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018話



「待たせましたのぅ」


 無事に手続きを終えた僕とイリスが、門の側で待っていると、暫くしてゲイツさんが姿を現した。


 僕達が捕まえた野盗は連中は、この街近辺では手配中だったらしくて、警備兵から物凄く感謝されたらしい。


 領主から謝礼金が届くハズだから、また後ほど来てほしいと言われたという。


「じゃぁ、それまでブラブラしますか」


「はい、行きましょう。なのです♪」


 この街の名は、マイン。


 2階建てのオレンジの瓦屋根に、白い壁で統一された明るい街並み。


 馬車を想定された幅が広い石畳の道の両側には、色々なショップが並んでいる。


 店先には、そこが何屋なのかが、一目で判別出来る様に、特徴ある看板が飾ってある。


 冒険者の殆ど(主に男性冒険者)は、服装に無頓着でぶっちゃけ汚ちゃない格好だけど、街の住人である一般の人達は身なりに気を遣っているようだ。


やっぱり、村と比べるとこんなにも生活水準が違うのかぁ。


「ゲイツさん、街の解説お願いします」


「そうじゃのぅ。この街に限らず、大体の配置は世界共通だから覚えやすいのぅ。冒険者ギルドや商業ギルドは街の中央広場にあって、そこを中心に店などがおるんじゃよ。広場に近いほうが比較的に安めで、領主の屋敷を含む貴族屋敷に近付くにつれて高めになっておるのぅ」


へぇ、世界共通ねぇ。


 僕達は、広場に到着していた。


わぁ!

屋台の雰囲気が、欧州っぽいじゃないかぁ。


 全体が木製の屋台なんて初めて見たよ。


 日本にいた時にも、海外の屋台っぽいのは、街中やアウトレットモールなどで、チラホラと見かけた事はあったけどさ。


 売っているのは、食べ物っぽい。


「補足すると、王都も規模こそは大きいが、配置は変わらないのぅ」


「そんな説明は求めてはいない。なのです」


ハハハ……。

激辛な一言だね。


 ゲイツさんを凹ませることが、本当に得意なイリスさんであった。


 しかし、そんな事などお構いなしの彼女は、興味津々に屋台を見ている。


「――イリス。何か食べる?」


「………食べたい欲求はありますが、少し怖い。なのです」


「怖いって?何がかのぅ」


「………ひょっとして、ここの料理が美味しくなかったらってこと?」


 僕が言ったことが正解だったイリスは、小さくコクンと頷いた。


「なんだ、イリス殿はそんなことを怖がっておったのか?」


 確かに、未知との遭遇は怖いけどさ。


 でも、経験してみない事には、物の良し悪しも分からないって、いうのもあるからなぁ。


 こと、食事に対しては、人間慎重になるものだ。


 食中毒やら腹痛やら、起こりうる可能性は、決して0%ではないしね。


「――大丈夫だよ。イリス、君は1人じゃない!」


「……カナタ様?」


「僕もこの世界の食べ物は、初体験だからね」


 繋いでいた方の手に少し力を込めると、イリスは嬉しそうに頷いてくれた。


「取り敢えず、記念すべき食べ物はゲイツさんのオススメからってことで」


「ハハハッ!うむ、任された」


 そうして、僕達は屋台へと近づいて行った。


 ゲイツさんのお薦めは、串焼きだった。


 玉ねぎっぽい野菜と、葱っぽい野菜と、牛っぽい肉が焼かれ、串刺しになっているというもの。


 っぽいっていうのは、ゲイツさんがこの世界の言葉で一応教えてはくれたんだけど、興味のない事には全く頭が働かない僕なので、記憶にございません。


味は、美味しかったけどね。


 ゲイツさん曰く、「酒のアテにも最高!」らしい。


 そんな中、唐突に鐘の音がゴーンゴ―ンと響き渡る。


 どうやら、時間を報せる鐘の音のようだ。


「あぁ、もうそろそろ時間じゃ。行かねばのぅ」


 屋台巡りを終えた後、僕達はお腹を休める為にオープンカフェでお茶していた。


「行くって何処に?」


「謝礼金の受取り。なのです」


あぁ、野盗さん達の……。


「金には苦労していないのじゃがのぅ。だからといって受け取らないワケにはいかないしのぅ。」


「拒否は出来ないって事ですか?」


「それは、領主の沽券を下ろす行為ですからのぅ。」


はぁ。

何か面倒だな貴族のする事は。


「ところで、カナタ殿達は大丈夫ですかのぅ」


「唸るほど、ある。なのです♪」


唸るほどって。


 抜かりの無い姉さんの事だ、イリスの言う通りなのは間違いハズ。


 僕は、フルーツたっぷりのタルトを一口食べる。


 思っていたより、甘味もありフルーツも何の果実か分からないが、違和感はないから良しとしよう。


 砂糖は貴重だから、甘いお菓子がないっていうイメージだったけど、実際はそうじゃないのかな。


 まぁ、正直甘ったるいのは苦手だから、例えイメージ通りだったとしても、全くこれっぽっちも問題無い。


「それじゃ、僕とイリスはココで待っていますね」


「そんなに時間はかからぬだろうから、その方が有り難いのぅ」


 肩掛けバックを持って、ゲイツさんは門の方へと歩いて行った。


「行ってらっしゃい」


 ゲイツさんに声を掛けた瞬間、ズキンと胸が痛んだ。


ん?

この痛みはなんだ?


なんだろ、何か忘れている気がする。


「カナタ様、何か騒がしい。なのです」


「――騒がしいって?」


 イリスが意味深な事を言い出し、僕もつられて彼女が見ている方へと視線を移した。


 視線の先には、何やら人が大勢集まっていた。


 そして、微かに「ふざけるな」だの「馬鹿にするな」などの声が耳に届く。


「あ〜、喧嘩しているみたいだね」


「喧嘩は、江戸の華。なのです」


「違うよね。いや、正確には間違いではないけどねって、ココは江戸じゃなくて、マインだから」


本当に。

いつから僕はツッコミキャラになったのかな。


………最初から、だったりする。


「今はまだ揉めているだけでも、そのまま喧嘩に発展しそう。なのですよ」


 イリスの声音には、心配よりも楽しそうが含まれているようだった。


 人垣の隙間からチラッと見えたのは、ガラの悪そうな男の姿だった。


「――まぁ。この街には、冒険者ギルドがあるらしいし。ああいう所ってさ、イメージ的には、血の気が多い人達が集まっているって感じ。でも、ただ単に飲酒のせいっていう可能性も有りそうだねぇ」


 フルーツタルトの最後の一口を口に入れる。


「そうかも。なのです」


 イリスが、ケーキのおかわりを注文した後からは、好き勝手に話しながらお茶の時間を楽しんだ。

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