表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ配信中】傷だらけの公爵令嬢は、隣国の皇太子に溺愛される  作者: 束原ミヤコ
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/92

溺れるほどの愛情を



 私は――何か、よくないことを言ってしまったのだろうか。

 アルベール様の憤りに見開かれた瞳に、不安げな私の姿がうつっている。 

 あぁ、私。

 不安そうな顔をしている。

 エルデハイムでは何が起っても、感情を表に出さないようにしていた。

 そうするように、しつけられていたから。

 そうしなければ、お父様から罰を受けたから。


 けれど、今の私は公爵令嬢ではない。何者でもない、リリステラだ。

 だから、なのだろうか。仮面をかぶって取り繕うことが、できなくなってしまっている。


「リィテ」


「……はい」


 妾と言ったのが、いけなかったのだろうか。

 アルベール様から頂いた言葉に、浮かれてしまって。何者でもない私は、妾さえ、勿体ない――。


「リィテ。二度と、言うな」


「アル様、申し訳ありません、私……っ」


「君を妾にするなど……! そんなわけがないだろう! 俺が愛するのは、君だけだ、リィテ」


「アル様……?」


「言葉が足りなかったのだろうか。リィテ、俺は君を愛している。図書室で泣いていた君を見て、それから君と言葉を交わして――誰に貶められても、背筋を伸ばして顔をあげている君は、強く気高く美しかった」


 叱られるのだと、身を硬くしていた私は――アルベール様の絞り出すような声に、その言葉に、ぱちりと瞬きをした。

 瞬きをすると、涙がこぼれる。

 悲しくも、怖くもないのに。透明な雫が、頬を伝って落ちた。


「けれど俺は、君の奥にある優しさを、聡明でありながら幻獣に憧れる無邪気なところを知っている。心の底から、君が欲しいと思った。恋をしたのはこれがはじめてだ、リィテ」


「でも、私は……」


「何の覚悟もなく、君をフェデルタに連れてきたりしない。これでも、皇帝になる者だ。君の立場は理解しているつもりだ。念のために伝えておくが、俺には婚約者はいない。恋人もいない。そのような関係になった者も、一人もいない」


「……っ、はい」


 ぐいっと、顔が近づく。

 吐息が触れあうほどに近づいて、視界がぼやける。

 もう一度唇が触れあって、離れていく。


「リィテ。好きだ。俺が君を攫ってきたのは、俺の妻にするためだ。後宮などという場所には、幾人もの妻がいるのだと君が思うのも無理はないが、俺には君だけだ。他の女などいらない」


「でも、アル様」


「君は、俺が嫌いか?」


 私は首を振った。

 嫌いなわけがない。でも――。


「……好きです。でも、私は……アル様に、ご迷惑をかけたくないのです」


「迷惑?」


「何も持たない他国の私は、言葉も、まだうまく、話せません。……王妃として、相応しくない、です」


「リィテ。王は愛する女性を自由に娶ることができる。一番偉いのだからな。相応しくないなどと、言うな」


「アル様、いけません。お気持ちは、嬉しいです。ですが……」


「どれほど言葉を費やせば、君の心は自由になるのだろう。余計なことに惑わされずに、俺だけを見てくれるのだろう。俺を愛してくれるのだろうか」


「……私は、アル様が好きです。だから、……アル様が私のせいで、困るのは、嫌なのです」


「俺はリィテを愛しているのだから、誰にも文句を言わせない。文句を言った者は、全員消し炭にしてやろう。……すまない。今のは言い過ぎた」


 困ったように「感情的になると、口が悪くなるのだ、俺は」とアルベール様は言った。

 それから、私の頬や額に、唇を落とす。


「今度から、君が、俺から逃げるようなことを言うたびに、キスをしよう。君が俺の愛を疑わなくなるまで、何回も。……愛を疑わなくなっても、したいな。ともかく、リィテが可愛いと感じたら、する。いいか?」


「……あ……あの、それは……」


「愛を疑った君への罰だ。それから、可愛すぎる罰、だな」


「アル様……っ」


 幾度も唇が落ちる。額に、目尻に、耳に。髪に。

 そのたびに体が震えて、熱を持って。

 おかしくなってしまいそうだった。


「……アル様、私、もう……」


「もう、何?」


「分かりました……分かりました、から……っ、だめ、です……もう、終わりに」


「リィテ。可愛い。なんて可愛いのだろうな、リィテ。好きだ。リィテ……結婚しよう、今すぐに」


「……っ、はい、アル様、アル様……っ」


 首筋に、鎖骨に、唇が触れる。

 恥ずかしくて、皮膚がぞわりとして、甘く淫らな感覚で体がいっぱいになる。

 くたりと体から力が抜けていく。

 アルベール様は嬉しそうな笑みを浮かべると、私を力強く抱きしめた。

 私はアルベール様の事を体にじゃれつく猫のようだと思ったけれど、猫ではなくて、もっと大きくて獰猛な獣みたいだった。



お読みくださりありがとうございました!

評価、ブクマ、などしていただけると、とても励みになります、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ