015話
「……あの…ゲイツさん、大丈夫ですか?」
「何のことかのぅ?」
「カナタ様は、不老になった事を気にしている。なのです」
僕達は、トマス村から出て王都へ繋がる道を歩いていた。
舗装されていない、デコボコの道を歩くのは僕的には疲れる。
あぁ。
アスファルトの道が懐かしい。
僕は知らなかった事なんだけど、魔物討伐を冒険者に頼む時って、ギルドに依頼を出すのが普通なんだってさ。
何でも、後で揉めない為らしい。
金が足りねぇぞ!とかかな?
結局ゲイツさんは、ウルフの魔石を全て村長さんに渡してしまった。
お金に困ってはいないからって言っていたケド、少しでもこの村に貢献したかっただけというのが、本音だと僕は思った。
そんなゲイツさんだから、勿論報酬もいらないと言って、村長さんに物凄く感謝された。
そんなこんなで、笑顔の村の人達に見送られながら、僕達は村から旅立った。
「――問題無いのぅ。むしろ若返った事によって気力も充分。以前の旅は、儂自身心残りもあったからのぅ。再び旅ができるのなら、嬉しい事だのぅ。」
杖を片手に、本当に嬉しそうに笑顔を見せるゲイツさんを見て僕はホッとする。
「それにしても、コレ本当に変ではないかのぅ?」
「似合っています。なのですよ」
どうやら、ゲイツさんは若返って不老になった事よりも、自身の服装の方が、気になって仕方がないらしい。
「似合っていますよ。それに、姉さん特製の服なんですから、間違いはありません」
「女神様からの贈り物だから、尚更なんですがのぅ」
僕は、イリスに向かって苦笑いをしてしまう。
そっか。
この世界では信仰の対象である、女神アナベル。
その女神様からの贈り物に、ゲイツさんは緊張しているんだね。
それにしても、手紙書いて送ってから30分も経たずに、服が届くなんて速すぎ。
姉さん、ちゃんと仕事しているのかなぁ。と弟としては心配してしまう。
黒のハット。
黒色のフード付きローブが金色で縁どられていて、魔術師らしくてカッコいい。
インナーは、襟なしの白いシャツに黒のベスト。
下は革の黒いパンツに僕達とお揃いのブーツ。
「アナベル様が作る物は、どれも機能的で素敵。なのですよ♪」
「イリス殿、機能的とはどんなことかのぅ」
「抗菌、防臭、防水。例え汚れが付着しても、払えば落ちるし、暑さも寒さも防ぐのです。何といっても、この服のもっとも凄いのは、切られないし破れないこと。なのですよ♪」
イリスは僕と繋いだ手をブンブン振りながら、ゲイツさんに服の凄さを語る。
彼女が珍しく饒舌なのは、大好きな姉さんの話題だからなのだろう。
「おお!なんと!?そんなにこの服は凄いのか!儂は、まさに女神様の加護を受けているのだのぅ」
ゲイツさん、物凄く嬉しそうだ。
良かった。
頼んだ甲斐があったね。
「――勘違いしないで欲しい。なのですよ」
イリスは突然冷たい声を出して、ゲイツさんを見上げる。
あれ?
いつもだったら、「イリスも!」とか言い出す流れのハズなんだけど。
「――え?」
「……イリス殿?」
有頂天だったゲイツさんは、イリスの声のトーンの低さに戸惑っている様子。
若干、彼女の瞳には殺意の光が混じっているし。
「アナベル様から加護を受けているのは、カナタ様だけ。なのです!」
「……そ、そうじゃのぅ」
うん。
分かります。
ゲイツさん的には、それしか言えないよねぇ。
それしか、イリスが許さない雰囲気だし。
「本当に、イリスは姉さんが好きなんだな。」
「カナタ様の事も大好き。なのですよ♪」
ニコニコ笑う彼女に対して、僕は苦笑しながら頭を撫でる事しか出来なかった。
「――それはそうと、カナタ殿」
「はい。なんでしょう?」
「この旅の目的が知りたいですのぅ」
ゲイツさんからの質問に、一瞬思考が止まる。
「――観光って、言いましたけど?」
「それは、聞きましたのぅ。いや、そうではなくて……」
僕にはゲイツさんの言いたい事が分からず、首を傾げてしまう。
「いやいや、もう良いではないかのぅ?儂達は旅仲間なのじゃからのぅ。ホレ」
本当に、何が聞きたいのかな?
ゲイツさんが、欲しがっている答えに心当たりがない僕は戸惑ってしまう。
「ゲイツさんは、勘違いをしています。なのです」
「「勘違い?」」
イリスの言葉に2人同時に聞き返す。
彼女には、ゲイツさんが欲しがっている答えが、分かったみたい。
「観光を隠れ蓑に、カナタ様がこの世界で、何かをすると思っている。なのです」
あぁ。
そういう事かぁ。
イリスの言葉に、素直に納得してしまう。
確かに。
この世界の人からしたら、観光なんてふざけた理由に思えるよねぇ。
そこでゲイツさんは、他に本当の目的があるのではないか?と邪推してしまったのかぁ。
「違うかのぅ?この世界を正す為に、来たのではないのですのぅ?」
あぁ……
ゲイツさんらしい考えだ。
僕の時やトマス村の時に何となくそうなんじゃないかなぁと思っていたけど、ゲイツさんって本当に正義の人なんだぁ。
正直、僕の苦手な勇者タイプなんですケド。
「違いますよ。本当に、僕達は観光しに来ただけです」
「……そうなんじゃのぅ」
期待が外れたのが、余程ショックだったのだろう。
その場にしゃがみこんで、土と戯れ始めるゲイツ・シューマン、御年65歳。
って、子供か!
「はぁ。本当は話すつもりは無かったのですが、そうですね、もうゲイツさんは仲間ですから、仲間に隠し事はアンフェアですしね」
「――おお!ではやっぱり?」
僕の言葉に、また勘違いをしてしまったようだ。
現金過ぎます、ゲイツさん。
「落ち着いて下さい。これから、詳しい話をしますが、決して世直し旅では無いことは、先に言っておきますから」
僕は、溜息混じりに話を始めるのだった。




