サリアの災いを呼ぶ姫 5
「僕がレティシアを手放すとしたら、そうだね、それこそレティシアが僕に言ってたように、レティシアが誰かと運命の恋にでも落ちて、年頃のあう男の子と添いたくて、こんな歳ばっかりとった妖しげな婚約者は嫌だ……て時くらいかな。そのときも凄く邪魔したくなりそうだけど」
「落ちません、運命の恋なんて」
レティシアは笑った。
前世で恋とは縁がなかったけど、これが運命だったんだよ、と父母のことを慰めるつもりで他人から言われたときは、では運命など滅べばいいのに、と思ったので。
「……僕には薦めてなかった、運命の恋? レティシア?」
「私には来ないと思うけど、フェリス様みたいな方には、運命のお姫様が用意されていてもおかしくないので!」
物凄いダブルスタンダードを、自信満々に言ってしまった。
甘えてたの、ここのところ、フェリス様に。
そういうことを許してくれる人に久しぶりにあったので。
ずっとじゃなくてよかった。
そんな贅沢、夢見てなかった。
ちょっとだけ、フェリス様のところで甘えさせて欲しいって思ってた。
フェリス様の、本当の運命のお姫様が見つかるまで。
レティシアは祝福された姫でもなければ、薔薇の姫でもなくて、
前世から呪われた娘だったけど、それを忘れてこの幸せな場所にいたかった。
「めちゃくちゃだよ。……僕の運命のお姫様なら、もう捕まえたよ」
ね? とフェリス様の碧い瞳に覗き込まれる。ディアナの空と海をうつしたような碧い瞳。
「どうか、レティシア、悪いところがあればなおすから、僕を捨てないで?」
「……悪いところなんか、ありません」
「でも邪神の化身だしね。義母には疎まれるしね。おかしな竜王剣の噂流してディアナを簒奪しようとしてる世にも邪悪な王弟殿下だしね」
「邪神の化身じゃないし、ディアナも狙ってないし、意地悪されても義母上様の心配しちゃうような困ったお人好しのうちの王弟殿下です!」
「僕は引き籠りで世間に疎いから、レティシアが見張っててくれないと、悪い人に利用されちゃうかも」
「……」
あんなに王宮の騎士にも、シュヴァリエの街の人にも慕われてて、引き籠りっていったい……。
フェリス様的には、フェリス宮やシュヴァリエに引き籠ってたら、それはおうちの中のイメージなのかしら?(広いわね、おうちが、だいぶ……)
「病める時も、健やかなる時も、僕のそばにいるためにここに来たって言ったよ、レティシア」
「……私が、ここにいても、フェリス様の命が短くなったりしませんか?」
レティシアが災いを呼ぶという占いが、叔母様の仕組んだ嘘ならいいけど、それだけがどうしても気にかかる。この身に何かが潜んでいて、フェリス様を害したりしないのだろうか?
「しない。レティシアの何も、僕を害したりしない。知らない誰かの言葉ではなく、僕の言葉だけを信じて。……本当はここにいたくない? 邪神の化身の僕から逃げ出したい?」
「……ここに、いたいし、私の優しいフェリス様は邪神の化身じゃないです……」
本当はもちろんここにいたい。
ずっと、この人に甘えていたいし、優し過ぎて、知らずに傷を負うこの人を守ってあげたい。
叶うものなら、この人の傍らで生きて、この人を守れる大人になりたい。
「ずっと僕のそばにいて。優しいレティシアがいなくなると、僕がまた冷たくなるって皆が嘆くよ」
誓いのキスのように、フェリスがレティシアの白い額にくちづけた。
おまえ、泣いてるレティシアをあやす為とはいえ、何回も何回も邪神言うな! とばっちりでオレが呪われそうになるわ! とレーヴェがよく晴れた青空で苦笑していた。
私達のこの幸福を邪魔しようとする無礼者にどうやって仕返しするかしら? とざわめく可憐な薔薇の茂みたちを見下ろしつつ。
秋に編集さんとオンライン打ち合わせしてたとき
「小さい女の子が主役と言えば幼女戦記とかかっこよくてー」と私が言ったら
「え、そっちですか!?」て驚かれたんだけど、昨日、うちの感想のレス返してて思い出しました
私、去年の今頃、凄くPIXVの「死神に嫁ぐ日」にはまってたのでした! そこからかもレティシア(笑)
◆◆◆五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました
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コミック三巻表紙❤
五歳で、竜コミック連載