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サクラと懐中時計
ルミを無事送り届け、空き小屋に住むようになって、数ヶ月。
役目を終えた、ボロボロの軍服と折れた銃剣を付けたままの歩兵銃は部屋の隅に大事に供えてある。
ルミは毎日遊びに来ていたが、最近見かけない。
何となく今日は街まで赴き、何気なく入った骨董品屋で、針が止まった懐中時計を見かけた。
「……親父、これいくらだ?」
「ああ、そんなん欲しいのか?気持ちだけでいいよ」
俺は金貨一枚、親父に渡した。
「え?こんなに??」
「貰ってくぞ」
「ちょ、ちょっとお客さん!」
俺は店を出ると作業用のバッグに大切にしまい、村へ急ぎ足で戻った。
小屋に戻ると久しぶりにルミが来ていた。
「あ!おじちゃん!」
ルミは泥だらけで、一つの薄桃色の草花を見せた。
「おじちゃん!サクラってこれ?」
「ああ……似てるな」
「違うの?」
「桜は木に咲く花なんだよ」
「そっか……」
「でも綺麗だな」
「うん!……いつか見てみたいなぁ」
「ああ、見たいな……」
俺はおもむろにテーブルに向かい懐中時計を取り出した。
「あ!この時計!」
「ああ、あの時売ったやつだ」
俺は懐中時計の裏を開けると、ナイフの先で歯車を少しつついた。
すると、チクタクと懐中時計が動き始める。
「あ!動いた!」
「動いたな」
俺とルミは顔を見合わせ、自然と笑みがこぼれる。
懐中時計は、静かに時を刻み続けていた。
[完]




