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57 もう一つの幸せを

*レイモンド王太子視点*



「“番”とは、良い響きですね」


アラスターが、2年ぶりにクレイオン嬢と会えたのは、クレイオン嬢達がユーグレイシアに帰国してから1ヶ月経ってからだった。

アラスターがクレイオン嬢に会いに行った翌日、王太子(わたし)の執務室にやって来たアラスターの開口一番が、その言葉だった。


ようやく番だと伝えられたのだろう。


「お前は人間だから、番は関係無いだろう?」


私が知っていた事は知らない方が良いだろと、私は知らないふりをしたまま話を振る事にした。


「実は…俺、リュシーの番なんだそうです」


と言った時のアラスターは、本当に嬉しそうな笑顔を浮かべた。


ーこれが、番を受け入れられた者の笑顔なのかー


エリナが、こんな笑顔を浮かべた事は一度も無かった。それはアーティー(わたし)もそうだったのかもしれない。


「リュシーも、俺が番だと分かる前から俺に好意を寄せていて、俺もずっと前からリュシーが好きで…それが、番だったなんて、本当に奇跡で幸運な事だと思いませんか!?」

「それは…驚きだな。種族が違う番は大変だと聞いた事はあるが……アラスターとクレイオン嬢なら問題無さそうだな」


お互い想い合った仲なら、人間のアラスターが浮気さえしなければ幸せになるだろう。


「問題が全く無い訳でも無いんですけどね…」

「………何が?」


ーその問題とやらによっては、それなりの対応をしようか?ー


「俺を番だと認識した時のリュシーの顔が……可愛過ぎて………」

「……………………そうか…」


ー惚気かー


「『そうか…』じゃありませんよ。普通に笑っても可愛いのに、更に破壊力が増すんですよ!?ヤバくないですか!?」

「お前がな…」


やっぱり、腹黒であっても恋愛となると可愛らしくなるようだ。


「まぁ…昔程煩くはないが、まだお前達は夫婦ではないし、番とは子が出来やすいから、結婚する迄はクレイオン嬢の醜聞になるような事はしないようにね」

「それは勿論ですよ。何よりもリュシーが第一優先ですから」

「なら良し」


アラスターがクレイオン嬢を大切にしたいと言うのは、本当の事だろうし、結婚迄は色々と我慢もするだろうから、醜聞になるような事にはならないだろう。ただ──番だと知ったアラスターが、結婚後にどんな行動に出るのか………


「………クレイオン嬢、頑張れ。私はいつでもどこに居ても君の味方だから…」

「何か言いましたか?」

「いや、何も…兎に角、無茶だけはしないようにな」

「はい………」


どうやら、もう無茶をした後だったようだ。







******


「王太子殿下はお人好しですね。他人の恋路を応援して…未だ恋人の1人もいらっしゃらないなんて…」


と、ハキハキ物を言うのはロッティー=オーガン侯爵令嬢。


「特に恋愛がしたいと思っていないからね。王太子として、恋愛をするのは難しいだろうし…」

「それは…仕方ありませんね。でも、例え政略結婚であろうとも、そこに信頼があれば、そこから恋愛へと繫がる可能性もあるかもしれません。王太子だから恋愛は駄目なんて法律はありませんから」

「……なるほど」


私に恋愛をする資格は無いと思っていた。今世で王太子に生まれ変わったのも、政略結婚を受け入れなければならないと言う、ある種の罰なのだと。でも──


「そう言う恋愛もあるのだな……ふむ…では……オーガン嬢、それを、私とやってみるのはどうだ?」

「はい?」

「今迄会った令嬢で、()()()()()()()について、私を優しいと言う令嬢は居たが、お人好しだとハッキリ言われたのは君だけだ。あ、責めている訳ではないよ?そうやって、自然に他意無くハッキリ言ってくれるのは有り難いし、それこそ信頼関係を築けるのではないかと思ってね」

「それこそ、王太子殿下に気に入られようとする計画的なモノかもしれませんよ?」

「本当に計画しているようなら、そんな事は言わないだろうね。腹黒には慣れてるから、違う事ぐらい分かる」

「………くくっ」

「………ふふっ」


2人同時に笑いが溢れる。


「強制はしない。でも…私の婚約者になる事を、少し考えてみてくれ」

「いえ…お受け致します。王太子殿下となら、信頼関係を築けそうですから」

「そうか、ありがとう。では、改めて侯爵に婚約の申し入れをしよう」


エリナとも、もっと会話をしておけば良かった。会話をしていれば、恋愛は無理でも信頼関係を築く事ができたのかもしれない。

今世の私が幸せになって良いのかは、まだ分からないが、オーガン嬢だけは私が守って幸せにしよう。


「王太子殿下、これから、どうか宜しくお願い致します」

「こちらこそ…」


と、オーガン嬢は恥ずかしそうに微笑んだ。




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