キャットフィッシュ釣り
先週末アマチュアのキックの大会に出ました。
まだ顔腫れてます。
でっ、本作の続きを書く気になりました。
よろしくお願いします。
「マオイ、朝だ。起きよう!」
大きな声に驚いた僕の体は、反射的にベッドから跳ね上がった。
大きな声だけど、それでも優しいシンの声。
眠気眼を擦りながら声の方向に目を向けると、やっぱり優しそうな眼差しのシンがベッドの脇に立っていた。
昨日の夜、キョウが泊っているホテルに僕たちも泊まることにした。寝室は二つあって、一つをキョウが、もう一つを僕とシンとで使うことにした。
僕とシンの寝る部屋にはベッドが二つ並んでいた。
一人で寝転がるには大き過ぎる真っ白いシーツの掛かったベッドに、熱いシャワーを軽く浴びた後、僕とシンは横たわった。
これまで経験したことのないふかふかのベッドは寝心地が良過ぎて、逆に僕はなかなか寝付けなかった。
それでもその時間はたったの10分ほどだっただろう。
眠った記憶も目が覚めた記憶もない。ということは、僕はぐっすり寝たのだろう。
そして一度も目を覚ますことのないまま、僕はシンの大きな声で目を覚ましたのだ。
いつの間にか大きく開け放たれていた窓から、雨季の湿った早朝の空気が運ばれてくる。
部屋の奥まで差し込んでいる光の筋が長い。まだお日様はそんなに高い位置にはないらしい。
壁に掛かってある時計に目をやると、6時を少しだけ回った時間だった。タイの夏の朝はすごく早くやってくるけど、こんな早い時間に起きることは滅多にない。
(朝はゆっくり起きて、昼間は適当に仕事をこなし、夜は飯を食って早く床に入る。それでもどうにか生活の帳尻を合わせるのが俺たちタイ人さ)
ずいぶん昔にシンからそんな話を聞いたことがあったっけ。
「いまから釣りに行こう。キョウが連れていってくれるよ。獲物はバカでかいキャットフィッシュだ」
魚釣り?僕も子供の頃は家の近くの川でやったことがあるけど、釣りなんて子供の遊びじゃないか。こんな年齢になってまでやる遊びじゃないよ。
「一日幸せになりたければ酒を飲め。三日幸せになりたければ結婚しろ。一週間幸せになりたければ豚を一頭殺して喰え」
何それ?意味が分からない。僕はまだお酒が飲める年齢じゃないし。
「一生幸せになりたければ釣りを覚えろ。昔からある諺・・・らしい。どこの国の諺かも知らないけどね。もちろん教えてくれたのはキョウだ」
いくつも分からない事があるよ。3日幸せになるには結婚しろってどういうこと?
「どんなに愛し合って一緒になった男女でも、3日も一緒にいれば、相手の嫌なところの一つ二つ、見つかるって事じゃないかな。逆にこれまで知らなかった相手の良い点が見つかるかも知れないけどね。そこは俺にも分からない。だって俺も結婚したことがないからね」
ふ~ん、じゃあ魚釣りの方は?
「一生やっても飽きないほど、釣りは奥が深いってことじゃないかな。まあ今日は時間もたっぷりあるし、それにとてもいい天気だ。今朝はキョウの趣味に付き合ってやろうじゃないか。飽きたら俺たちだけで美味いものでも食いに行けばいい」
そのとき、キョウが太い釣り竿2本を手にして、隣の寝室から現れた。
“モーニン”って聞こえたキョウの英語は、どうにか僕にも聞き取れた。
改めて見ると、やっぱりキョウは背が低かった。




