くまのぬいぐるみと、黄金の鍵
「はうう…」
レイが下がって、
女官も下がって、
レティシアは広いベットに倒れこんだ。
広すぎる、このベッド。
何なら、レティシア七人くらい寝れるのでは。
白雪姫の森の小人にでもなった気分…。
「つか、れた!!」
ベッドには、
レティシアの年齢を思ってか、
くまのぬいぐるみが置かれている。
そうだよね。
五歳といえば、
くまのぬいぐるみ抱いて、
お菓子食べたいばかり言ってる年頃だ。
間違っても、嫁に行く歳ではない。
「ん? なんか、このクマさん、リボンに…」
赤いリボンに手紙が結ばれている。
「レティシアへ。
何か不自由なことを、
僕に言いにくかったら、
手紙を書いてくれたらいいよ。
本が好きだと言ってたから、図書宮の鍵をあげる。
いつでも出入りができるようにしておくよ」
「フェリス様、神…!?」
クマが抱えていた金色の鍵を、レティシアは輝く瞳で見つめる。
嬉しい!
本が読める!
そして、うちの王弟殿下は、小さな少女がたくさん本を読んでても嫌がらない!
神!!
「御恩、感謝……!」
ディアナは古い王国で、
レティシアの国サリアでも、ディアナ文字が使われている。
かつての英語すら苦手な日本人の雪からすると、
魔法の文字のようなのだけど、
昔から文字を読むのが好きだったので、
転生しても、
貪るように楽しく読んでいたら、
(小さいのに、本ばかり読んでいるおかしな姫様)
と不評を買った。
失敗した。
普通の子供らしさがたりなかったのかも知れない。
何と言っても、中身は、二十七歳だし。
(違いすぎ)
自分がレティシアなんだけど、
ちいさなレティシアの評判を傷つけて、とっても申し訳ない気がした。
本来ちゃんと得るべきだった
可愛らしい、愛らしい姫様、の評判のかわりに、
小さい癖に、本好きで、理屈っぽい、おかしな姫様
の悪評を着せてしまった…。
「うう。フェリス様、いいひと…」
金色の図書宮の鍵を胸に抱きしめて、
レティシアは喜びを噛み締める。
王弟殿下は、レティシアが、普通に話しても、奇妙がらない。
ま、フェリス様、
幼児と触れ合う機会なさすぎて、
「小さい女の子とはこうあるべきもの」
の基準がないだけかもなんだけど。
どころか、
「人見知りだから、
僕は、他の男がどうかはあまり知らないけど」
て言ってたから、
総じて、人間全般の基準に疎いだけかもだけど。
それでも、ありがたい。
ここなら、少し、楽に、息ができる。
生まれた国(生まれ変わった国)なのに、
いままでずっと、遠慮して暮らしてきたから…。
「ほっとしたら、ねむくなった……」
ええと。
この後、もう行事なかったかな。
夕食、とらなきゃダメなのかな。
でも、とりあえず、眠い…。
寝ちゃう……。
ひとくちだけのシャンパンのせいか、薔薇水のせいか、
花婿との顔合わせを無事終えてホッとしたせいか、
ちいさなレティシアは、
くまのぬいぐるみと、図書宮の金の鍵と、優しい王弟殿下の手紙を抱いて、満足そうに眠りに落ちた。
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『五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました@COMIC』コミカライズ三巻表紙