムボールの多さに驚いていたが、良く考えたら俺1人でこんなにドロップ品を持ってきたら目立つよな。
ナギ姉は、ここまで考えて配慮してくれてたのか、優しすぎるだろ?
今度会う時には、ちゃんとお礼言わないとな。
スライムボールを52個売ったお金が41600円になった。
1日の稼ぎとしては十分だろう。
よし! いっちょ頑張るか~
俺は訓練を兼ねたスライム狩りを1週間頑張り続け、今日は久しぶりに『グランドクロス』に行く事にした。
1階にあるFランクの模擬戦場に行くと、今日はレイさんは来ていないようだ。
少し残念だが、此処には各種のトレーニング器具も揃っており、少し汗を流す事にした。
ちょっとずつだけど、SPオーブでステータスも上げているので、身体も引き締まってきたようだ。
しかし、まだまだバスターソードを自在に扱うには、筋力が足りていないので、もっと力をつけないとな。
カチャカチャとウエートトレーニングをしていると、レイさんが来てくれたようだ。
模擬戦やトレーニングをしていた者達が、一斉にレイさんに挨拶をする。
もちろん、俺も喜びながら笑顔で立ち上がり、頭を下げて挨拶をした。
「んっ? この間の新人か、頑張ってるか?」×レイ
「はい、頑張ってます。以前は丁寧に指導してただき、ありがとうございました」
「いいって、真面目な奴だな?」
「さて、お前ら模擬戦してやるから掛かって来い」
「はい」×訓練生
レイさんは次々と若い冒険者達と模擬戦をしていき、的確な指導をしている。
それを見ているだけでも、かなり勉強になる。
俺はまだ模擬戦をやるような段階じゃないので、木人形に打ち込みの練習をすることにした。
「んっ! んんっ? おいおいおい、お前かなり上達してるじゃねーか?」×レイ
「えっ! 本当ですか? 俺、単純だから信じちゃいますよ?」
「新人相手にお世辞なんて言うかよ。マジで良い感じになってるぞ、頑張ったんだな?」
「はい、この1週間、毎日レイさんに教えて貰った事を繰り返し訓練しました」
「ふふ、可愛い事言いやがって。だが、普通1週間でそこまで上達しないぞ?」
「えっ? 本当に、お世辞じゃないんですよね?」
「あはは、信じろって。疑り深い奴だな♪」
「よし、そこまで頑張ってるなら、次は武器の切り替えしや連携を教えてやる」
「ホントですか? 嬉しいんですけど?」
「喜んでないで、早くこっちへ来い」
「はい、お願いします!」
俺はレイさんに褒めて貰い、有頂天になってしまった。
我ながら単純な性格だなと思う。
レイさんは、言っていた通り武器の切り替えしや、回避行動からの連携を教えて貰い一生懸命に覚えていった。
休憩時には忘れない様に、シッカリとメモに書いておくようにした。
「あはは、本当に真面目な奴だな。メモまで取る奴は中々居ないぞ?」
「俺、馬鹿だから忘れちゃいそうで、恥ずかしいですね」
「馬鹿野郎! 教えた事を忘れる奴の方が恥ずかしいだろうが? 言っとくが、そんな奴はいっぱい居るぞ」
「ありがとうございます。俺、レイさんに教えて貰った事が身に着くように頑張ります」
「また、可愛い事言いやがって♪
よし、この調子で頑張ったら今度メシでも連れてってやるよ」
「やった! 俺そう言う事は忘れませんよ?」
「あはは、調子の良い奴だな。おら、お前達も真面目に頑張れよ!
上達してる奴はメシ連れてってやるからよ」
「はい」×訓練生
今日はレイさんに褒めて貰って、モチベーションが爆上がりした。
そして、次の日から新たにレイさんに教えて貰った技術を追加し、黙々と訓練していく。
スライム狩りにもスッカリ慣れ、今では4~5匹同時でも連携技を駆使して倒せるようになってきた。
少しは強くなってきた実感が湧き、嬉しい気持ちになる。
更に1週間が経過し、今日はクランに行く事にした。
1階のFランク模擬戦場へ行くと、レイさんを見つけた。
やたっ♪ ずっと同じ曜日に来てるけど、運良くレイさんの指導日だったのかな?
とりあえず、レイさんに挨拶をしに一目散に向かう事にした。
「レイさん、おはようございます」
「おう、頑張ってるか?」
「はい、先週レイさんに教えて貰った動きも、結構出来るようになってきました」
「あはは、そんなに直ぐ身に付くかよ? 見てやるからちょっとやってみろ」
「はい!」
俺はレイさんが見てくれると言うだけど嬉しくなり、先週レイさんに教わった順番の通り、木人形相手に打撃を撃ち込んで行く。
「なっ!」
「おいおい、嘘だろ? こいつ、たった1週間で、本当に私が教えた動きを見に付けてやがる・・・
それに何だ? あの踏み込みの早さは? この間まで剣に振り回されてた奴が連携技を使ってやがる。
なんだよ、こいつ天才って奴か? まだ、粗削りの所はあるが上達スピードが尋常じゃねえぞ」
「ふぅ~ どうでしたレイさん?」
「・・・・・・」
「・・・レイさん?」
「ん? ああ悪い、大したもんだ。本当にちょっと出来てるじゃねーか」
「く~ まだちょっとか~ 食事に連れてって貰うのは簡単じゃなさそうですね?」
「あはは、当たり前だ。こっちへ来い、改善点を教えてやる」
「はい、宜しくお願いします」
今日レイさんが教えてくれた事は、ちょっと見ただけでは分からないような、剣の握り方や力の入れ方タイミング等、細かい動作だった。
だが、ちょっとした違いなのに、実際にやってみると格段に動きが良くなった。
流石に高ランクの冒険者は違うなと、益々レイさんを尊敬するようになっていく。
更に1週間レイさんに教わった改善点を徹底的に修繕し、また同じ曜日にクランへ訪れた。
すると今日は、まるで俺を待っていてくれてたかのように、模擬戦場に入った瞬間に声を掛けられた。
「おう、頑張って来たんだろうな?」
「はい、メチャクチャ頑張って来ました」
「よし、見せてみろ」
「はい」
俺は、またレイさんに褒めて貰おうと、全力で木人形に攻撃を叩き込む。
ガツッ! ガガガガガガガガガガガガガッ! バッキー!!!
「あっ! しまった。木剣が折れちゃった・・・」
俺が振り返ると、そこに居た全員の注目を集め、シンっと静まり返っていた。
「なんて、スピードなんだよ・・・」
「スピードだけじゃねえよ、見ろよ? あの木人形を、ボロボロじゃねーか」
「彼奴もFランクだよな? なんなんだよ?」
「・・・・・・・」×レイ
「な、なんて成長スピードだ・・・あの小僧、私が教えた改良点を全て修正してやがる。
それにスピード・パワーが桁外れに上がってやがる、まるでステータスをドカドカ継ぎ足してるみたいじゃねえか。
くくくっ、見つけた。見つけたぞ! 此奴が私の探し求めていたパートナーだ♪」
レイさんは、独り言を呟いていたかと思うと、ジッと俺を見つめていて少し照れてしまった。
「おい? お前、名前は何て言うんだ?」
「はい、俺は宮上光汰です!」
「コウタ来い! 今日から魔物に特化した訓練をしてやる」
「はい、ありがとうございます」
何故か今日は上機嫌だったレイさんに、初級ダンジョンに出現する全ての魔物を想定した訓練を受けた。
レイさんは俺に付きっ切りで、夕方になるまで指導してくれたので流石にクタクタになってしまった。
「おいコウタ! 来週、私が認める程上達してたらメシ連れてってやるからな?」
「や、やった♪ 約束ですよ?」
「おう、好きなもん食わしてやんよ」
「よ~し、頑張るぞ♪」
「あはは、可愛い奴め♪」
俺は次の日から、レイさんに認めて貰おうと早朝からダンジョンに潜ることにした。
そしてある日、またまた驚く事に遭遇した。




